広島・河井派選挙違反事件の公判について(雑感)
東京地裁で、河井夫妻の公判が始まった。100名をはるかに超える証人が尋問され、うち40数名は広島にいるままビデオリンク方式で尋問を受ける見込みと報道されている。
最大の争点は、河井夫婦が渡した金の趣旨になるだろう。投票買収、運動買収といった「選挙に関する」ものなのか、そうではなく、政治活動に関するものでしかないのか。検察と被告人、弁護人は平行線状態で最後まで争うだろう。
ただ、私自身は証拠を見ていないものの、入手できた公訴事実(供与先の一覧表も含め)を見ると、昨年7月の参議院選挙で、6月後半から7月にかけても、かなり金を撒いている。話題になっている亀井静香氏の秘書とされる人物には、7 月の公示日の前日に200万円を渡している。選挙の直近でこれだけの金を撒くというのは、選挙実務の常識でもおよそ考えられないことで、どう転んでも、すべて真っ白(灰色でも構わないが)の無罪というのは、かなり難しいということを、長年の実務感覚では感じるものがある。
100人をはるかに超える証人、それらはいずれも河井夫妻とは様々な関係を持つ人々だが、それらを延々と尋問するということになれば、罪証隠滅の恐れという観点で、裁判所もなかなか保釈は出さないだろう。実際、繰り返し保釈請求しているものの、両名とも却下されている。
こういう場合に、1つの方法として、検察官請求証拠について、信用性を争いつつ基本的に全部同意して、その上で必要な証人を弁護人申請で呼ぶ手がある。こうすれば、検察官の主尋問が終わったと同様の状態に持ち込め、延々と一から証人尋問しているよりは、格段に保釈が出やすくなる。
こういう手法は「人質司法」を是認するものだと、あまり評判は良くないが、保釈を早期に得るための方策として採られることもある。本件でも、上記のような全面無罪が難しいという状況を踏まえれば、あり得る手法ではなかったか。
特に河井克行氏については、供与額が多額で、有罪になれば(どこまで有罪になるかにもよるが)、執行猶予がつかない実刑ということも大きく視野に入ってくる。単に無罪だというだけでなく、有罪になっても実刑にならない弁護も必要だろう。明らかに有罪になるもの、有罪になる可能性が高いものは「捨てて」、できるだけ多く無罪になる供与事実を増やして、有罪になるものを絞り込んでいく、という弁護も必要になってくるように思われる。
あくまで報道しか見ていない状態であるが、現状で、そういう考えられた被告人、弁護人側の公判対策が講じられているようには見えない。今後に新たな展開が出るかもしれず、引き続き公判状況には注目しておきたいと考えている。
以上
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