腸内細菌はやさしいお人よしじゃありません
腸内の有益菌って、いろいろとからだに良いことをしてくれますよね。
なんでここまで親切に尽くしてくれるんだろう?
…って不思議に思ったことはないですか?
腸に住まわせてもらっているから
その家賃のつもり?
少しでも宿主さんに恩返しをしたい?
いやいや!
腸内細菌って、そんなアマちゃんじゃないと思います。
どういうことか?
腸の中で
「有益菌がしてくれること」
をチェックしてみましょう。
腸の中には、病気の原因になる微生物が入ってくることがあります。
これをやっつけるためにパトロールしているのがリンパ球。
ここで重要なのは、「粘液層」です。
粘液層はネバネバ、ベトベトしているので、微生物はスイスイ進めません。
バリケードのような役目を果たしています。
腸の壁が分厚い粘液層でカバーされていれば、リンパ球はゆっくり狙いを定めて病原菌を攻撃する余裕があります。
でも、中には粘液層の薄い人もいます。
粘液層は厚い方がいいわけですね。
では、どうやったら厚くできるのか?
そこで活躍するのが有益菌なのです。
有益菌が食物繊維などをパクパク食べると、
食べカスをペッと吐き出します。
この食べカスが神経に作用して、
「粘液をもっとたくさん作るべし」の指令が
腸のあちこちに送られます。
いやいや!
腸内細菌が聞いたらきっと、
「別にあなたがたのお世話をするつもりはなかったけど」
と言いますよ。
腸内に住み着いている常在菌は、すぐに悪さをするわけでもないし
通常は無害です。
それでもリンパ球から見たら、得体の入れない、油断できない存在です。
万一に備えて、監視していないといけません。
ただ、分厚い粘液層があれば互いの位置が離れるので、余裕をもってのんびりパトロールする感じになります。
粘液層が薄いと、両者は接近します。
そうなると、リンパ球はピリピリ。
常在菌も緊張するし、居心地は最悪です。
この状況がイヤだから、腸内細菌は粘液層を増やすように働きかけているのです。
ママさんたちのためではなく、自分のためなのです。
それに、粘液の主成分であるムチンは食物繊維と似た分子で、有益菌の食糧にもなります。だから有益菌は、粘液をせっせと作り続けているのです。
腸内細菌は
お巡りさん(=リンパ球)
の性格も操作します。
よく警察ドラマで、短気で暴走気味の熱血キャラと、いつでも冷静な知性派キャラが出てきませんか。
2人はいつも衝突しているんだけど、最後は力を合わせて事件を解決。
「やっぱり、お前がいてくれて助かった」
「そっちこそ。なかなかやるじゃねぇか」
あの~
こういう陳腐な展開
1万回見てるんですけど!
でも、意外なことに、人体もベタなドラマと似たところがあります。
リンパ球にも熱血型と冷静型の2つのタイプがいるのです。
2人が力を合わせることで、いろいろな状況を乗り切れます。
どちらも必要なんです。
ただ、現代人の場合、ちょっと困るのは、
熱血型リンパ球が過剰になっている人が多いこと。
熱血型は興奮すると暴走して、あわてて銃を撃ちまくります。
近くの細胞に流れ弾が当たったりすると、細胞がダメージを受けてしまいます。
さて、ここでも有益菌がさっそうと登場して、問題解決に動いてくれます。
さっきと同じように食べカスが作用して、今度は「冷静なリンパ球を増やす」ように手配してくれるのです。これでバランスが改善します。
いやいや
これもたぶん、自分のためにやってるだけなんですよ。
だって、腸内細菌からすれば、自分の目の前に配置されているリンパ球が熱血タイプばかりになるのは絶対に避けたいはずです。
熱血タイプと冷静タイプのバランスが回復すると、こんな感じに…
最後にストレス対応について
有益菌は、いろいろな方法を駆使して、あの手この手で宿主さまのストレスを癒そうとしてくれます。
このあたりは、こちらのセミナーで詳しく解説しています。
いやいやいや!
ちがうんよ!
宿主さまがいつでもストレスまみれになっていると、腸内の環境が荒れてしまうんよ。
それが、腸内細菌はイヤなんよ!
腸内細菌にとって、「宿主さんのストレス」は死活問題なのです。
腸内細菌たちは、
今自分がいる場所で生き残るために、
できる限りのことをしています。
それが、ヒトにとってもありがたい働きになっているのです。
有益菌は、自分のことしか考えていない、
自己中の嫌なヤツではないと思います。
ヒトと有益菌は
持ちつ持たれつ
手を携えて
一緒に生きていく仲間です。
ただ
「住まわせてもらえて、食べものもいただいてるから、ご主人さまが喜ぶこともしてあげよう」
などと考えているお人よしではないですよってお話でした。
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