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犬、飼おう〜last episode

〜愛犬コロンを16歳8ヶ月で看取るまでの記録〜 


金曜は私の方が夫より帰りが遅くなるので、毎週金曜日の夕飯は個々で自由に済ませることにしている。

その日、コロンの好きなタレ味の焼き鳥を買って19時半頃帰宅すると、夫が「コロン、ご飯食べないし牛乳も飲まなくて、ずっと呼吸がハァハァしてるんだよ」と、心配していながら…も、晩酌しておる!おい。。。

その2日前からあまり食べなくなっていて、前日も元気なく横になっていたので、トントンして添い寝しようと枕に顔を寄せると、珍しく私の顔を舐めてきた。
見るとお目目が潤んでいたので「今までありがとうって言ってるの?うんうん、ママもいっぱいありがとうだよ。わかってあげられないこともいっぱいあってゴメンね」とか、たくさん話した。
塩味の涙が美味しかったのか、だいぶしつこく舐め続けてきたので、顔中ツバ臭くなったが、ここ1ヶ月くらいは吠えられ、咬まれる日々だったのでそれでも嬉しかったし、胸騒ぎとは違うのだけれど、いよいよなのかと込み上げてくるものがあった。


早速バーナーで焼き鳥を炙ってコロンの鼻先に持っていくけれど、食べるどころか嗅ごうともせず、全身でハァハァしていて、ならばお水だけでもとシリンジで流し入れてみるが、飲むこともなくタラタラと溢れる。
せめて私の指についたお水を舐めさせようと口に触っても、咬みついてもこない。

19:40「コロン、今日ヤバそう」と仕事中の長女にメッセージを入れた。

「ワォーン」と力なく鳴いた後、まもなく長女が帰宅。

「そう言えば俺が帰ってきた時も、待ってたんだよ!みたいにワォーンて鳴いたんだよ」と夫。

「そう言えば、昨日、なかなかお昼寝出来ないみたいだったからトントンして添い寝しようとしたら目をウルウルさせて顔舐めてきたの。珍しいでしょ。多分、今までありがとうって言ってたんだと思う」と私が言うと、夫も長女も今日が「その日」になるかもという覚悟が出来たようだった。

長男は毎週録画しているアンビリーバボーを流しながら、いつも通り、塗り絵をして過ごしていたが、一応「今日コロン死んでしまうかも知れないよ」と伝えた。
「えーっ!」とちょっと戸惑った顔をして部屋をウロウロしたけれど、またすぐ塗り絵を始めた。

私と夫と長女で、久しぶりにオムツから解放された裸んぼのコロンを囲んだ。
全身の力が抜け、何ヶ月ぶりだろう、咬まれず怒られずに抱っこすることが出来、ただただずっと触り続け、頬を寄せたり、匂いを嗅いだり、話しかけ続けた。


毎晩22:30に就寝すると決めている長男は、そんな最中でもいつも通り「おやすみなさい」とサッサと寝た。
平常心にも程があるというものだ。

一方、私たちは「コロン、もういいんだよ」「好きな時に楽になっていいんだよ」「寂しくなるけど…楽になっていいんだよ」「いっぱいありがとうね」「楽しかったね」「頑張らせてゴメンね」もう、何を何回言ったかわからないくらい、言い続けた。

日付けが変わった頃から、浅くハァハァしていた呼吸がゆっくりになり、間隔が開いてきた。
呼吸が止まったと思う瞬間が何度かあり、コロンの胸にずっと耳を当てていた夫が「まだ心臓動いてる」と何度か言う。

0:30、寝ている長男に「コロンが死んじゃうよ、ほら、起きて、見送ろう」と起こしたが、「えっ!」とバババッと起きたかと思ったらバタバタとトイレに行って戻ってきて、またすぐ寝た‥
あらま、名付け親みたいなもんなのに執着はなく、まったく仕方ないひとだ。

長男の奇行に驚きながらも、「コロン!コロン!みんな居るからね」と呼び続ける。

0:40呼吸が止まり、0:43とうとう心臓も止まった。。。

2021年8月28日 永眠。


眠れるわけもないのだが、リビングにお布団を敷いて、真ん中にコロン、手を繋いで長女と川の字で寝た。

翌朝いつも通り6:30に目覚めた長男に「ほら、コロン、死んじゃっても笑ってるよ」と言うと、「えー!?コロンが死んでしまったなんて!」と、そんなの初耳ですみたいになってたのには笑った。
完全に寝ぼけていたのだね。そしていつも通りに支度をし、出勤して行った。

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その身体を手離すのは寂しく、火葬場に連絡するのを躊躇していたのだが、3日後、友人に教えてもらった斎場で、温かく穏やかな気持ちで見送ることが出来た。。。

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16歳8ヶ月と1日、うちに来てからは16年6ヶ月余り、たくさん笑いと癒しと愛を教えてくれた愛おしい愛おしい愛おしいコロン。

半身不随になって2ヶ月間お世話をしているうちに、近いうちにこの日が来る心の準備が出来てきていたせいか、寂しくはなったが、苦しむ姿や凶暴な姿を見ないで済むようになった安堵の気持ちも大きい。。。

なによりも、別れの淋しさに負けない、喜び、笑い、癒し、コロンと過ごしたなんでもない6000日あまりの、毎日の些細でも幸せな想い出の方がたくさんある。。。


それでも、コロンの身体を手離してまだ2週間。
コロコロ転がって遊んでいた姿、お風呂から出てくるのを待っていた姿、ドアを開けると玄関で丸くなって寝ていた姿、トイレにまで着いてきて足元に座る姿…
家中のあちこちに幻が見えて、ひとりになると声をあげて泣く時もある。

少しでも長生きしてもらうために、元気のない原因を調べて徹底的に治療する方法もあったとも思う。
天命を受け入れようと決めたことが正解だったのかはわからない。
それでもやりきったと、私は言える。

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