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【旅日記】京都冬の旅(4) 高山寺
京都3日め。
今日は京都の北西にある高雄に向かいます。
前日のお話はこちら。
京都は市街の他に、周辺のエリアも見逃せません。北の鞍馬・貴船、北東の大原、東の比叡山や石山寺といった京都を囲む山々のエリア、南東の醍醐、南の伏見・宇治、南西の石清水八幡といった比較的開けた奈良に近いエリアがあります。このうち、伏見と醍醐は前日に訪れました。
他のエリアもこれまでに一度は訪れていて、残るは北西の高雄だけになりました。
最後まで残ったのは特別に意味はないのですが、バスで小一時間かかるため、先送りになっていたものです。
昨年東京国立博物館で神護寺展があり、鑑賞に訪れたのですが、これは現地へもぜひ早めに行かねばと考えていたところでした。
今回、高山寺で京都冬の旅の特別案内ツアーがあったので、いい機会と思い訪れることにしました。
高雄へは、京都市バスとJRバスが路線を持っていますが、路線が異なります。JRバスは京都駅始発ですが、京都市バスは四条烏丸始発で、途中の経由も異なります。全体としてはJRバスの方が本数は多いですが、今回は宿から近いということで四条烏丸始発の京都市バスで向かうことにしました。
この日は雪こそ降りませんでしたが、朝の気温は0度。最低気温は氷点下だったと思います。そんな中でバスを待つというのもなかなか苦行です。
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朝のラッシュ時だったので遅れることを心配したのですが、始発ということもあってほぼ定刻の発車でした。それにしても四条烏丸始発のバスって、どこから来るのでしょうね。繁華街なので近くには車庫はないのですが。そもそも京都市バスって循環がたの路線が多く、始発、終着がはっきりしません。
そんな中、バスは途中の京都外語大バス停でいったん停車。
なんと、運転手が交代しました。街中のバス路線で始発や終着以外で運転手の交代を見たのは初めてです。やはりこのバス、車庫から出てきたのではなく、四条烏丸近くが終着のバスとして運行された後、この路線に始発としてやってきたのでしょう。謎の多い京都市バスです。
バスは御室のあたりから段々と上り勾配になっていきます。
そして山へわけいる道へと進みます。道路の両側には段々と山が迫ってきて、高雄病院前バス停を過ぎると山道に。とはいえ、トンネルなど明確なサミットを超えるということはなく、高雄に到着。
流石に山間部でまだだいぶ雪が残っています。
バスは、さらにその先二つバス停を進み、栂尾(とがのお)が終点です。
バス回転場と駐車場がありますが、殺風景。9時台のため、食堂もまだ開いていません。ここが高山寺最寄りとなります。
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バスの途中から高山寺参道の掲示を見かけたのですが、バス停脇に裏参道という表示があったので、ここから上ることにします。はい、お寺はさらに山の上です。
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高山寺は、誰もが知る国宝と言ってもいい、鳥獣戯画で有名な名刹です。
干支が卯年ということもありますが、昔から私も大好きで、鳥獣戯画の図柄の扇子を愛用しています。最近ではJR東日本のコンビニNewDaysが鳥獣戯画と各地の名所をコラボした巾着を販売していたりして、これも愛用しています。
高山寺では、鳥獣戯画のレプリカはもちろんあるのですが、本物は東京国立博物館で展示されています。なので、今日は鳥獣戯画が目的ではありません。
今日の拝観ツアーの集合場所は、高山寺の中でも、火災を免れた鎌倉期からの建物である石水院でした。拝観料とツアー代を納めて石水院をまずは見学します。高山寺を開いた明恵上人の時代からの建物ですが、庭園に突き出した広い縁側があり、居心地のいい場所です。
ちょうど日が当たっていたので、縁側で座ってひなたぼっこをしていました。
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10時から拝観ツアーの開始となりました。
最初に、明恵上人の生涯と高山寺の沿革についてお話がありました。
それによると明恵上人は、昨日訪れた建仁寺を開いた栄西の後継者として目されていたものの固辞したとか。一方で宗派を問わず当時の多くの文化人や宗教家、そして北条家などの武家にも慕われ、多くの人々が高山寺に出入りし、意見を交わしていたそうです。つまり文人サロンのような性格の場所になっていたと。
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その結果として、高山寺には国内外のたくさんの書物が遺されることになったのだそうです。幸い火災を免れたそれらの書物の数はなんと一万数千点。これらは一括して重要文化財に指定されています。まだ研究途上ということで、海外からの方を含めた研究者が高山寺に出入りしているのだとか。
そういう話の後に、まず案内されたのは大正時代に作られた茶室。
高山寺の文人サロン的な場所を復活させようと、当時の企業家たちがお金を出し合って作ったんだそうです。人が集まることを目的とした茶室は開放的で広め。
茶室というのは、一般に簡素な作りであることが多いですが、ここは100年、200年残すということ前提にしっかりとした柱や梁が使われているそうです。
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茶室の脇の庭は、多数の苔が生えていました。苔寺と同じくらいたくさんの種類の苔があることがわかり、最近注目されているのだそうです。
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そしてこの日のハイライト、日本最古の茶園へ。
栄西が中国南宋から持ち帰ったお茶の種は、明恵上人が預かって栽培を始めたそうです。最初はこの高山寺で。そして、ここはやはり寒いので、より適した場所として宇治を選定して本格的に茶畑を作ったのだそう。そこから日本各地へお茶が広まったという流れ。
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ここのお茶は最近のお茶の品種も植えてあるそうですが、古い木は樹齢100年を超えるものも多数あり、それらをDNA鑑定で調べてみると、まさに中国の原種に近いものという調査結果が出たそうです。
ここのお茶は生産量は少ないので、基本は行事の際などにのみ使っているとか。ただし、わずかながら一般にも頒布しているそうです。
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ちなみに、茶園の手入れは宇治の生産組合の皆さんがきてくれているとか。
茶園を見学した後は、お茶室に移動して、お茶とお菓子をいただきました。
お茶は普通の宇治茶でした。お菓子は高山寺限定で作ってもらっているお菓子だそうです。販売もしていたので、帰りに買い求めてきましたが、このお菓子が絶品です。
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ツアーは終了しましたが、まだ境内の見学をしていなかったので、金堂や明恵上人の墓所などを見学させていただきました。
文化財の収蔵庫は、山の中腹にありながら高床式の立派なものです。文化庁の予算で作られたものらしいです。
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なんだかんだと見学していたらお昼近くになったので、バス停に戻ってみると、食堂が一軒開けてました。やはり冬はほとんど休業なんですね。
開いている店に入って、早めのお昼ご飯として天ぷらそばをいただきましたが、入っている天ぷらの量がすごかった!!
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