「まぐろ油漬け」と「呆れの地平線」
「よし。炭火で焼肉をするぞ。」
父はそう言って食卓の上にバケツ型の七輪を置き、火をおこし始めました。ガスコンロで着火した赤々と光る木炭を七輪の底に配置し、上から黒い木炭をくべていきます。
興味しんしんで見守る兄弟ふたりと、疑わしげな表情で野菜を切る母。うちわでばたばたと扇ぎ、火花を散らしながら元気に燃え上がっていく火を満足げに眺める父。
しかし
次第に白く視界が霞んできます。そう、けむりです。目にしみる。のどがイガイガする。けむる勢いが換気能力のキャパシティーを超えはじめたのです。
しかも、よく見たら食卓も火花でところどころ焦げている。挙げ句の果てに舞い上がった白い灰が降り注ぎはじめました。大惨事。
もくもくだ。よそから見たら火事に見えるのではないか。もうすでに人間が生活をする環境ではなくなっている。家族団欒の食事などもってのほかだ。絶滅の危機だ。もはや、これまでか。
その瞬間、父は無言で燃える七輪をタオルで挟み込んでベランダに追いやりました。そして白い居間に戻るなり、こう言い放ったのです。
「こういうことだ。」
呆れの地平線を越えて、魂を飛ばしたような母の表情は今も忘れられません。
しかし、不思議なものですね。スマホのフォトライブラリーを覗くと、ウマそうにお酒をかたむける父がいるのですから。もう居ないんだ、ってことをついつい忘れてしまいそうになります。
さて、与太話もほどほどに。
トップの写真は「まぐろ油漬け」。
平たくいえばツナですね。
作り方は意外とカンタン。
まずは、まぐろの切れっぱしをスーパーで手に入れましょう。生で食べるわけではないので割引品で良いです。むしろ割引品が良い。割引が好きです。
無事入手できたなら、まんべんなく塩をして30分ほど冷蔵庫に放置しましょう。下味をつけるのと、余分な水分を抜くためです。好みにもよりますが、のちに味変して楽しむためにも甘めに振っておくことをオススメします。
冷蔵庫から取り出したまぐろの水気をよくふき取り、ホールの胡椒、ローリエ、鷹の爪、つぶしたニンニクとともに小ぶりな鍋に入れて、サラダ油(オリーブオイルを使えば、ブルジョワな味わいに。)をひたひたに注いで弱火にかけます。
ぷくぷくと油が沸いてきたなら、まぐろ同士がくっついてしまわないようにときどき混ぜながら、ごく弱火で20分ほど煮ます。火を落として粗熱がとれるまで常温で冷ましましょう。
完成!!
つまみに嬉しい!ごはんのおかずで感動!オイルごと使ってキノコパスタにしあげたら号泣まちがいなし!しかも冷蔵で一週間ぐらいは保ちます。マーベラス。
僕としては、ちょろっとしょうゆを垂らしてビールを飲みたいところ。「ずっとこうしていたい。」という気持ちになれます。
ぜひ、お試しいただきたいものです。
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それでは、また明日。