バンドマンに優しい香港の音楽事情
以前、香港バレエ団に就職しに日本から来た友人がおりました。
「日本ではダンスで食べていけないけど、香港ならダンスで食べていけるから。」そう言って、二年ほど香港でお仕事をされておりました。
その後は西洋の方に渡っていかれました。
香港はアートの地位が日本より高く確立されております。私はバンド活動をしておりますが、音楽もそう。
日本で素人バンドがライブをするとなれば、どこかのライブハウスを借りて、会場を借りる費用を少しでも取り戻そうとチケットを売りさばき、
…と言っても、やっぱり知名度のない素人の下手くそな演奏に、そうそうお金を払ってまで来てくれる人はいないから、結局自腹でチケットを友達にプレゼントとかして、更に、頼み込んで来てもらう、とか。
練習も発表も全て自分持ち。
香港では、バンド生演奏を売りにしているバーがいくつもあります。
お抱えバンドはありますがバーによっては誰でも、どんな実力でも飛び入り参加できる枠を設けている所もあります。
そして、その枠でバーの目に留まると・・・。
—―――《私達の場合》—―——
余りにも下手過ぎて、結成から初ライブまでに一年かかりました。
女性4人のバンドですが、割と皆「コレじゃ世に出せない」という控えめな感じで、初お披露目まで時間がかかったわけです。
心臓が口からせり出してきそうな緊張を乗り越え、上述の飛び入り参加枠のライブを終えると、ミキサーをしていたそのバーのオーナー(アメリカ人)が寄って来て
「Hey, Good job‼ you are so great!ナンチャラハンチャラ~(いや~、良かったよ、君たち!よかったら今度またライブしに来るかい?)」
みたいな事を言われました。
私達は初ライブで運よくオーナーから声をかけてもらい、バーからの依頼でライブできるようになりました。
その他、色々なご縁で香港でバンド歴の長い先輩の方から誘っていただいてライブに出させてもらいながら今に至ります。
(今年はコロナ爆発前の1月ライブが最後でした)
バーの依頼でライブをすると、何と!ギャラ(交通費程度です)までいただけてしまうという(飲み物も一杯タダ!)
バンドマンにはとても恵まれた環境が、ここ香港にはあります。
今思えば、あんな演奏でよくそんな声かけて下さったなと思うくらいヒドい演奏ですが、ぶっちゃけ女性4人でヘビメタ、ハードロック系があまりいないんです。
・・・ハイ。私達全く実力ではございません。レア度のみ。
チーン(お鈴の音)
**普通に演奏の実力がそこそこあってキャラが立っていれば声を掛けられます。
一方で強く感じるのは、日本人は一般的に探求心や向学心が強く、一つの事を極める精度が他の国と比べてもずっと高いという事。
高み高みと目指す一途さと練習量は群を抜いてると思います。
そもそも真面目で勤勉な民族です。日本人ほど緻密で細やかな人種はいないのではないでしょうか。
香港に来たばかりの頃、漢字の国なのに皆字が汚い事に驚きました。
日本みたいに習い事で書道、という文化が香港にはありませんでした(逆に大人になってからの習い事にはあります)
学校にプールがあるとも限らないので泳げない人や、リズム感イマイチの人も日本よりずっと多い香港。
教育の力の入れ方の違いなのか、日本は平均点では香港よりずっと芸術的センスが上だと思います。
歌う事、踊る事、絵を描く事、字を書く事・・。
だからこそなのか、逆にいい学校に入るのに、ピアノやバイオリン、水泳、テニス、格闘技などは(優秀な成績を取っている場合は)直接入学に有利なポイントにもなり、アートの地位も結構確立されている香港。
つまりできる人が特別で、出来ない人はホントに「出来ない」レベル。
一方、学校の体育教育やプールや書道や家庭科や技術のお陰で「皆それぞれ、どれもそこそこ」出来てしまう日本には、国としてそうした芸術家を支え育てる土壌があんまりないのでしょうか?
国としては学校教育の中で「そこそこ普通レベル」まで持っていく事で国としての責任は果たしたんだから、もうそれ以上は勝手にどうぞ、って感じでしょうか。
何せ学校出て、さあこれからだ、という後の土壌が全く肥えていないせいで、どれだけの素晴らしい芸術家がスポットの当たらないまま生き埋めになってしまった事でしょう・・。
それを思うと、20年以上のブランクを空けてバンド活動を再開した場所が香港だった事はラッキーだったのかな~と思うおばちゃんです。