「noteで歳時記」 ~天気図と季語 編~
【はじめに】
この記事では、「noteで歳時記」〔通年〕分冊から『天気と季語』をテーマに、『天気図と季語』と題し、過去の天気図と季語について見ていきます。
この記事は、(オフィシャルな記念日ではないですが)2月16日が日本で「天気図記念日」などとされていることに由来して寄稿したものです。
1.春の季語
(1)春の雪
立春(2月上旬)を過ぎた雪を指しますが、地域によっては降雪が当たり前の時期。どちらかというと、雪が珍しい温度になってきた頃に降ったという特別感を含んでいる印象もある季語。
昔ながらの俳句歳時記には『季節外れの』などと書かれていることもありますが、例えば関東地方ならば、1月までの冬の時期よりも、南岸低気圧が掠める2月以降の方が大雪になりやすい事実も浸透してきています。
2020/03/29:春分後に降雪 積雪1cm
日付変わった時には7℃台あった東京地方も、断続的な降水によってみるみる気温が下がり、10時前には0℃台に。昼に降雪・積雪1cmを観測します。
2022/02/10:大雪警報には至らずも 積雪2cm
3連休を挟んで2度、関東地方で警報級の大雪になる可能性があると事前準備が呼びかけられた2022年2月。東京では積雪2cmに留まったものの、茨城・千葉県などで積雪量増加。気温は低くも日中は雨。夕方に積雪性の雪。
(2)春一番
俳句歳時記では「仲春」に分類されることが多いものの、年によっては観測されなかったり、2月中に観測されることも多い。現代の肌感覚としては、初春と仲春でほぼ半々に意見が分かれそうな季語。
2020/02/22:正午 南の風 風速10.5m/s
午前0時台で10℃近くある暖かな一日。雨がやんだ7時過ぎには南寄りの風に変わると気温が急上昇。昼前には基準を超え、最大瞬間風速では15m/sを超えて「春一番」の一日に。前線通過の夕方には通り雨。
2021/02/04:13:20 南南西 風速8.2m/s
快晴の一日。37年ぶりに立春が3日となった2021年は、立春の翌日に、東京では観測史上最速で春一番を観測。12℃となった午後に基準8mを超える。
2.夏の季語
(1)梅雨入り/入梅
古くからの暦でいえば、太陽が黄経80度を通過する立春の127日目あたりを指す「入梅」と同義で、太陽暦でいう6月11日頃のこと。
現代においては、気象庁が地域ごとに「梅雨入り/明け」を発表。関東地方では6月前半から7月後半までの1か月半程度となることが多い印象です。
2019/06/07
令和最初の関東梅雨入りは朝鮮半島から東進した低気圧から伸びる前線が、午後から雨をもたらしてのもの。夕方には20℃を下回り、梅雨寒の一日に。なおこの3日には日雨量92.5mmという大雨となりました。
2020/06/11
正午には真夏日付近だったところから、午後3時には5℃近く下がり雨に。日本列島ほぼ全域が雨で、全国的に梅雨入りとなった。
2021/06/14
主たる梅雨前線ははるか南の海上にあるものの、本州付近を気圧の谷が通過し、大気の状態が非常に不安定で、朝方から雨の一日に。
(2)出水/梅雨出水/水害
俳句歳時記には「出水」などとして地理に収録されている事象は、今でいうところの「(梅雨末期の)水害」です。
梅雨の後半(主に7月前半)に大きな水害/土砂災害が発生してきました。
※なお、俳句歳時記に則れば、立秋以後の事象は「秋出水」となります。
平成29年7月九州北部豪雨https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/ed/JMA_Weather_chart-July_4th_to_7th_2017.gif
福岡・大分県を中心に豪雨となり、福岡県朝倉市付近では24時間解析雨量が1,000mmに。犠牲者42名を出した豪雨災害は、上の「gif」をご参照いただければお分かりのとおり、日本列島のやや南に梅雨前線が停滞して起こった。
平成30年7月豪雨(西日本豪雨)
前年の7月豪雨からちょうど1年後にあたる平成30年7月豪雨は、一般には「西日本豪雨」として報じられる“平成最悪の水害”被害に。
中部地方から四国・九州地方まで1,000mm級の大雨を観測。そして人的被害が最も大きかったのは、単純な雨量比較では及ばないものの、大雨への耐性が低く、土質なども影響して土砂災害や河川氾濫が相次ぎ、250名以上の犠牲者を出した「広島県から岡山県」にかけての地域でした。
令和2年7月豪雨
特に熊本県で大きな被害を出した令和2年7月豪雨は、上旬に西日本に大きな被害をもたらした後、下旬には東北地方で犠牲者を出すなど、断続的な雨が7月一杯続きました。
当初は『特別警報級の大雨にまではならない』という見立てだったことも影響し、気象庁の事前の呼びかけが定着した2010年代以降としては、結果的に事前の情報発表が控えめだったことも忘れてはなりません。
3.秋の季語
(1)残暑/秋暑し
暦の上では「秋」としてお馴染みの立秋は8月上旬。しかし、40℃近い酷暑を記録することも珍しくなくなり、俳句歳時記に書かれている様な風情とは掛け離れた『危険な暑さ』の期間が仲秋まで続くこととなっています。
2019/08/15:新潟県胎内市(最高)40.7℃、糸魚川市(最低)31.3℃
台風10号からのフェーン現象などにより、お盆の時期に酷暑に。日中に40℃を超えたことに加え、夜間の最低気温が31.3℃となり、29年ぶりに国内記録を更新することとなりました(最低気温30℃超えは想像を絶します。)
2020/08/17:静岡県浜松市41.1℃
前日にも浜松市天竜で40.9℃を記録した中で、翌日には政令指定都市である浜松市の市街地で41.1℃という平成最高気温タイを観測。
北関東から南九州に至るまで猛暑の8月となり、上の天気図にもある様に、前線が北に押し上げられ、暖かい空気が関東以内の日本列島を覆いました。
(2)台風/野分
古語でいえば「野分(のわき/のわけ)」となりますが、歳時記によっては区別して「台風」で別の項を立てているものもあります。
昭和以降、円形で中心に目を持ったりする「台風」の実像が明らかになったことをある種の境目としていると見られます。
台風自体は元日に発生したこともありますが、主に日本に大きな被害をもたらすのは7~10月頃。俳句歳時記的にいえば夏と秋に跨りますが、季語としては基本的に「秋」の季語とされています。
ちなみに、気象庁が正式に命名した台風は、いずれも秋に発生しています。
令和元年房総半島台風(2019年9月・台風第15号)
その名のとおり、房総半島付近を直撃し、首都圏に大きな被害を残したのが「令和元年房総半島台風」です。
千葉市内で最大瞬間風速57.5m/sを記録するなど小型で強い台風だった他、千葉県市原市のゴルフ練習場で鉄柱が倒壊し、住宅を破壊する事故が大きく報道されました。
令和元年東日本台風(2019年10月・台風第19号)
「房総半島台風」と共に、約半世紀ぶりに気象庁が公式に命名した「東日本台風」は、実質的に前年の「西日本豪雨」と対になる様な広域災害でした。
「房総半島台風」と対照的に、規模が非常に大きい事や猛烈な勢力を長時間維持したことなどで、平成以降では初めて犠牲者が100名を超えるなど人的被害が甚大となりました。
結果的に本州に接近する過程で中心気圧は衰え、暴風による被害は当初想定されたほどではなかったものの、台風の規模が大きく接近前から日本列島で大雨が続いたことから、河川の氾濫や決壊による水害が広域にわたって発生しました。
4.冬の季語
(1)凩/木枯
俳句歳時記では初冬の季語とされ、現在は春一番などと同じく気象庁が発表するものとして印象が強い天文(事象)。但し、「木枯らし一号」を発表しているのは関東(東京)・近畿(大阪)のみで、条件も少しずつ違います。
また、対象期間は10月中旬から後半に始まるため、俳句歳時記的にも、実感としても「秋の終わり(冬近し)」な感覚があるのも抑えておきたいです。
(2020/10/23)近畿地方で木枯らし一号
(2020/11/04)関東地方では3年ぶりの木枯らし一号
対象期間が近畿に比べて1か月弱短い関東地方では、11月までに「木枯らし一号」と認定される風の日がなければ「発生せず」となります。
2018・2019年と観測史上初めて2年連続「木枯らし一号」が吹かなかった所から、2020年11月4日、実に3年ぶりに公式に認定され、発表されました。
(2021/10/23)近畿地方では2年連続で10月23日に
近畿地方では、二十四節気「霜降」の日以降でなければ「木枯らし一号」に認定されないのですが、2020・2021年と2年連続で、史上最速記録タイとなる「霜降」当日に『木枯らし一号』を観測しています。
(2)雪
「雪」を美しく表現したり、冷たい風と共に表現する季語は多く傍題などに収録されているのですが、『大雪』や『豪雪』みたいなものを季語として掲載している俳句歳時記は余り無いのかも知れません。
地域によって基準は全く異なりますが、『豪雪』と言われると、普段の雪とは異なる恐怖心を本能的に覚えます。
最近では、和暦の下2桁を取った「三八豪雪(1963年=昭和38年)」の様な表現もめっきり聞かれなくなりましたが、全国的に見れば、日本列島のどこかで「大雪」が起きています。
2021/01/07
「顕著な大雪に関する気象情報」が初めて適用された2021年1月は、新潟県や北陸地方ですら交通が麻痺するなどの豪雪となりました。
2022/01/14
前日までにも豪雪や暴風が吹き荒れ、北海道地方では道路・鉄道網が寸断。