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読書メモ #1『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子
人にオススメしてもらって、4日かけて読んだ。
パッとしない女性が主人公で、またもパッとしない男性に一目惚れする、簡単に言えばそういう話だった。
文章はかなり淡々としていて、なるほど芥川賞作家か、と思った。僕はそういう作品が好きなんだなと読んだ後に気がついた。
僕は一目惚れはしたことないけれど、これ!といったきっかけなしに人を好きになるという気持ちは分かる。
主人公の入江冬子は、友人との会話シーンを見ていても基本的に相槌しかしない。
そうだね。そうなんだ。
僕はこのタイプとは真逆で、どちらかというとおしゃべりな聖(冬子の友達)寄りなので、正直なところ冬子には少しイライラした。
でも、そういう人が頭でどんなことを考えていて、どんな風に恋に落ちるのかを見ることができて、それはとても美しかった。
冬子が好きになる三束さんは、一応パッとしない設定なのだろうけど、僕には魅力的に映った。
もっとも、彼サイドの描写がなく、冬子から見た彼のことしか僕も知らないからかもしれないが。
最初は 入江さん と呼んでいたところを、下の名前で呼びましょうか、と提案したところが個人的にピークだった。
50代の男性が、そんな、付き合いたての中学生みたいな、純愛という言い方は浅はかな気もするが、さすがにきゅんとした。
恋愛小説とはいえど、冬子と聖の関係性もかなり興味深いものだった。
外見や性格、恋愛観もほぼ真逆と言えるちぐはぐな2人だ。
ちぐはぐだからこそ噛み合うのか。
少なくとも、聖タイプは、同じような人と合わさると終わる。と思う。
強いて言えば、校閲という仕事が2人の共通点だ。考えてみれば仕事への姿勢は似ていたかもしれない。
三束さんとの誕生日祝いの夜、冬子の家での聖との口論は、読んでいて苦しくなった。
冬子が初めて聖に言い返した場面だと思う。
言い返すことが出来たのは、言い返すだけの熱量というか、内容がちゃんとあり、そしてそれがあるのはやはり三束さんのおかげなのだろう。
読み終えた時はショックが大きかったが、そういえば恋愛ってこういうことの方が多いよなとも思った。
どんなに運命だと思っても終わる時はあっけなく終わるし、その時の傷は友人や、時間や、美味しい料理が癒す。
そもそも、運命だなんて、自分がそう思いたいだけな気もするし。
人にすすめてもらって手に取ったのだが、読んでよかったと思える作品だった。