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深夜の独り言 38

休日はもうどこも人で溢れていて、私がどこで誰と何をしようが、私に目を留める人なんて誰もいません。きっとこれが都会で生きるということだし、世界の真理なのでしょう。頭ではわかっていても、視線を感じずにはいられません。

自分に拘って生きている、つもりです。美しいと思う生き方をしています。その結果が、今の良い子ちゃんスタイルなのだと思います。夜ご飯はできるだけ家で食べる。外で食べる場合でも、帰宅は23時を過ぎない。治安の悪い場所や人とは距離を置く。

真面目すぎてつまらないと笑われるでしょうか。確かに、夜に外にいることは、煙草を吸うことは、お酒を飲んで騒ぐことは、急遽誰かの家に泊まったりすることは、楽しいのかもしれません。でも私はそれを美しいと思えない。母の傑作であることに慣れきっていて、失敗作になる道を、もう自分でも恥ずかしいと思ってしまう。

どれが自分の意志なのか。どれが母の意志なのか。もう私には、見分けが付きません。洗脳された良い子思想は「大学生」として生きるには少し不便で、でももう私には、それ以外の生き方ができないのです。怖い。母の傑作でなくなることが。怖い。母に守られる存在でなくなることが。怖い。母に諦められるのが。

もうひとりで、どこへでも行ける私です。母の知らないお友だちが何人もいる私です。いろんなお誘いを受けます。誰とどこへ出かけるなんてさすがにもう報告はしていないから、私の自由のはずです。母だって、本当はもうそこまで気にしていないのかもしれません。でも、母の嫌そうな顔が思い浮かぶ誘いは反射的に断ってしまうのです。これは私の意志か、母の意志か。もう、わかりません。

過保護な親に腹を立てられるような、自由な生き方をしてみたかった。もう二十歳なんだから門限なんていらないでしょうと言い合うような、普通の親子でありたかった。母の人生とプライドをかけて作りあげられた良い子な人形は、頭の中のプログラムまで合わせて最高傑作といえるでしょう。レールを歩くだけの人生なんて、と馬鹿にするひとたちを横目に、レールの上以外では生きてこられなかった私は今日もまっすぐ歩きます。

明るく美しい人生を、歩みます。



真っ暗な夜に、




深夜の独り言。

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金とき
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