『GOTHAM / ゴッサム〈シーズン5〉』感想
お気に入り度:★★★★・ 4 / 5
バットマン出現前のゴッサム・シティを舞台に、そこに住まう人々の姿を描いた実写テレビシリーズの最終シーズン。本編11話+後日談1話の計12話で構成される。街としての機能が失われた秩序なきゴッサムで展開される緊迫感漂う本編が面白いのは勿論のこと、後日談では遂にあの姿が……。
ゴッサム・シティ。あまりに狂気が蔓延りすぎて、真っ当に生きる市民が全然見当たらず、いっそ滅んだ方がいいんじゃないかと何度も思えてしまうような街。そんなゴッサムの市民たちが、街を滅ぼそうとする外敵を前に、最終シーズンにして遂に結束する。この街にはバットマンが守りたい何かがあるんだと、やっとそう思える瞬間が見られて、感激せずにはいられない。
ふりかえればメインキャラからモブキャラまで濃すぎるこの街で、5シーズンの間に様々な物語があった。クリストファー・ノーラン監督のダークナイト3部作の影響下にあった『ゴッサム』だが、この作品が作り上げていった「不気味で可笑しいゴッサム・シティ」は、間違いなくダークナイト3部作のとは異なるゴッサム・シティだ。
どのキャラクターにも思い入れが強いが、とくにキャメロン・モナハンが演じる、孤独で、ブルースからの愛を渇望し、不思議な色気を纒い、悪事を心の底から楽しんでいる怪人物――後のジョーカーことジェレマイアは素晴らしかった。勿論ジョーカーとしての最終形態の方も、全体的な雰囲気はジェレマイア時代の方が好きではあるが、極めて邪悪で印象的。
また、片やバットマン、片やジョーカーになりはしたが、二人とも殺人鬼のジェロームに狂気を見いだされた同士であるという、ブルースとジェレマイアの関係性も良い。バットマンがジョーカー誕生の原因であるとか、ジョーカーがウェイン夫妻の死の原因であるとかいう関係性よりも魅力を感じる。
DCコミックスのキャラクター使用の制約により、髪を緑色にすることも、ジョーカーと名乗ることもできなかったキャメロン・モナハンのジョーカーだが、だからと云って歴代ジョーカーの一人に数えないなんてことは考えられないし、ありえない。
他のバットマン作品ではあまり描かれることのなかった「バットマンが両親を亡くしてから修行の旅に出るまで」は興味深い題材だった。様々な制約により、製作者の思い通りに作れなかった部分もあるだろう。後日談を兼ねた最終回は、観たいもの全てが観れる内容ではなかったものの、とても『ゴッサム』らしい最終回だったと思う。