婚活マエストロと僕の結婚観
『婚活マエストロ』を買って読んでみた。2024年度本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りに行く』で大ブレイクした宮島未奈さんの最新作だ。
40歳独身未婚男性「猪名川健斗」がアパートの大家さんに紹介された婚活パーティーに参加。ネット上で「婚活マエストロ」という異名を取る凄腕MC「鏡原奈緒子」と出会う。
主人公の「猪名川健斗」はWEBライターとして生計を立てている。在宅で人付き合いが少なく、恋愛にもかなり疎い。多趣味な僕と無趣味な猪名川で差があるが、「自分もこんな40歳あるかもしれない」なんて思う。
婚活パーティーに始まり、シニア向け婚活パーティー、婚活バスツアー、婚活アプリなど婚活のリアルみたいなのがフィーチャー。婚活とは無縁でも「なんとなくそんな感じなんやぁ。」「怪しい人も紛れ込んでるもんやな」とか想像しやすい。
物語の舞台は静岡県浜松市。「ザザシティ」「遠鉄百貨店」など実在の商業施設が登場している。浜松市は個人的に2回行っていて、かなり身近なところ。
滋賀県も登場する。婚活バスツアーに参加した猪名川が大津市で「ミシガン※」に乗った。同県竜王町にある「アウトレットモール」にも立ち寄り、自由行動でMOMOという参加者とブラブラしていた。
成瀬あかりは一度も出てこないが、作者ゆかりの2つの地域が登場するのは宮島さんらしい。
齢26にして独身かつ交際経験なしの僕にとってはこれだけでも、婚活のリアルをわかった気にはなれたと思う。大学の先輩とお茶をしたときにも「マッチングアプリ」やってると言っていた。仕事しててもいい雰囲気にはなりにくいだろうし、趣味の好きで繋がる人はここまでしないと出会いにくい。
僕が生まれたとき、父はすでに40代でもうじき70歳。僕には兄貴姉貴がいないし、父方のいとこ5人は全員5歳以上年上。かなり結婚は遅かったと推察される。その点も猪名川に通づる部分はある。真面目な父と怠惰な猪名川という違いはあるが、恋愛に対する価値観はなんとなく似てる気がする。
好きや感情を爆発させやすい僕で、何気に「話しやすい」と言われることもある。だからと言って、女性とのデートは1度もない。友だち付き合いもあまりないし、旅好きでも友だちを誘わず、1人旅。フェスすらヨルシカ見たさで1人で参戦できる。
インスタグラムを見てると結婚や出産の報告が度々流れてくることがある。データとは裏腹に意外に結婚してる、子どもできたという人は多い。どういう出会いをしたかはわからないし、両親ですら出会いのエピソードを聞いたことがない。
そもそも、高校時代の片想いを消化不良にして、怖いままだ。好きだ好きだと言いまくった結果、「怖い」と嫌われた。成人式で話しかけられても、未だこういうわだかまりは抜けなかったのだろうか。
結婚や恋愛について考えさせられた『婚活マエストロ』。買ったのは1ヶ月前でまあまあサボっていたが、結局いい物語だった。成瀬とはまた違う毛色のようで、ほんのりと成瀬を彷彿させる描写も見ることができた。
やっぱり宮島作品好きやなぁ。