ヴィンテージ古着市場の現在と未来
今回は、久しぶりに、ちゃんと業界人ぽいことを書いてみようと思います。
過去に書いた記事ではさんざん言ってきましたが、2021年はヴィンテージ古着の在り方や価格高騰についてすごく考えさせられた1年でした。
今回は、古着業界の中でもヴィンテージという古着のジャンルが、今現在どうなっているのか、今後どうなっていくのかを予想してみます。
古着ファンのヴィンテージ離れ
まず改めて現状をお伝えすると、ここ2年で、ヴィンテージ古着は凄まじく価格が高騰しました。
例えば、Championのリバースウィーブ。古着の代表アイテムとも言えるスウェットシャツとして有名ですね。
僕の店舗では2年前は5900円だった物が現在は12800円。19800だった物は39800円。
リバースウィーブだけではなく、60-70年代のモヘアカーディガンや一部のミリタリーアイテムも2倍以上の金額に高騰しています。70年代以前のリーバイスデニムに関しては2倍どころではありません。
要因はさておき、この価格高騰の事実はなかなか受け入れ難いですよね。
古着業界に7年半居る僕ですら戸惑っています。
僕が以前書いたこちらの記事には、「コスパが良い」というポイントをお伝えしました。
しかし、ここ2年であまりにも急激に値段が跳ねがったアイテムが多く、人気があるヴィンテージ古着を "安く" 買うことは極めて難しくなっています。
値段が跳ね上がっても買う人は買うので、店としては売れるから値段を上げる。
しかし、買えなくなったと言う古くからのヴィンテージ好きの方は非常に多い。
ヴィンテージ古着が好きな人の中でも、分断が起きていると思います。
高所得でお金に余裕があるか
値段に合った価値を見出せるか
この2択だと思っていて、後者に関しては葛藤を抱く方が多いでしょうね、、
既に持っているヴィンテージ古着を着て楽しんではいるものの、良いと思える物は手を出せないくらい高くなってしまい、なかなか買い物が出来なくなったという方が過半数ではないでしょうか。
90年代頃のリバースウィーブはさておき、70年代以前のヴィンテージ古着はもう値段が下がらないことが予想されるので、ここからは価値が付きつつも手の出しやすいヴィンテージ古着に需要が集中してくると思われます。
ネクストヴィンテージの需要拡大
以前の記事でも触れた、僕が思うネクストヴィンテージ。
その中でも、70〜90年代のラルフローレン、L.L.Beanはズバ抜けて需要が高まっていて、それに次ぐ類似ブランドとして同年代のWoolrich、J.CREW、Eddie Bauerも引けをとっていません。
これは、当社の店舗の売れ方にも顕著に表れていて、現在〜未来の古着シーンにおいて重要ブランドになると断言できます。
上述した通り、ヴィンテージ古着の急激な価格高騰、またミーハー化しつつある市場に辟易している人達が、別の古着の楽しみ方を見出そうとしています。
その1つがネクストヴィンテージを楽しむということ。
ヴィンテージ古着を "安く" 買うことは非常に難しくなっているとお伝えしました。
上記のブランド達のアイテムは素材や縫製のクオリティ、デザイン、プライスのバランスが素晴らしく、まだ相場が上がりきってないので、まさに手の出しやすい「安くて良い古着」といえるのではないでしょうか?
安くて良いと思う物を買う
これこそが本来の古着の楽しみ方で、次世代のヴィンテージ市場が作られていくのだと思います。
現在、プレ値がついているヴィンテージ古着を扱える店は非常に限られていて、ほぼほぼ買い付けは不可能と思っていいのが現状。
今後オープンしていく店舗は、冒頭で挙げた70〜90年代頃のネクストヴィンテージを強みとして取り扱うことになると思われます。
若い世代への伝達
現在は古着ブームと言われていますが、今の若い世代は洋服にお金を費やす人が少なくなっていることは、数々の集計で明らかになっています。
古着も、安ければ正義のような風潮が強いので、こだわりを持って楽しんでいる人は一部だと思うし、ヴィンテージ古着に対しても興味を持った人は少ない印象があります。
若いスタッフを採用する中〜大規模の古着屋においては、一般的な感覚を持つ20代前半の子が働いているので、残念ながらというべきかヴィンテージに関する知識が乏しいことがほとんど。
正直なところ、お客様へもヴィンテージ古着の面白さを伝えることが出来ない販売員は非常に多いのではないかと思います。
しかし、小規模でこだわりを持って古着を販売している店のオーナーは、ヴィンテージ古着を伝える力があることがほとんどなので、価値のある古着を教えていくことができる。
周りを見てもそのような店が増えていて、顧客になった若い子達はヴィンテージ古着に興味をもっていくのだと思います。
古着屋は、これからもどんどん増えていくと思いますが、よほどのバイイング力や個人の影響力などが無いと、正直稼いでいくことは難しいと思います。
しかし、古着の楽しさを伝えることにおいては、小さい店の方が圧倒的に向いているので、クオリティーの高い古着の良さをもっと多くの若い世代に広めることができます。
ただ安くて可愛いだけの古着を楽しむだけではなく、質が良くて価値のある古着を楽しむという選択肢を持つ若い世代が増えてくるのではないかと思っています。
現状のヴィンテージ古着市場は、大きな転換期にさしかかっているということ。
そして、新たな流れがやってきているということ。
また新しい波を捉えて、僕ら古着業界に携わる者たちで新しい古着を盛り上げていきたいと思います。
これからも古着を楽しんでいきましょう。
では。
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