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たとえにわかだったとしても
わたしは、自分からなにかにハマることが多い。
人からすすめられて何かにハマるのではなく、自らその世界の沼へと飛び込む。漫画、ゲーム、映画、アイドル、舞台……。友人からすすめられてハマったものもあるけれど、自分から「おもしろそう!」と興味を持ち、熱を帯びることのほうが圧倒的に多い。
仮にその熱が冷めたとしても、「最近あの人はどうしているのだろう」「あの作品はどう進んだのかな」と頭のすみっこで気になる瞬間がある。一度ハマったものが完全に冷めることは、ゼロに近い。
高校のとき、わたしはソフトテニス部に所属していた。部活動見学でビビッときて、「これだ!」と思ったことがきっかけ。はじめは真っ直ぐにボールを打つことができなかった。それが悔しくて、部活のあと自宅で150回の素振りと、3キロ以上のランニングを3年間続けた。
次第にどんどん打てるようになり、最終的には一番手の後衛になった。強豪チームではなかったものの、最後の大会は県ベスト16。高校からはじめたわたしにとっては、上出来の結果だった。
そんな高校生のわたしは、錦織圭選手にハマっていた。
Happy Mother’s Day!! 錦織選手がユニクロ銀座店の「UNIQLO FLOWER」で花束をチョイス💐
— UNIQLO_Ambassadors (@UQAmbassadors) May 8, 2022
Kei picked up this beautiful bouquet as a Mother’s Day gift!! #母の日 pic.twitter.com/aSPB2CwnRg
わたしは軟式で錦織選手は硬式だったが、それでも同じテニス競技。ルールはすぐに覚え、彼のストロークや緩急のあるボール捌きに夢中になった。
What do you think @denis_shapo? 🤣🤷♂️🤦♂️ pic.twitter.com/oVCuOnY3jI
— Kei Nishikori (@keinishikori) August 3, 2022
当時の日課は新聞のテレビ欄、そしてスポーツ欄のチェック。錦織選手がFacebookを利用していると知ってからはネットも駆使するようになった。
大会開催地はほぼ海外で真夜中の放送だったが、起きていられるときはひとりで夜更かしをした。テレビ画面の右上に「LIVE」の文字があると一気にテンションがあがる。時差があるとはいえ、今この瞬間、海の向こうで錦織選手がプレーしている。いつか観にいきたいと思った。
その「いつか」がきたときは、ロジャー・フェデラー選手の試合も絶対に観戦しようと決めていた。
You know you’re getting old when the candles cost more than the cake. 🤣 Thanks for all the amazing birthday wishes.🍷🍰🎈 pic.twitter.com/PG24ZyxvYr
— Roger Federer (@rogerfederer) August 8, 2022
1981年うまれ、スイス出身の右利き。2003年の全英オープン(ウィンブルドン)で優勝してから一躍有名となった。国際テニス連盟が定めた世界4大大会(全豪、全仏、ウィンブルドン、全米)の勝利数は20回。さまざまな偉業を成し遂げた男子プロテニスプレイヤーだ。
彼のすごいところ。なんといっても片手でのバックハンドだとわたしは思う。フォアハンドですら両手打ちする選手がいるなか、彼はフォアどころかバックも片手で打つ。それに加えてコースの打ち分けも正確。
わたしがハマったころ、フェデラー選手は30代に突入していた。その年齢を感じさせないくらい、鋭く、堂々としたプレーが好きだった。
やっとバックストロークを打てるようになってきたわたしにとって、彼は憧れを通り越してヒーローそのもの。いつみてもかっこいい。
— Wilson Tennis (@WilsonTennis) October 4, 2020
常に冷静でいるところも好きだった。
試合中、感情をあらわにする選手がいるが、彼らはそうすることにより自分を鼓舞し、感情をコントロールしている。それもひとつの方法なのだが、フェデラー選手は声を出さず、静かにガッツポーズをした。(ちなみに錦織選手もこのタイプ)
歓声が湧きあがるなか、湧かせた当の本人は冷静で、無言でガッツポーズ。そしてすぐに切り替えて次のプレーへとうつる。その姿をみるのも、わたしは大好きだった。
After 18 months of rehabbing and performing behind closed doors, playing on Centre Court to a passionate crowd makes it all worth it. Thank you 🚀🙌🏼 pic.twitter.com/7TjQbrxioR
— Roger Federer (@rogerfederer) July 2, 2021
大学生、社会人と、歳を重ねるごとにテレビをみる習慣がなくなった。そんな生活のなかでもふと「そういえばウィンブルドンの時期だ」と思い出す瞬間があった。試合結果を調べたり、世界ランキングをチェックしたり、ひさしぶりに夜更かしをして試合を観たり……。
今年のウィンブルドンは、錦織選手もフェデラー選手もケガの関係で出場を辞退した。残念だったが、来年に期待しようと思っていた。
しかし、その夢は叶わなかった。9月15日、フェデラー選手が引退を表明した。
— Roger Federer (@rogerfederer) September 15, 2022
その引退表明文の音声をTwitterにアップしている。
To my tennis family and beyond,
— Roger Federer (@rogerfederer) September 15, 2022
With Love,
Roger pic.twitter.com/1UISwK1NIN
知っている単語をかいつまみ、おおよその内容は理解できた。それよりも、フェデラー選手が自身の口で話している、それを聞くことに意味があると思った。
If there's one thing you watch today, make it this.#LaverCup | @rogerfederer pic.twitter.com/Ks9JqEeR6B
— Laver Cup (@LaverCup) September 23, 2022
ショックだった。いま考えても悲しい。
彼も気づけば41歳。だけど心のどこかで「まだまだ大丈夫」と思っている自分がいた。フェデラー選手の試合を実際に観戦する夢。残念ながら叶うことはなかった。
わたしよりもフェデラー選手が好きで、強く憧れて、プレーを真似して、全試合チェックして、実際に大会を観にいくような、いわゆる熱狂ファンはたくさんいる。その人たちからすれば、わたしは“にわか”だろう。
その"にわか"であっても、わたしは今後、彼のプレーが観られなくなると思うとすごく悲しい。そのくらいわたしにとって、フェデラー選手は大きな存在だった。いつだってかっこいい、キラキラ輝くヒーローだった。
いままでたくさんの喜びや感動を、国境を越えて与えてくれて本当にありがとう。
今までもこれからも最高にかっこいい、芝の王者ロジャー・フェデラー。心をこめて言わせていただきたい。24年間、本当にお疲れさまでした。わたしのヒーロー、出会えてよかった。
just a quick warmup before the gala 🏓 pic.twitter.com/U4udl8hKV4
— Roger Federer (@rogerfederer) September 22, 2022
ps.卓球をするフェデラー選手、ニコニコでかわいいので見てください。