無題のプレゼンテーション-9

KITAMAE 1st Journey:哲学と表現の金沢の旅

先日の週末9月16日と17日で金沢に行ってきました。

いろいろな偶然を辿り続け、まったく想像していなかった「哲学と表現」の旅になり、とても楽しかったです。旅の道中、お付き合いいただいた皆さま、ありがとうございました。

今回の旅行が決まったのは一週間前。偶然、知人に「日本海側は面白いよ」「来週、金沢に行くよ?」という言葉に相乗りを即決。そこから東山の素晴らしい宿を運よく抑え、新幹線の席も滑り込みで確保して、ぶらり金沢に向かいました。

大きなテーマは、複数拠点で暮らすためのヒント探し。小さなテーマは、旅の偶然を楽しもうというもの。

そんな旅で、今は亡き鈴木大拙さんと西田幾多郎さんから「友人らと哲学を続けなさい」、そして、金沢21世紀美術館の企画展の作品群からは「よく観察し、表現しなさい」というメッセージを受け取りました。

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加えて、横道に入ったデザイン事務所の企画展からは「日本海側はやっぱり熱いぞ、人の縁を辿って回ってみなさい。」と語りかけられた旅なのでした。

それにしても、改めて、時間・空間・人間から自分勝手にメッセージを読み取るのって、なんて楽しいのでしょう。つらつらとこの二日間のことを記録しておこうと思います。

1日目:友人らと哲学を続けなさい

朝9時の北陸新幹線に乗り、12時前に金沢に到着。三連休の中日で観光客で溢れていました。さて、何をしようかと思いながら、ひとまず金沢21世紀美術館に向かいバスに乗り込みました。ゆらゆら揺られ、到着すると当然ながら混んでいました。入場券を購入するにも40分。

仕方がないので、兼六園をぶらつきながら、鈴木大拙館にでも行こうか思案していると、ちょうど、チャットしていた友人から「あなたは、鈴木大拙館にGo!、そして、少し遠いけど、西田幾多郎記念館も安藤忠雄建築でおすすめだよ」というメッセージが。これに乗ることにしました。

ちなみに、西田幾多郎記念館は金沢21世紀美術館からタクシーで30分。結構かかります。今回、勢いがあったから行けたのだろうなと思います。

ただ、この偶然で、私は改めて「これからも哲学するぞ(友人を巻き込んで)」と開き直ることになるのでした。

偉大なる故人、鈴木大拙さんと西田幾多郎さん

まず、訪れた鈴木大拙館は谷口吉生という建築家が設計した、凛とした素晴らしい建物。禅を感じる建物は大好きで、瀬戸内海の豊島美術館を思い出しました。こういった建物では、呼吸をするのが本当に気持ちがいい。

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呼吸はまさにオーガニックエンターテイメント。

ちなみに、鈴木大拙さんは海外に禅を知らしめた本当にすごい方。そして、存じなかったのですが、鈴木大拙さんと北鎌倉にある円覚寺はとても所縁深いそうです。

それを知って、思い出したのは、先週末zen2.0で北鎌倉を訪れた帰りに、立ち寄ろうとした円覚寺。そのときは、すでに閉まっていて、入ることができなかったのです。

今回、鈴木大拙さんと円覚寺との関係を知り、偶然、金沢を訪れ、偶然、美術館が混んでいた流れで鈴木大拙館を訪れたという流れを見ると、「鈴木大拙に触れなさい」と言われている気分になりました。

次に訪れた西田幾多郎記念館。タクシーで30分。立派な安藤忠雄建築でした。訪れた記念館での最大の確認は、西田幾多郎さんは鈴木大拙さんとの関係です。

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西田幾多郎さんは鈴木大拙さんと高校時代からの友人で、お互いに対話を繰り返し、尊重しあっていたそうです。やっぱりクリエイティブは尊重し合う対話から出てくるもの。友だちを大切にしようと改めて思いましたw

偶然が重なり、禅・哲学の偉人に触れ、色々と考え続ける自分にOKを出され、むしろ、哲学し続けなさいというメッセージなんだとしか思えない一日。

哲学するには友人が必要だ。友人とともに哲学を続けるぞ!

日本海側の提示 - 1日目のおまけ

ぶらついていると、おしゃれな看板が目に入って、吸い込まれるようにビルに入りました。そこでは、日本海側を語るエッセイ、企画展にも反応。旅のきっかけになった、友人の「日本海側は面白い」という言葉を受けて、金沢に来て、この企画展を目にして、もはや、日本海側を巡るしかないと決意したのでした。

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東山の宿も最高だった

2日目:よく観察し、表現しなさい

二日目は暑くなりそうな気配のした、とても天気の良い朝。友人2人とご一緒させていただき、街中で展開している金沢21世紀美術館の企画展「変容する家」を巡ることに。

この道中、ご一緒させていただいた3人で、作品を見ては、感想を語り合うとても楽しい時間になりました。作品を語り合うことのできる時間って、こんなにも豊かなものなんですね。

そして、この企画展で印象に残った作家はお二方、村上慧さんと、山本基(もとい)さんです。

村上慧さんと山本基さん

まず、一人目は村上慧さんのふたつの作品。大ヒットでした。

ひとつ目は、2014年より自作した発泡スチロール製の家に住む「移住を生活する」プロジェクトの展示。耳を疑いますが、ガチでした。

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作品コンセプト。どこで区切っていいのかわからないので、そのまま載せさせていただきます。

現代においては、お金を使って人との関係性の中で生きる以上、どんなに私的な行いでも公に対してのアクションになり、社会の状況を作ってしまうものと考えます。なので私は自分の生活をつくることはとても誠実な社会活動であると考え、実践しています。私は2014年から「移住を生活する」というタイトルのもとで自作した発泡スチロールの家と共に徒歩で移動しながら、他者の敷地を借りて寝泊まりするという生活を断続的に行なっています。その私的な日々の公開を通して公の状況をつくることができればと思います。

コンセプトが秀逸すぎて、というか、なんでこんなことを着想し、言葉にし、発送できるのか、実行し続けられるのか。

ふたつ目は「看板図書館」という作品。地元の商店街のお店の広告看板を私がセレクトした本の表紙と差し替えたものを並べた作品。

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こちらの作品から感じたのは、わかりにくさはエンターテイメントになるということ。

お店の看板とその中にある本という全く関係のないものを並べられると、人は不思議と無理矢理にでも関係性を見出したくなる。最初に、双方の関係のなさに笑い、次に無理矢理見出した関係性に笑う。2度笑えるんです。わかりにくさは。

そんな彼の作品を見て、「なんか一貫しているんだよね、彼」と笑いながら、そしてリスペクトを込めながら、友人が口にしていた。そんな男になりたいものだ。

また、村上さんの作品を見て、最近出会った某Hな広告代理店で働く友人を思い出した。彼は自分自身に言うように、僕に「もっと狂っていかないと。」とチャットで話しかけてくれたことを思い出した。

面白い友人をつくるのはまじで価値だ。インスピレーションをくれる。

そして、二人目は山本基さん。作品とともに、トークショーを聞いた。

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山本さんは妹と奥さまを病気で亡くされた。思い出を忘れないために、再び出会うために作品作りをされているという。

人は忘れてしまう生き物。それが本当に大前提としてあって、思い出したい何か、忘れたくない何かを掴み、表現していらっしゃるようでした(とのことでした)。そのことを、真正面から語られている姿を見て、勇気付けらました。

このほか、面白かったのは、元々は旋盤工技師を職にされていた中、きっかけがあって、金沢技術工芸大学で芸術を学ばれた。油絵が専攻だったものの、作品作りをしていく中で、絵を描いて作品と向き合うのではなく、作品の中に入り込みたいという思いで、インスタレーションを始めたとのことでした。

トークショーを伺い、忘れないための作品作りをしているにも関わらず、(と言っていいのかわかりませんが)、変わり続ける人であり、優れた日常の観察者である方、なんだなと思いました。

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また、山本さんのお話を伺って、改めて、アートはとても具体的な事象(出来事)であり、表現することは何かの追体験をしているものだ。

そして、鑑賞者は、その体験の中に入り、色々な想像を膨らませる。まさにインスピレーションの連鎖で、特にインスタレーションは、そこに身体性を伴うものだと理解しました。

ぼくがDialogue in the darkに憧れるのは、こう言ったところかもしれない。あ、行ったことないけどw

さらに、思い出したのは大好きな星野道夫のエッセイだった。

「いつかある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。
たとえばこんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろう。
もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどう伝えるかって。」
「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いて見せるか、
いや、やっぱり言葉で伝えたらいいのかな」
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって…。
その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだって思うって。」
星野道夫:「旅をする木」より

この金沢の旅は自分にとっては癒し、そしてインスピレーションに溢れ、最後には背中を押された旅だった。

友人と哲学し続けて、表現するぞ。日本海側を巡りたいな。

[Profile]
宮澤佑輔 | Supershipグループ 経営戦略本部 ビジネスプロセスデザイン室室長・事業管理部部長 | ファイナンス・ビジネスプロセス・組織開発 | PwC(監査)・KPMG FAS(M&A/Strategy)・サイバーエージェント子会社(暗号資産/ブロックチェーン)を経て現職 | 公認会計士 ヨガ講師資格保有

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