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小皿事件

 今日は、先日我が家に起きた悲劇的な事件について語ろうと思う。

 私はお茶が大好きだ。その日、紅茶を飲もうとカップにティーバッグとお湯を注いだ私は、キッチンで少し迷った。

 紅茶は放置するとかなり味が変わるので、数分経ったらティーバッグを取り出して置いておくために、ソーサーが無ければ、別の小皿などが必要になる。

 しかし、しかしである。小皿を使うということは、とりもなおさず洗い物が一つ増えるということになるではないか。洗い物は量が多くなるとものすごく億劫な家事である。なるべく洗い物の量は減らしたい。たとえ小皿であろうとも。

 葛藤の末、さっさと飲めばそんなに渋くなるまいと判断した私は、結局小皿は持たずカップだけを部屋に運んだ。

 しかし、その時私は一つ重大な事実を忘れていた。自分が猫舌であると……!

 3分後、私はそろそろいいだろうとカップを持とうとしたが、当然ながら持てもしなかった。熱すぎて。前の行で猫舌と書いたが、どちらかというと手の方が猫である。熱いものは全然持てない体質である。

 ここで私には選択肢があった。立ってキッチンに戻り、小皿を取ってくるか、渋くなっていく紅茶を諦めるか、それとも……。

 まあここまでお読みの方は察しがついているかもしれないが、立ってキッチンに戻るなんて面倒なことはしたくないのである。渋い紅茶も遠慮したい。紅茶は温度と時間が大切な飲み物だ。粗末に扱うなんて、茶葉への侮辱である。

 そこで私は第三の選択肢に手をのばした。つまり、ティーバックを取り出してその辺に置いておくという横着ここに極まれり禁断の選択肢だ……!

 ただ、直接置くとテーブルがビッチャビチャになるという懸念もある。汚れるし。なので一抹の希望を抱きながらティッシュを数枚乗せた上に置いてみた。

 結果、何が起きたかお分かりだろうか。

 ビッチャビチャになったティッシュから垂れた水分がカーペットにビチャビチャと垂れていった。

「うわああああ……」

 私は叫びながらカーペットを新たなるティッシュで押さえにかかった。紅茶のシミは落ちないし、カーペットの洗濯は上にある家具を全部のけないといけないのでなるべくなら……いや、頼むからやりたくない。面倒くさい。

 しかし手遅れであった。もうくっきりとシミがついてしまっていた。

 なんということだろうか。この世にこんな悲劇があって良いのだろうか(最初から面倒がらず小皿を持ってくれば良かったのではないかという突っ込みは受け付けない)。

 ああ、私はただ日々の暮らしを少し楽にするためにちょっとした工程を省いただけである。私に何の罪があろうか(手間を惜しむのが悪いんだという突っ込みは受け付けない)。

 結果的にお皿を洗う手間を省こうとしたらカーペットを洗わなければならなくなってしまった。どうしてこうなったのか……神は残酷である。

カーペットを洗おう

 しかし、果たして本当にカーペットを洗わなければいけないのだろうか? 面倒だから嫌なのだが。

 ぶつくさ言いながらYouTubeを見ていたら、この商品が紹介されていた。

 部分的に水で洗って、汚水を吸い込みながら魔法のように掃除できる機械である。すごく楽しく掃除ができそうだ。しかし、小皿の代償として支払うにはちょっと大きすぎる金額な上に、こういう大きな家電は使わない時の収納場所に困るし、収納できたとしてもあとでどこに行ったか分からなくなるという残酷な運命が待っている。私は購入を見送った。

 しかしカーペットを引っぺがして洗濯はやりたくない。何時間かかるか分からないし、もともとカーペットの上にあったものを元通りに直せる気がしない。

 何か、何か他にないのか。楽にカーペットをきれいにできる商品はないのか……!

 私の悪あがきによって、次に見つけたのがこの商品である。

 これはカーペットなどの布製品のシミとりに特化した商品だ。ブラシ部分から洗浄液を染み出させて馴染ませた後、しばらく放置して雑巾などでふき取ると汚れが取れる。

 これだ……!

 私はきらきらと輝く希望のまなざしでこの商品を購入した。これで私と小皿の因縁も解消されようというものだ。

 商品到着後、私は恐る恐る掃除を始めた。すると……! なんと、スルスルと落ちるではないか。紅茶のシミなんて無かったかのようだ。ちょっと香りが強いのがたまに傷だが、数日経ったら気にならなくなった。

 なお、ルンルン気分で適当に掃除した私だが、結構強い薬剤だったらしく後日手がボロボロになったことを申し添えておく。もし同じように困っていてこの商品を使う方は、手袋を着用するか、薬剤に手が触れないように気を付けて掃除することをアドバイスしておきたい。

 以上、これが我が家に起きた小皿事件の顛末である。

 皆さんも、何かを面倒に思って省いた結果、予期せぬ結末に至るということがあるだろう。……ない? いや、あるはずである。絶望したその時、思い出していただきたい。「希望はAmazonにあるのだ」と……!
 
 さて、私は今日もこの記事を書き終わったらティータイムに耽ろうと思う。小皿、小皿は……面倒だからいいか。


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