『論文の書き方』小熊英二
学問とは何か。
社会学は、近代(モダン)を理解した上で、アリストテレス以降の思想を自在にアレンジできるような教養が必要です。
学術論文では、自分の考え方を、思いの丈を伝えたい。これは、プレゼンや日常生活で役に立ちます。
本書は、それをわかりやすく教えてくれて、更に誤解が生じないようにQ&Aをつけてくれています。
教育の現場では、これぐらいフォローしないと成立しないのかもしれません。
方法論だけでなく原理、それと解りやすさ。だから必然的に分厚くなるんですね。
まとめ
本書は、各章の始めにポイントの箇条書き。最後に、まとめ解説の構成です。こちらを短く整理してみます。まとめの、まとめです。
1.論文は、「序論・本論・結論」という形式を持ちます。これは、役割を持ったパラグラフからなります。
2.理系の論文は「序文・対象と方法・結果・考察」という形式を持ちます。人文・社会科学の論文は1と混合が多いです。レファランスが重視されます。
3.「主題」は抽象的な問いで、先行研究を参考に決めるもの。「対象」は具体的に調査できるものを指します。
4.調べ方(略)
5.方法を組み合わせて、調査の全体を設計することを「方法論」と呼びます。(料理で言えばレシピ)
6.先行研究と「学」(略)
7.社会科学の調査方法には、量的調査(アンケート)と質的調査(インタビュー)があります。
8.研究計画書は、プレゼンに応用可能です。自分がやりたい事を、わかり易く伝えるための技術だからです。
9.「パラグラフ・ライティング」と「トピック・センテンス」(冒頭にその内容を示した、まとめ文章)。
10.レファランス(略)
11.校正と仕上げ(略)
以上です。目次のナンバーを参照しました。
さて、実践ということで、論文っぽい文章を書いてみます。
おまけ:実践・ジブリの1968
主題:鈴木敏夫プロデューサーは、なぜ小熊英二『1968』を読むのか。(東洋経済ネット、下記リンク)
私の主張は「プロデューサーは映画監督に対して共通言語を持つ必要があったから」です。
・ジブリの代表監督の宮崎さんを考えてみます。
宮崎駿、自称マルクス主義『出発点―1979~1996』。正しくは、極端な自然主義による無政府主義者。(銀河鉄道の夜、宮沢賢治に影響)。これは、私の意見です。
学生運動を思わせる『コクリコ坂から』の脚本。東映アニメ時代、高畑勲のもとで労働運動を行っていた。(『ホルスの大冒険』)
・次に、鈴木さんとは誰か、検討します。
学閥のようなものを考えます。
東大、高畑。慶應、鈴木。学習院、宮崎。
60年代から慶應大学の学生運動は長く続いたようです。1948年生まれの鈴木は、当時20歳。講堂を内部からバリケード、ロックダウンでしょうか。
・当時は、冷戦構造の中で、価値観は対立していたが、自らをどう表現するか。学生運動は、当時の若者にとって、数少ない手段だった。
課題:共産主義的、社会主義的国家の独裁の問題と、民主主義的国家の独裁(衆愚政治、せんしゅ政治)の問題は何か。
『千と千尋の神隠し』の労働と団結は何か。二人の湯ばあば。
結論:他人の教養を共有したい『仕事道楽スタジオジブリの現場』鈴木敏夫
プロデューサーは、映画監督の頭の中を、理解する必要があった。
もしかしたら、鈴木さんの立場を考えると、監督をマウントするような知識量で勝負しているのかもしれません。
名監督に名プロデューサー。鈴木さん恐るべし。