日本語は6割が輸入モノ
ちょっと質問のメールが来て調べたのでそのときのまとめです。
日本語には大きく分けて日本にあった和語(大和言葉),中国語由来の漢語,西洋由来の外来語という3つの語種があります(あとオノマトペとかあるけど割愛)。ニュースなどでは定期的に「外来語の氾濫」みたいな話が出てきますが,それぞれの語種の割合はどうなっているでしょうか?
この質問の答は辞書にも載っていて,『新選国語辞典』の見開きにはそれぞれの語種の割合が載っています。
手持ちの第8版の結果は次のとおり。よく知られているように,漢語が非常に多く,約半数を占めています。
版によって割合も少しずつ変わります。第9版だと和語が減り,漢語,外来語が増えます。下の図は『図解 日本の語彙』より。
これらから見て分かるように,和語は30%台,漢語が50%弱,外来語が10%弱といったあたりなので,言ってしまえば輸入モノの語彙が6割を占めています。
もっとも輸入モノと言っても「経済」のように日本で作られ逆輸入された漢語もあったりするので,食料自給率のように捉える必要は必ずしもありません。ただし,新語が外来語ばかりだと理解の面で苦しむ人が多く出るので,そこは言い換えなど工夫の必要がありますね。
なお,時代の変化の話を少し出しましたが,これが垣間見える資料もあります。例えば『図説 日本語』(角川書店,絶版)には日本で最初の国語辞典である『言海』と1950年代,60年代の国語辞典の比較があります。
これらを見ると,『言海』に外来語が非常に少ないのは分かるとしても,1969年の角川国語辞典で7.8%というのはちょっと意外です。まさに外来語が増加する前なのかもしれません。もっともこれは辞書の方針かもしれないので少し注意は必要そうです。
さらに,語彙はジャンルでも変わります。『計量国語学辞典』にはジャンル別の語種の分布が載っています。
これを見ると,絵本など児童向けの読み物には和語が非常に多く,高校教科書では漢語が非常に多くなります。
国立国語研究所が雑誌の語彙調査をやっていて,その結果を見ると,1960年代は和語が30%台後半だったのに対し,2005年の結果ではこれが27%まで減り,外来語は10%弱から30%に増加しています。
最後に,コーパスをもとにした場合について触れておきます。コーパスとは大規模な言語資料で通常代表性(サンプルが母集団を代表する性質)を持たせるよう資料を工夫しています。日本語の書き言葉については国立国語研究所が構築しているBCCWJ(現代日本語書き言葉均衡コーパス)というのがあります。
BCCWJに含まれる単語を集計したデータが次のものです(固有名詞や助詞などは除外)。
左の図を見てもやはり和語は3割程度なので,辞書とそう変わらないことが分かります。
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