『背中を見て学べ』から 『部下の話を聴く・引き出す』へ 老舗企業のマネジメント変革の軌跡|聴き合う組織をつくる『YeLL』のnote
創立1918年の安全自動車株式会社。機器メーカーとして、整備機器の企画開発・製造・販売およびサービスを提供しています。そんな安全自動車株式会社にエールの社外1on1サービスをご利用いただいたのは、2020年の春のこと。以降、継続的に活用してくださっています。
今回お話をうかがったのは、安全自動車株式会社にて副社長を務める中谷さん、営業部長の奥村さん、総務部長の金子さんの3名。サービス開始時に抱えていた組織課題や実際にYeLLを利用してみて感じたこと、組織の変化について詳しくお聴きしました。【編集部 奥澤】
5年前から「1on1」に取り組むも、上手く運用されずにいた
——まず最初に、エールの社外1on1サービス導入の背景についてお聞かせください。
中谷さん:私たちがエールのサービスを利用させていただくようになったのは2020年の春からになるのですが、「1on1」という意味でいうと、社内ではその5年ぐらい前、2015年頃から取り組みをスタートしていました。
当時、私は役員になって10年程経った頃で、「組織開発」について本やセミナーなどあらゆる手法から理解を深め、実践しているところでした。社員一人ひとりの主体性を引き出し、“学習する組織”をつくっていきたいと考えていたんです。
——「組織開発」の一つとして、すでに1on1を取り入れていたわけですね。
中谷さん:そうです。それともう一つ、全社員を対象に実施している「キャリアヒアリング」の結果も1on1を取り入れたきっかけですね。
「キャリアヒアリング」は、私自身が現場を離れる期間が長くなるほど、現場で起きていること、課題が見えづらくなってきていたことがあり、「これはまずいぞ、社員一人ひとりのリアルな声を知りたい」と思い、実施しました。
各社員から「キャリアに対する考え」「現場で感じている課題」をきく中で見えてきたのは、みな会社のことが好きで、会社の未来を考えていることでした。私が想像していた以上に熱い情熱を持っていて、とても感動したんですよね。同時に、上司・部下の間でも、こういった“熱のこもったやり取り”を日常的にしてほしいと考え、その機会として「1on1」を実施することにしたのです。
——「1on1」を取り入れてみていかがでしたか?
中谷さん:正直なことをいうと、うまく運用されていなかった…。人事から定期的に「1on1をやりましょう」とメッセージを出してもらうものの、現場からは「やる意味あるんですか?」という声が上がってくることもありました。
その中で、しっかり取り組んでいきたいと思ったときに出会ったのが、エールの社外1on1サービスです。さまざまな「組織開発プログラム」を実施する中で、“自分の想いを語る力・伝える力”は伸びていると感じる一方、“相手の意見を聴く力・受けとめる力”についてはまだまだと思うことがあり、改めて「1on1」の大切さを感じていました。このタイミングで本気でやろうと決意し、プロの力を借りることにしたのです。
聴かれたことがない世代に、良質な聴かれる体験を
▲2020年春、まずは中谷さん自身がエールの1on1を体験。「自分が本当に良いと思うサービスを社員に提供したいと思った」と語る。
——社員の方には、エールを通じてどのようなことを体験してほしいと考えていましたか?
中谷さん:シンプルにいうと、“聴かれる体験”です。
先ほど、「相手の意見を聴く力についてはまだまだ…」という話をしましたが、よくよく考えてみると仕方ないとも思うところもあったんですよね。というのも、ミドルマネージャーとして活躍している世代になると、厳しく教育していくことが当たり前の中で経験を積んできた。先輩がじっくり話を聴いてくれる環境ではなかったんです。
金子さん:“厳しく教育していくことが当たり前”という意味だと、私は新卒で入社して30年以上になるので同じ感覚です。手取り足取り教えるのではなく、背中を見て覚えるという社風が強かった。だから、急に「1on1をして、部下の話を聴きましょう」と言われても、どうすればいいのか分からないというのが本音のところで…。たぶん、同じように感じていた社員も多かったのだと思います。
——なるほど。金子さんや奥村さんは、エールの社外1on1サービスの話を聞いたとき、どのような感想を?
金子さん:最初に話をもらったときは、「不安」のほうが大きかったですね。週1回30分話すってどういうことだろう?と。会社から期待されていることは何なのだろう…といろいろ考えてしまいました。
奥村さん:私は、思いきり本音を話してしまうと…「面倒だな」というのが感想でした。たった30分かもしれないけれど、忙しい日々においてはネガティブな感情のほうが強かった。社外の人と1on1をして、何がよくなるの?というのが率直な気持でしたね。
▲営業部長の奥村さん。2021年1月からエールの1on1セッションを受けたが、最初はネガティブな印象が強かったという。
——お二人ともポジティブな始まりではなかったと…。実際にやってみていかがでしたか?
金子さん:実際やってみて心配は不要でしたね。そこは、さすが聴くプロだな、って。質問の仕方や相槌の打ち方、会話での間の取り方…初めて話す人でありながら、心地よい時間だったことを覚えています。
その後、4回・5回と回数を重ねる中で気づいたのは、“自身の思考が整理される時間”になっていたこと。なんとなく引っかかっていたこと、気になっていたことを言葉にしていくことで、「自分はここが嫌だったのか」「こうしたらもっと上手くいくのではないか」と、感情を整理できるようになっていきました。
奥村さん:私は自分の中にあった不平不満を聴いてもらったようなところから始まりましたが、数回体験してみると、週1回30分の時間で“発見”や“気づき”があることが分かりました。面倒だなという気持から、今週はこの話をしようという時間に変わっていきましたね。
——社内ではなく、社外の人と1on1をすることについてはどう感じていましたか?
金子さん:社外だから言えること、話せることがたくさんあったように思います。日々、仕事をする中で「これってどうなんだろう?」「何かひっかかるな」と思うこともあると思うんですが、わざわざ足を止めて考える時間って意外と取れていない。会社の指示として頭を切り替えていくこともある中で、エールの社外1on1サービスを通じて、自分の気持をフラットに話ができて、自分の行動や言動がどういうところから来ているのかと気づける機会はとても貴重だったと思いますね。
▲総務部長の金子さん。「社外の人だから、素直に話せることがたくさんあった。前向きになれる貴重な時間」と語る。
——そこで話を聴いてもらうことで、どのような気持ちの変化が?
金子さん:1on1を担当してくださるサポーターの方から、共感してもらったり、頑張ってますねと声をかけてもらったり…些細な一言だったとしても、次に自分が頑張るエネルギーになるというか。じゃあ、今度はこうやってみよう、チャレンジしてみようと前向きな気持ちに変わることが多かったです。
奥村さん:私も「社外の人だから良かった」と思ってますね。まだ自分の中でまとまっていないことだったり、少しネガティブな意見だったりしても、否定されることがない。だから、感情のままに素直になることができるんですよね。“まずは受けて止めてもらえる”という安心感が、心地よく、自身のモチベーションにつながる時間だったように感じています。
メンバーの“意志”に触れ、組織づくりを見直すきっかけに
▲メンバーのコミュニケーション量が増えることで、部門長が組織づくりに積極的になってきたと感じる。
——仕事にはどのような影響がありましたか?
奥村さん:メンバーとのやり取りが大きく変わりました。これまでも1on1をする中で、メンバーの考えや意見に触れることがありましたが、そのときとは随分違っています。
これまで私の中で「なぜ指示をしているのにやってくれないのか」「自分の話を理解してくれない」と自分中心の受け取り方をしていたところがありましたが、だんたんと視点が変わってきた。メンバーに対してあれこれを思う前に、そもそも彼らから見た自分はどうなんだろう?と思うようになったんです。主語が変わった、というのでしょうか。
この辺りから、1on1に限らず、メンバーとの“仕事におけるコミュニケーション”が各段に増えていったように思います。もともと私が所属している部署というのは人間関係もよくて、仕事以外の話はよくするんです。だけど、仕事柄一人で完結させてしまうことも多くて、上司への報告・連絡・相談を積極的にする文化がなかった。それが、メンバーからポロッと相談をもらったり、案件の進め方で意見を求められたり…そんな場面が増えていきましたね。
金子さん:私もメンバーとの会話量は圧倒的に増えましたね。エールの社外1on1サービスで体験したことを、メンバーと1on1でも実践するようにしたんです。すると、メンバーが「前職で頑張ってきたこと」「やりがいを感じている仕事」「安全自動車で取り組んでいきたいこと」などを語ってくれるんですよね。
これまでデータだけ把握・理解していたメンバーの情報に、何がやりたいのか、何に情熱を持っているのかなど、“本人の意志”を感じることができました。ポテンシャルに触れるというか。だったら、この仕事を任せてみよう、あの役割が適任なのでは?と「組織づくり」を見直すきっかけになっていったんです。
奥村さん:あとは、メンバーとの対話が増えていった理由の一つに、部署内に自分と同じようにエールの社外1on1サービスを受けていたメンバーがいたことも大きいように感じています。“聴きあうことの重要性”を私だけが感じていても難しかったと思うんですよね。今回でいうと、私の直属の部下であるマネージャーも同時に受けていて「共通認識」を持てていたこともポイントだったように思います。
——これは、中谷さんが目指されていた「組織開発」の一つでもあるのでしょうか。
中谷さん:そうですね。だから、そういう声が聴けるととても嬉しいです。実際に、社内のアンケートでも好意的な意見が多かった。継続を希望する社員も多かったり、社内で会うリーダーや部門長に「エールの1on1どう?」ときくと良い反応が返ってきたり、上手くいっているのだと感じていましたね。
——「聴く力」を身に付けたことによって、メンバーとの関係性が変化。「組織」も少しずつ変わっていったわけですね。
中谷さん:そうだと思います。今後は、「1on1」という場にこだわらず、上司と部下が自然と話ができたり、相談できる組織にしていけたらと思いますね。
そして、私たちがエールの社外1on1サービスで体験したことは、何も上司・部下の関係だけではありません。家族や友人など、あらゆる人との関係性を築く上での話でもあると思っています。「聴く力」「対話力」が磨かれていくことで、社内のイノベーションにつなげていくことができるでしょうし、そういった人材は自社のお客様から見ても非常に魅力的な人間だと思います。
理想は、お客様から「〇〇さんと話をしているとアイデアが沸いてくる」「この会議に〇〇さんを呼ぼうよ」と思ってもらえるような人材でしょうか。今後も、エールの社外1on1サービスを活用しながら、安全自動車にとってのベストな組織を探究していきたいですね。
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