犬、飼おう〜first episode
〜愛犬コロンを16歳8ヶ月で看取るまでの記録〜
長女が小学校に上がり、個別支援学級に通う長男と朝一緒に登校するようになってから、私は長男のお迎えの時間以外は、家のことと友人たちと幼児向けのお話し会の活動をたまにするくらいの専業主婦だった。
年子が小学生になるとそれまでの生活が一変し、ありがたいことに自由な時間が出来た…ように思えたのに、なんとなく不調、気分が落ち込みがちな日が増え、鍼灸や整体、漢方にお世話になったりしていた。
両脇に幼児を抱っこしていた子育てから考えると、文字通り私の手から離れた子どもたちに対し、嬉しいのはもちろんなのだが、今思うと喪失感もあったのだと思う。
ある日夫が「犬、飼おう」と言い出した。
「毎日お散歩しないとならないから自然と外に出ることになるし、なにより子どもたちにもいいと思うんだよ」
夫から、子どもの頃飼っていたシェパードは警察犬になったんだと、誇らしげに以前から何度も(!!)聞かされていたのだが、団地育ちの私は、ハムスター、モルモット、インコ、文鳥など実家で飼っていた小動物にもそれほど興味は無く、小学生時代に友達の家の犬に追いかけ回された苦い経験から、犬にも、正直を言うと当時夫の自慢話しにも全く興味が無かった。
私は興味がなかっただけで、いいねともイヤだとも言わずにいたので、着々と話しを進めていた夫から「親父にダックス頼んだから、来月ワンちゃんが来るよ」と発表された時には喜びより不安の方が大きく、それでも子どもたちが予想以上に喜んだので、それならばママ頑張る!と思えるようになった。
ワンちゃんを迎えるための買い物をしていたある日、まだ会話もままならない長男が「いぬのなまえはコロ!」と唐突に名前の提案をしてきた(笑)
「ずいぶん古風な名前だね〜」「ダックスはヨーロッパの犬だから…う〜ん…」「あ、コロじゃなくてコロンならどう?」「それいいね」「うん可愛い」「じゃあコロンに決定」と、まだ顔も見ていないのに名前が決定した。
2005年の2月、義父が知人から格安で譲っていただいた「コロン」を長野県までお迎えに行った。
「うわ〜小っちゃ〜い!ムクムクしてるのね〜。こんにちわ、コロン」などと言ったような言わなかったような、義父母への挨拶もそこそこにとんぼ返りしなくてはならず、コロンをフリースに包んで膝に抱っこし自宅に向かう。
途中、「ん?電話鳴ってる?」と思うくらいプルプルとコロンが震えていることに気付いた。
「寒いのかな」「怖いのかな」と心配になったその時からコロンへの愛おしさに火がついた。
産まれた土地、お父さんお母さんから離れ、我が家に来てくれることになったのだ。
来てくれると言うか、ストレートに言ってしまえば、「買った」のだが、この命への責任の重さを、コロンを抱いて体温を感じたこの時に初めて思ったのだった。