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極論を、トマトの毒性から読み解く

皆さんは、トマトは身体に良いと思いますか?

「当たり前でしょ」と答えたくなるこの問いですが、「トマトには毒性がある」ということで話題になった時期があったようです。

「トマトには毒性がある」
半分正解で、半分間違いであるこの話題を、ホルミシス効果という視点で考えていきたいと思います。


トマトに毒がある、は本当か?

先ほどの、トマトの話。
トマトには、「トマチン」と呼ばれる物質が含まれています。

じゃがいもの芽には「ソラニン」という毒性をもった物質が含まれていることが有名ですが、これらはどちらも「アルカロイド配糖体」と呼ばれる1種で、似た化学構造を持っています。

トマチン。
なんか、人のあだ名みたいでかわいいですよね。
「ねぇねぇとまちん、今日の放課後どこ行く〜?」
「とりま、カラオケっしょ。」
的な。(ギャルのイメージが古くてすみません)

冗談はさておき。
トマチンは昆虫が嫌う忌避成分であり、虫に食べられないようにするために生成されているのではないか、と考えられています。

害虫から自分の身を守るため、進化の過程で生み出されたのが、この物質だったのかもしれません。


トマトの人的被害

トマトに毒性があることは分かりました。
では、具体的にどれくらいの毒性なのでしょうか?
人体には、どんな影響があるのでしょうか?

トマチンの含有量はトマトの種類によっても異なりますが、トマトが熟した状態では、殆どトマチンは含まれていません。
つまり、育っていく途中で食べられないように生成されるのがトマチンで、それは未熟期から完熟期にかけて徐々に減っていくようです。(葉や茎には多く含まれているとのこと)

マウスを使った実験では、トマチンをマウスの腹腔内に投与したときの半致死量(LD50)がおよそ32 mg/kg。これをヒトに換算すると、およそ1600 mg。完熟したトマトでは、4トンほどで反致死量に達する、という計算になります。

トマトには毒性があり、死に至る可能性もある。
この裏側には、「4トンほどのトマトを一度に食べたとき」という現実離れした状況があってこそ成立する、世にも奇妙な論調だったのです。


ホルミシス効果から読み解く極論

ある物質を高程度に、大量に用いる場合は有害だが、有害にならない適量、微量を用いると、有益な作用をもたらすことを「ホルミシス効果」と言います。

例えば、日光浴。人は日光を浴びるとセロトニンが分泌されるなど、身体にプラスの影響を与えますが、夏の暑い日にずっと日光を浴びていると、日射病になり体調を崩してしまいます。

また、「ホルミシス療法」と呼ばれる、低線量の放射線を取り入れて健康効果を引き出す治療方法も存在します。

トマト然り、放射線然り。
私たちは、極端な論調と現実的な見解を見分け、そして実際のデータも交えながら、「物事を考える力」を一人一人が身につけていくことが大切です。

科学やデータが絶対ではありませんが、このような話題を「トマトは危険だから食べない方がいい!」と極論に至っては、返って健康を害する方向へ向かってしまいます。

とはいえ、どんなモノでも摂りすぎは厳禁。
「うっかり、1日でトマト4トン食べちゃった!」ということがないように、節制した生活を心がけましょう。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/57/8/57_726/_pdf/-char/ja
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2021-02/210223_Sugiyama-458ee587c2063dae149f9846073e1ca0.pdf
http://www.murasugi.com/contents/document10-002
http://www.tokai.t.u-tokyo.ac.jp/kyodo/kaihoken/02_Kaiho_db/yomimono/radiation/Chap-1/P1-6-6.htm

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