ちょっとし短歌【snowって】
snowって引き算メイクもこなすのねぇ。
いいえ母さんそれはデフォルト。
ちょっとした、ことじゃ無い。結構ショックだった。
加工アプリsnowの技術が優れていることは知っていた。しかし、娘が使うsnowが『ほんのちょっとだけ』盛れる設定になっていたとは知らなかった。ほんのちょっとだけ付けマがついていた。ほんのちょっとだけ眉毛が整美されて、ほんのちょっとだけリップが鮮やかだった。
それはいつも夕飯の後、20時ごろに行われる。娘の加工アプリの被験者である私は言われるがままに娘のiPhoneに目線を送る。『忙しい時間にもうまったくっ』と冷めた態度を見せるものの、1ショットパシャリ、2ショットめパシャリ、3ショットめに入る頃には私は前のめりになること娘は知っている。
娘が撮影してくれる私はいつもそこそこイケていたのだ。ちょっとだけモられた自分の顔を疑うことなく何度も撮られてきたある日、娘のスマホの画像の中に気になる写真を見つけた。
『やばっ、この顔、悲惨、ウケる。』
悲惨な自分の顔を指差して笑うと、
「ほんと、やばっ。」
と、失笑した娘。
『でもすごいねこれ、どうゆう加工ょ?』
「・・え?」
『・・・え?』
「なんにもしてな。」
『えっと、あ。』
「なんか、ご。(めん)」
娘の言葉に被せ気味で『削除しょ。』とため息混じりにピリオドを打った。
しかし‘過信’というものは事態をこじらせるもので、崖っぷちにいるのに片足で縄跳びをする程の余裕を見せる。娘に再度撮影を請い、無加工無修正の顔面を突きつけられた私は崖っぷちから真っ逆さまに落ちていったことは言うまでもない。