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【書評】センスのいらない経営

前回のあらすじ

ディレクターでありフォトグラファーでありデザイナーである、元気一杯な上田(@omochabaco_)は前回の本(仕事2.0)に影響され、貪るように本を眺め、睨み、舐め回すように舐めるのであった。(本を読むのに時間がかかるだけ)

では、以下ほんぺん。

センスのいらない経営(福島良典 著)について

僕がなぜこの本を読むのか。それは自分もエンジニア出身だからです。
テクノロジーが進化し、世の中の流れが早くなっているのはもう衆知の事実ですが、ではどうすればその流れについて行くことが出来るのか。そこを議論する場というのはなかなかありません。

驚きべき事に著者の福島は今年の7月にグノシーのCEOを退任しています。
はっきり言って僕はここに答えがあると思うのです。

本書は株式会社gunosy創設者である福島良典自身が、その経験を元にどのようにグノシーを創業2年半で上場をさせたのかが語られています。非常に説得力のある内容なので是非皆さんにも読んでもらいたいです。ではその全貌の一部を皆さんと一緒に紐解いていきましょう。

①人生の機軸にテクノロジーを据える
かつて物流の仕組みを大きく変化させたものに蒸気機関が有ります。そして蒸気機関が生まれた事によって淘汰された物がありました。それは馬や牛などの運搬に用いられていた動物たちです。馬や牛はテクノロジーの進化により、別の働き方をせざるおえなくなってしまったのです。

では、今生きている私達がテクノロジーの進化によって働きかたを変える必要がでてきたのは何故でしょう。それは蒸気機関と同じ様に情報テクノロジーが驚くべき速度で進化したからと言わざる終えません。

この様に、テクノロジーベースで考えなくてはいけない状況が必然的にやって来たのです。何を機軸に生きるのか。その選択肢のひとつにテクノロジーという巨大な物が生まれたのです。

GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字をとったもの)をはじめとした様々なテクノロジーベースの企業はデータを活用し、その存在を大きくしました。彼らはデータこそが燃料になる事がわかっていたのでしょう。

②機械学習というテクノロジー

グノシーは機械学習によって、より個々のユーザーに合ったニュースを自動的に配信するようになっています。ニュース配信、プッシュ通知、そして広告配信などを主に自動化しています。なんでも自動化できそうに聞こえる機械学習ですが、一体それはなんなのでしょうか。

機械学習にも人間と同じで、得意な事と不得意な事があります。本書では、はじめに機械学習の得意なことは「分けること」と「線をひくこと」であるとしています。それはつまり集めたデータを元に分類分けをするということです。

現状、機械学習は第三世代だそうです。何ができるのかというと、今まで人間が特徴を決めていたものを、機械に決めさせる事ができます。より人間の脳に近づいたと言えますね。こうなってくると機械は膨大なデータからデータをグループに分け、抽象化し、機械自ら答えを出す事ができるようになります。つまり人間が出す答えの外から新たな答えを導く事ができるのです。
これが最近よく耳にする「ディープラーニング」や「ディープニュートラルネット」といわれるものになります。囲碁ソフト「AlphaGo」もこの第三世代の機械学習が用いられています。

③グノシーと機械学習

グノシーは情報の「キュレーションサービス」です。様々な情報から機械学習を用いて一人ひとりにセグメントするにはどうすればいいのでしょうか。キーワードは数値化です。ログが取れることによって人々の行動はある程度数値で把握できるようになりました。そこでまず機械学習が行うことは傾向を導き出すことになります。そこからクリック率の最大化を計ります。ただし最大化を計るだけでは不十分です。詳しくは本書を読んでいただきたいです。

ここで機械学習が不得意なことを一つ挙げます。それは速報です。何故なら速報には前例がないからです。人には感覚というものがあります。ここが機械が苦手な部分になります。世間知らずの勉強が大好きな子供だと思ったら、ちょっと機械が可愛くなって来なせんか?少し人と機械の違いが見えて来たかもしれません。彼らには感情も意思もありません。人はそんな彼らに“適切な”目的を与えなくてはいけません。

④グノシーが想い描く未来

本書ではグノシーが想い描く未来について語られています。グノシーが想い描く未来、それは「機械学習をメディア以外の領域へ」「機械学習以外のテクノロジー領域へ」この二つを広げることです。そのために必要なものこそ「進化と普及のスピードが早くて、大量のデータが集まるポジション」なのです。グノシーはこれからもソフトウェアの会社であり続けるだろうと著者は言っています。そして足りない部分は様々な会社と協力し、ポジションを取っていくスタイルで続けるそうです。自分たちのフィールドで戦うこと。そのための選択と集中に手を抜いてはいけません。

この記事の冒頭で著者の福島さんは2018年7月にグノシーのCEOを離れたと書きました。そして福島さんは新たに設立したブロックチェーンが機軸の株式会社LayerXの代表取締役になっています。著者は退いた理由をこう語っています。

グノシーはテクノロジーの力を十分に理解し
経営に生かす事ができる組織であるという自信と
会社としての成長がある段階に入ったという確信を持てたから

テクノロジーファーストで生きていくためにはブロックチェーンという大波に乗り遅れてはいけないという意思の表れと、挑戦する野心が伺えます。

⑤「判断」と「意思決定」は異なる

人が選択を迫られる時のパターン
・判断材料が比較的に出揃っていて決めるだけでいい事
・判断材料が揃っていなくても決めなければいけない事

前者を判断、後者を意思決定と言い換えたとします。判断は材料が出揃っているのだから誰が見ても判断できます。その決定のためだけにハンコがいるようなら、それはとても非効率だと筆者は指摘しています。

変化の早い世の中ではスピードが何よりも重要です。アマゾンでは「70%の情報が出揃ったら意思決定をする」というルールがあるそうです。これについてはソフトバンクも同様で、最高品質の会議術(前田鎌利 著)でも書かれています(この本についてはまた改めて感想を載せます)。

どれだけ判断材料を並べても未知の部分が多いため判断できないものを意思決定と、ここでは定義しました。それについてはリスクを被っても飛び込む時が必ず来ます。それを決定するのが経営者です。

ただしリスクは分散する事でコントロールできることを投資の世界が証明しています。同じように事業でもリスクコントロールができるはずだと僕は考えます。だから挑戦することを忘れないようにしましょう。

⑥「ゴール」に向かって走りながら考える

正しい意思決定をする。その道しるべとなるのは、適切なゴール

グノシーに取ってのゴールは「テクノロジーが世の中を変えていく過程にコミットすること」だと著者は言っています。長期的なゴールを「今日、何をすべきか」までブレークダウンしていかなければ着実にゴールに近く事はできません。目標がブレてもゴールはブラさずに、最短距離でゴールに近づく事が正解なのです。

⑦「エンジニア」が求められる時代

エンジニアとは自ら課題を見つけ、自分のスキルを使い問題解決できる人
スペシャリストとは日々スキルを磨き、外から与えられた課題を解く人

今、必要とされているのは紛れもなくエンジニアです(スペシャリストが必要ないと言っているわけではありません)。好きなことをやらせて、成長し、適切に評価される。そして、事業も成長し、社会も成長する。さらには、新しいモノやサービスが生まれる。そうすることで社会の代謝も良くなると僕は思います。

著者が問題視しているのは、時代の流れが早いにも関わらず、課題を見つける人とテクノロジーを理解している人が分かれて構成されている事が致命的な遅さを生み出している点です。

これから何をするにもテクノロジーが関わって来ます。だからこそ一人ひとりがテクノロジーとデータのことを理解し、エンジニアとして生きていく必要があるのです。

本書のいう「センスのいらない経営」とはデータとテクノロジーを駆使し、数値に基づいた経営をすることでした。皆さんの身近な仕事や事業はどうですか?目先の利益に囚われて何もできなくなっているのではないですか?変えていきたいですよね。なんてったって変化のスピードは早いのだから。

#読書   #書評   #社会   #テクノロジー   #グノシー

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