『記憶する体』
伊藤亜紗(著)
もう2020年も2月が終わろうとしてるって知っていますか。私は最近、何もなく時間が過ぎていくという感覚より、楽しすぎてあっという間に近い感覚で時間が進んでいる気がします。良いことですね。
さて、今回の読書感想文は続けて2冊紹介するのですが、テーマとしては「個々の持つ力、経験、癖と、その付き合い方について」です。
仕事やスポーツなどに関わらず、伝える・教える仕事をしている方には読んでいただくことをおすすめしたいです。
体のローカル・ルール
まず著者の伊藤亜紗さんは、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授、美学を専門としてアート、哲学、身体に関連する横断的な研究をおこなっていらっしゃる方です。
この本は、様々な障害を持つ方へのインタビューを通して、体の固有性について考える本です。
全盲、義足、吃音、アルツハイマーの方などなど11名のインタビューがまとめられています。内容としては、もともと障害のあった方や、途中で障害を持った方の体の使い方やそれの感じ方動かし方などです。
私はバレエを昔習っており、高校生のときに2、3年ほど先生をしていたことがあるのですが、体(筋肉、関節、表情等)の感じ方や動かし方を自分がやっていることをそのまま伝えたとしても、相手が同じようにできるわけではなく、それは筋肉の発達であったり、生活の癖であったりから、可動域の範囲と動きの癖など、個人個人異なることがとても気になっていました。
(私はその個人差が美しいと感じますが、人によっては同質化された美を望むことは大いにあるものです)
マニュアルとオートマ
この本の中にもダンサーが登場します。
NHKの紅白歌合戦で平井堅さんの曲中の踊りで知り、私も大変印象深かった方です。
本に書かれている内容は、一方の足をなくしてからダンサーになるまでに、足をどうコントロールするかの過程がわかりやすく記載されていました。
話は全然違うかもしれないのですが、私もダンスの復帰計画に向けてピラティスというリハビリを行っておりますが、10年ほどブランクがあって無意識に動かすようになっていた筋肉に意識を戻し、まさにオートマからマニュアルに自分の体をシフトするという感覚です。ただし、頭だけが10年前の意識に戻り動かそうとすると、そこまで筋肉量が足りなかったり柔軟性が足りなかったりし、以前通りに動かせないことが多く、その無力感を含めた現在の体については最近になってやっと受け入れられるようになったかなと感じています。
無意識をつくる環境と経験
この本を読んで思ったのは、環境や経験は、自分の無意識のうちに体に大きく影響を与えているということ。
最近読んでいる本で、知識と運動については多く学んでまいりましたが、自分の中には「こうしたら楽」(その意識すらない)という知らず知らずのオートマ機能で動いている可能性があります。
それはやはり運動を繰り返す環境とその経験の積み重ねなのだなと。
仕事柄、大学生との接点が多いのですが、やはりバレエの先生をしていた当時同様、自分とはローカル・ルールが違うのだと強く感じることはもちろん、自分が良しとすることを伝える場合の大前提について考えさせられるのでした。
さいごに
実は今週楽しみにしているダンスのワークショップがあるのですが、まさに体と心のつながりを感じるもののようです。自分のローカルルールに耳を傾け、知覚と運動の感覚を解放させる(?)ようなので、Twitterにでも感想はつぶやこうかなと思います。