アフターコロナを振り返る (宗教編)
世界的な新型コロナ(COVID-19)の流行から、早5年。
新型コロナの流行は様々なカルチャーの震源として、急速なIT化や宗教革命をもたらしました。前回はファッションへの影響について振り返りましたが、今回は宗教革命について振り返っていこうと思います。
【2021年】宗教活動への関心の高まり
前代未聞の感染拡大に伴い、世界的にロックダウンが行われ、飲食店や娯楽施設は全面閉鎖し、私達はオンライン上でZoom等を活用したコミュニケーションを行っていましたが、急速にリアルな関係性が薄れていきました。
宗教団体への影響も甚大でした。きっかけは2020年当初の韓国の新天地イエス協会での集団感染や、新型コロナからの解放のための大規模礼拝がバングラディシュで行われるといった宗教関連のニュースがメディアに取り上げられたことでした。
参照) https://bunshun.jp/articles/-/36382
参照) https://www.afpbb.com/articles/-/3274214
このことで、大規模な礼拝を伴う活動が新型コロナの感染拡大に影響するとして、イスラム教を始めとした宗教活動が非難されるようになりました。新型コロナの感染を防ぎたいが、信仰をやめることも出来ない。そんな苦悩が人々の中にありました。
更に、エジプトではラマダン (断食月)でもウイルスと戦う医師や看護師は断食を免除されるという見解が発表、スリランカではイスラム教にも関わらず新型コロナによる死者の火葬が義務化されるなど、リアルなコミュニケーションのみならず、今までの信仰活動や信仰の解釈を変える必要性が出てきました。
留まることを知らない新型コロナの猛威が人々に与えた精神的なダメージは大きく、救いを信仰に求める人もまた増えていきました。ブラジル・リオデジャネイロのコルコバードの丘に立つキリスト像も、医師の白衣に着替え、希望と励ましのメッセージを発信しました。
参考) https://r.nikkei.com/article/DGXMZO58015500U0A410C2CR0000?s=4
【2023年】ヒッピーの再来
新型コロナ(COVID-19)の第2波、第3波が過ぎ去り、ようやく平穏を取り戻しつつあった2023年。世の中には感染の再拡大に対する恐怖心や懸念が蔓延していました。
中国の武漢の研究所から蔓延したという噂や、主に飛行機を活用した人々の移動が世界的な感染拡大をもたらしたという見解から、自然的な発想に立ち返る人もまた増えたのもこの時期でした。
様々な新興宗教も誕生しましたが、中でも注目を集めたのが、「無為自然」を唱える道教でした。自分たちが作為的に何もしなければ、良い方向に向かうという教えで有名です。
無為自然
「人為的なことをせず、道(タオ) に従って生きればいい」
急速なテクノロジーと資本主義の発展に伴い、一定のソーシャルディスタンスを取りながら自然に生きることを一部の人々の間で流行しました。ある意味それは「ヒッピー」の再来でした。
ムーブメントは世界へと広がり、テクノロジーの発展を肯定しつつも、発展はほどほどに人間らしく生活をするべき、という信仰をもった彼らの声明が多く発信されました。
【2025年】前衛的テクノロジー後進国の誕生
2025年、AIやIoTなど様々なテクノロジーの発展を歓迎しつつ、自然的な活動を重視する考えが一定広がったことで、形は違えど、根底で同様の考えを持つ「自然党 (The Nature Party)」なる政党が様々な国々で誕生しました。
先んじて自然党が第一政党となったのはフィンランド。フィンランドの自然党は一見人手がかかる業務をテクノロジーに置き換えず、人と人が協力し合いながら作業を完了させる「体験」に重きを置き、自然的な人と人の交流を目指した国として注目を集めています。
この「前衛的」テクノロジー後進国は発展を拒むわけではなく、敢えて隙間を残すことでQOL (Quality of Life)を上げることを念頭におき、現在周辺の国々に影響を及ぼし始めています。
かつてローマ帝国が国教をキリスト教にしたように、今後は国教として道教のような自然的な宗教が採用され、国のあり方、世界のあり方が変わっていくと予想されます。
この静かな革命を静観しつつ、変わらずある意味無宗教である日本が今後どうなるのか見守っていきたいと思います。