はじめまして「夢洲駅」
2025年1月19日、大阪メトロ中央線の新駅「夢洲駅」が開業した。これまでの西の終点「コスモスクエア駅」から北へ3.2㎞延伸。「万博の表玄関」となる新たなターミナル駅が万博に3ヶ月先駆けて、グランドオープンとなった。そんな新駅に開業2日目に行ってきた。
大阪駅から環状線
京都から大阪へやってきて、大阪駅からJR大阪環状線で中央線乗り換え駅「弁天町」へ向かう。この開業に合わせてJRとメトロがおトクに便利に乗れるデジタルきっぷが誕生した。
大阪スマートアクセスパス
「大阪スマートアクセスパス」は大阪メトロ全9路線とJRの一部路線が1200円で乗り降り自由になるQRコード式のデジタルきっぷだ。
QRコード改札
京阪神にあるJR西日本の一部駅ではすでにQR対応の新型改札機がお目見えし、サービス開始まで読み込み部分にカバーが被せてあった。これがついに稼働開始し、カバーも外れた。
JR西日本のプレスリリースによれば、今後京阪神を中心にQRコード対応改札設置駅を増やす方針。QRを使った乗り放題きっぷがゾクゾクと登場して、会社の垣根を超えた列車旅のフットワークが軽くなりそうだ。
JR弁天町駅
弁天町駅で下車。万博による混雑緩和として、天王寺方面ホームに新たな改札が造られている。ここから大阪メトロ中央線へ乗り換えることもできる。
大阪メトロ弁天町駅
大阪メトロ中央線の弁天町駅へ。駅の看板にはメトロの前身「地下鉄」の名が残されているが、線路はJRよりも高い場所に位置する。駅周辺は埋立地で地盤が弱い上に、津波で水没するリスクがあった。これら理由で地下では造れず、高架で開通することになった。
夢洲行き
中央線ホームに上がるとさっそく「夢洲」の表記が姿を現す。「コスモスクエア」よりはスッキリした字面だが、ポップでキラキラな雰囲気もある。
簡易的な「夢洲」
一方で、ワープロ打ちのような簡易的な「夢洲」という貼り紙も気になる。現在工事中でサイン類もいずれ取り替えられるみたい。ある意味、貴重かも。
30000A系
夢洲行きがやってきた。車両は「30000A系」、万博の輸送力増強用として2022年にデビューした。行き先にマッチしたこの車両もまたビジュアルがポップだ。
御堂筋線、谷町線用「30000系」をベースに、台車を変更したり、緑や黄色をメインにドットを散りばめたビジュアルを採用した。
万博閉幕後、谷町線に移籍する予定で5桁の頭から2桁目が谷町線(2号線)を示す「2」が使われている。今の独特なビジュアルが谷町線ではどうなるか、行方が気になる。
中央線ダイヤ改正
中央線及び相互乗り入れしている「近鉄けいはんな線」では夢洲駅開業に先駆けた2025年1月11日にダイヤ改正を実施。ダイヤやスピード、乗務員の形態にさまざまな変化が生じた。
始発電車の時刻繰り上げ
70㎞/h→95㎞/hへアップ(大阪港〜コスモスクエア間)
中央線にてATO(列車の自動運転)の開始。→運転台のスイッチだけで列車の発車から停車まで自動操作する。
乗務員動作の変更→前方の運転士がドア操作、放送+後方の運転士が後方監視して、異常時に非常ブレーキをかける。
考察
ダイヤ以外で変わったのは運転士関係。観察しているとワンマン運転のやり方になっていた。
運転士1人だけでも事足りそうが、運転士2人が乗務している。始めたてだし、夢洲駅で前後交代するとなると混雑を抜けるのに苦労する。
万博が終わるまでは、迅速で安定した運行のための対処として「運転士バディ」にしているのだろうかと個人的に見て取れた。
95㎞/h
大阪港〜コスモスクエア間は速度が95㎞/h大幅に向上。急な下り坂も相まってかなり飛ばしてる。地下鉄やメトロを名乗る電車としてはかなり速い。東京メトロ東西線に次いで国内2位、「第三軌条※」の地下鉄としては国内1位のスピードだ。
元から、けいはんな線で95㎞運転はやっていて、けいはんな線と中央線全車両が対応している。同区間の信号装置を変えたことで速度アップを実現させた。
コスモスクエア→夢洲
コスモスクエア駅を出発し、次は夢洲。ついに未体験ゾーンへ突入する。
夢咲トンネル
トンネルは新しく見えるが、2009年には既にできていた。「夢咲トンネル」という鉄道・道路供用のトンネルで、完成してからの15年あまりは道路のみが使われていた。
「オリンピックの誘致失敗」など紆余曲折あったが、万博誘致が決まって、ようやくトンネルが本来の姿になった。念願の開通と言える。
夢洲駅
列車は「夢洲駅」に到着した。駅に着いて目に入るのは細く横に長いグリーンの灯りと連動する黒い駅名標。着いた瞬間からインパクト抜群だ。
コンコース
ホームからコンコースへ上がる。開放的でたくさんの人を捌けそうな広々とした空間が広がる。
トイレには混雑状況を一目で見れるモニターが備えられている。これも十分インパクトあるが、たぶん日本初かもしれない100倍のインパクトある珍しいトイレがある。
ジェンダーレストイレ
多様な性に配慮した「ジェンダーフリートイレ」。小ぶりの個室が並ぶ新しいカタチの「多目的トイレ」だ。これなら、男女トイレ、車いす対応多目的トイレを敬遠する人でも入りやすいかもしれない。しかし、当事者はどう思うのだろうか。評価を聞いてみたいところ。
ようおこし
そんな新機軸でもトイレのピクトグラムが「ようおこし」とペコリしている。大阪メトロ名物と言える独自の表示スタイルは崩さない。
改札
改札機はたくさんあり、多くはQRコードやクレジットカードタッチ決済にも対応、顔認証改札もある。
改札の電光表示には「←」の下に「QR」「きっぷ」の他、「タッチ決済」のマークも表示されている。他社では床面にしかなかったが、一体で表示されるのは見やすく、床面もスッキリしている。
細長のフルカラー電光表示
改札頭上には細長のフルカラー電光表示板。「改札」という黄色の看板とローテーションで「ようこそ夢洲へ」が多言語で表示される他
「ようおこし夢洲へ」など大阪弁が表示される。
反対側も同様、駅名の看板や
「Osaka Metroのご利用おおきに!」などのメッセージがローテーションで流される。
駅舎
駅から外へ出てみる。白いドーム屋根と吹き抜け構造の階段、エスカレーターが目を惹く。
「夢洲駅」と書かれた門には「Osaka Metro」や「M」を模したロゴマークがない。「無印良品」のような「シンプルイズザベスト」の雰囲気がある。
駅の外
万博会場の周囲はまだ工事中。工事関係者やヘルメットを被った見学者などがウロウロしている。道路上ではダンプカーやミキサー車、港へ出入りするトラックが行き交う。「工場地帯の秘境駅」の様相を感じる。
教習中の大阪シティバス
大阪シティバスの電気バスが教習してる姿も多く見かける。万博会場からJR桜島駅や京阪電車「中之島駅」へ直通するシャトルバスが運行される予定になっている。大阪シティバスでは詰めの調整が行われていることだろう。
ぶらり歩き
夢洲駅から橋を渡って「舞洲」という別の島へ歩くこともできる。かなりの距離だが、ちょっと足を延ばしてぶらり歩きしてる人が多い。ここから帰る道中
「すいません、舞洲ってこっちですか?」
と聞かれたほど。(僕は橋で折り返したけど。)
来た道を戻る
夢洲駅へ戻って、来た道を列車で戻る。ホームの先端にはたくさんの人が詰めかけ写真を撮っている。
近鉄の「アラフォー電車」×新駅
近鉄けいはんな線の車両も夢洲に進出。新型車両は造らず、ベテラン既存車両が万博輸送を担うことになる。真っ白で綺麗に見えるが今年39歳を迎える「アラフォー」だ。
関東の鉄道は大量淘汰させるが、関西の鉄道は「もったいない精神」が強い。長くて60年ぐらい長持ちさせるのがベター。「新駅×ベテラン電車」というこの光景は関西らしい風景と言える。
400系
帰りは大阪メトロ「400系」。「宇宙船」のような唯一無二のインパクトあるビジュアルは同じくインパクトある「夢洲駅」に1番似合うと言っても過言ではない。
noteで見た400系の感想
去年末にnoteを見てみると、「中央線の車両(=400系)」の感想を綴ってる旅行記を見たことがある。車内に紙の広告が一切ないことに驚かれていた。
「初詣は伊勢神宮(近鉄沿線?)へ」と掲げた広告(=近鉄7000系?)などに対しても、関東とは違う広告文化の違いに感銘を受けていらっしゃった。
この記事に鉄オタの僕も共感した。
あの感想を踏まえて、改めて見ると400系車内のスッキリ感は誰でもびっくりする開放感。
「関西の電車ナメんなや」と言わんばかり。
こんな電車なかなかいない。
大阪メトロで聴く『メトロシティ』
帰りでは少し音楽もお供。「メトロ」にちなんでimaseと「なとり」がコラボした『メトロシティ』という曲で夢洲を後にした。
本来は新幹線のチケットレスアプリのCMソングだが、僕は新幹線より地下鉄で聴くのが1番だと思ってる。ポップで都会的なキラキラしたメロディとリズム感は地下鉄一択。あくまでも個人的こだわりだ。
まとめ
夢洲駅に上陸し、初めて「夢洲」をぶらりした。未完成ゾーンの多さや「都会の秘境」チックな街と新しくてインパクト抜群の駅はなかなかの刺激だった。オープンしたばかりの新物見たさの鉄道ファンや「関西テレビ」「読売テレビ」など報道クルーもたくさんいた。
夢洲駅は2023年に開業した大阪駅の「うめきた地下ホーム」に毛色はそっくりで、ミライ的新機軸が多い。新しいもののワクワク感や未完成の今しか味わえない貴重なタイミング。これが万博本番となれば、凄まじいことになるだろうとは思う。
2025年4月までの間はまだ駅をじっくり見れる余裕はある。訪れるなら今のうちだ。