『猟罪図鑑』 中国ドラマ 鑑賞記録
主人公の「似顔絵捜査官」という職業について、犯罪捜査といえば漠然とモンタージュ写真のイメージが強くて、実際どの程度「絵」が使われているのかはっきり認識したことはありませんでした。実際には写真より有効な手法として用いられているということ。
ドラマ本来の楽しみとは別に、劇中で駆使される似顔絵、その制作過程などを垣間見ることができるユニークな視点のドラマでした。
バディーもの
主役は檀健次 演じる沈翊と金世佳 演じる杜城の二人。警察官。
7年前、杜城の敬愛する上官が殉職してしまうのだが、その一件に絡んでいる沈翊のことを最初は認めることができない杜城。だが沈翊の警官になった動機を知り、捜査に賭ける意気込みに触れるうち次第に心を開いていき、バディーとして共に事件解決に向けて奮闘することになる。
檀健次は好きなのでワックワクで観始める。作品の評判もよかったし。
だが最初に告白しておくと、ドラマとしてそれ程とは思わなかった。期待が大き過ぎたせいか?最近練りに練った秀逸なサスペンスを立て続けに観たせいか?
エピソード毎に緻密に組み立てられたプロットはとてもよかったのだが、何しろ謎解き部分があっけなくて、肩透かし感の連続。凝った設定に対して演出があっさりし過ぎているのかもしれない。
3話程度で完結する構成はいいが、問題はその中の時間配分。もう少し謎部分のディテールをシンプルにするか、あるいは話数を増やしてじっくり作り込んだ方がよかった気がする。もったいないと何度も思った。
それと連ドラの場合、事件解決はその話の最後あたりに持ってきて一件落着、そのあと少しブレイクというか和み描写を設けて、次の話へという流れが多いと思う。が、本作は話の始めや途中に事件解決らしき台詞がきて、この後は次のエピソードですよという明確な合図がないまま地続きで和み描写になり、まだ続いてるのよね?と思いきや唐突に次の事件が持ち上がって、毎回戸惑った。クロージングが曖昧なのだ。
あれ?この前の事件てあれで解決なの?ちゃんと終わってたっけ?
あー、続きがないからあれで解決ってことなのね、それでもう次の案件に突入したのね
とまぁこのように、毎回毎回感じてしまった。わたしだけかもしれないがw
似顔絵捜査官が半端ない
思うにこのドラマ、沈翊という天才的才能の似顔絵捜査官が大活躍するという大前提でエピソードが組まれていて、その描写にスポットライトが強く当たり過ぎているのかもしれない。
杜城の沈翊に対するわだかまり。それが氷解して一転、強い絆のバディーとして事件解決。普通ならこちらがメインのプロットだろう。しかしこのラインを骨太に描くには、沈翊が "あの女性" の似顔絵を「描けない理由」と「犯罪そのもの」との関わりが弱かった気がする。
沈翊(というか檀健次)が長髪乱れ気味なハーフアップで「どうしても描けないんだ!!」と苦悩している画は大変によかったのだが(笑)
謎解きサスペンスとしての出来如何はさて置き、沈翊の似顔絵師としての技は凄まじく素晴らしかった。なにせ
骨格(骸骨)から似顔絵が描ける
うつむいてフード被ってマスクしていても顔全部を描ける
何なら現在の顔を元に過去や未来の顔も描けるし
なんと描いた顔からその人の肉親のDNAを抽出した顔だって描けちゃう。
いやもうほんとに素晴らしい!
この驚嘆すべき技術で、難事件を次々と解決していく。
そのため界隈では有名人。褒められると、いやいやチームの力ですよと謙遜することも忘れない。
本当にこんな人がいるのかどうかは、甚だ疑問だw
しかもこの 沈翊は、実は若くして名をあげた画家。今は警察学校出身の刑事のかたわら学校で美術を教えている。そして超イケメン。パーフェクトなのだ。
檀健次は、心に闇を抱えた人物の造形が上手いのが持ち味だと思う。沈翊は優しくて、大人で、わきまえていて、好青年。その点では少し物足りない気がしたのも事実。でもカッコよかったけどね!
加害者、被害者、そして一件落着
面白かったのは面白かったのだけど、演出がもったいなかったなと思うのと、もう一つは事件の内容。女性が女性であるがために被害にあう案件が多くて見ていて辛くなったこともしばしば。そして被害者であるが故に加害者になってしまうケースも。ドラマではあっても演出として、傷ついた彼女たちへのアフターケアがもう少し欲しかった。
その点、18話あたりからの最終エピソードは色々な面で充実していた。
いよいよ杜城の上司殺害事件の本丸に迫るのだが、杜城の姉の仕事仲間であるIT企業の創業社長、陈舟が登場する。演じるのは朱刚日尧。
この俳優さんは、推し王一博主演のドラマ『人间至味是清欢』(ラブ・アクチュアリー)でもそっくりな役処を演じていて、陈舟が登場するパーティー会場シーンから早速「こやつが怪しい!」と思ったものだw
杜城にも疑いがかかり取り調べを受けたり。でも優秀で誠実な警察官である彼が犯人であるわけもなく、同僚の信頼も揺るがず。で、最初から張られていた伏線が見事に繋がり、一件落着となる。
脇を固める演者たちも個性的でよかった。検視官に『成化十四年』の张柏嘉や、同僚のIT担当官に『軍師連盟』の陆妍淇と女性二人もキャラが立っていた。
最後は思わせぶりな謎めいた描写で終わるが、単にめでたしめでたし的演出にしたくなかっただけなのか、それとも…?
重ねて申し上げるが決して面白くなかった訳ではないので、そこは誤解なきよう。めちゃくちゃ賞賛するほどではなかったというだけのこと。
あまり感想を書けないので、檀健次の画像をいっぱい貼っとく!(笑)
すごく面白かったといってる人を沢山見かけたのに、すみません。
せっかくの凝ったプロットなのにあと一息、単にもったいなかったなーという、シンプルな感想です。
でも檀健次を堪能できてよかった!
余談ですが、わたし的 檀健次のベストキャラは『三国機密』の曹丕と『軍師連盟』の司馬昭。両作とも偉大な父親への葛藤に苦悩する姿と美しい顔面が、忘れがたい存在感でした。
彼は身長174cmと中国芸能界にあってはかなり低い方ですが、それをも魅力に変える輝きを持っているなーと。踊れるし。本当に綺麗なお顔立ちだと思います!
拙文お読み頂きありがとうございました。