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自閉症と災害—予測不可能な状況における備えと支援

(5,936文字/個人差はありますが、約9分~14分程で読めると思います)

よこはま発達グループの佐々木です。
コラムの更新が遅くなりました。すみません。

九州~関東での大きな地震、そして東北地方では台風の影響による大雨など全国各地で災害が発生しています。こればかりは予測もできませんし、それ自体をどうにかすることはできません。
  
こうしたイレギュラーでは誰しもが大なり小なり影響を受けやすいと思いますが、ASD特性があると、予想外のことで混乱したり、状況に合わせて臨機応変に、柔軟に対応していくことのストレスが非常に大きかったりするため、より一層困難な状況になることがあります。
   
これまでも災害時の対応等については、よこはま発達グループのnoteや自分のVoicy(https://voicy.jp/channel/4144)などでも取り上げてきましたが、今回はオンラインサロンのコラムでも改めて整理していきたいと思います。  

ASD特性を持つ方々が災害にどのように備え、どのような支援が必要なのかを、英国自閉症協会やアメリカ疾病予防管理センターが出している情報を元に、私見も交えながら書いていきます。


災害時の準備

ASD特性があってもなくても、災害や緊急時に備えるためには事前の準備が欠かせません。だから、僕らも「避難訓練」をするわけです。もちろん、それ以外にも必要な防災グッズなどもあります。
  
加えて、ASDの方々にとって、それらをわかりやすくお伝えしていく必要があります。例えば、避難場所の写真を示す(人によっては、前もって良かれと示しても「今いくのか!?」と誤解してしまうことがあるため、実際に避難するとなったタイミングで提示した方がいいことも)、地図や写真などを用いて避難経路が、少しでもわかりやすくなるように視覚的にサポートするなどは考えられるでしょう。これらは事前に用意しておければより良いでしょうし(地域の避難場所がコロコロ変わることもないので)、それらが難しければ検索したり、google mapなどで示すこともできるでしょう。
   
英国自閉症協会では、ハリケーンのような非常時にはどうすれば良いかについてまとめており、僕がそれらを読んでみていくつか参考になりそうな点の紹介と具体的にどのようなアイディアが考えられるか(僕の場合どうしているのか)を整理してみました。

  • 携帯電話を充電し、停電した際にフルバッテリーで使えるようにしておく
    →同時にモバイルバッテリーも充電しておく。モバイルバッテリーは、充電式、電池式(電池で起動 or ソーラーで起動の両方揃えておくとなおよし。ちなみに、僕の場合には子どもたちにとって必要なもの(=タブレットやゲーム機)は、子どもたちが寝た後には充電し、朝には100%になるようにしています。

  • 緊急時に自宅に留まるか、どこにいるかを友人や家族に知らせる計画を立てる。
    →我が家の場合には、子どもを迎えにいくのは原則的に僕の役割としています。災害の大きさによっては、子どもが自分で避難場所に行く可能性もあるので、その時には玄関の目につくところに置いてある付箋やホワイトボードに行き先を書いておく。それ以外にも、避難経路を日々の散歩コースに入れておくことで、慣れ親しんだルートにしておくことも一つ(避難という不測の事態でも、経路や行き先はちゃんとわかるという、予測のつく状況を準備しておく)。

  • 必要以上に情報に触れる必要はありませんが、テレビやラジオをつけるか、地区町村のウェブサイトを30分ごとにチェックし、最新の天気情報や緊急指示を確認する。

  • 緊急時に備えて、電話の使用を極力控える。災害時には、電話システムが混雑したりパンクする可能性があるので、家族や友人と連絡を取るためには、テキストメッセージやソーシャルメディアを利用する。

  • トイレや食器洗い用に、浴室に水を満たしておく
    →東日本大震災の時には、福島市に住んでいたのですが、僕の住んでいた地域では水が使えなくなりました。そうするとトイレの水が流せずに困るので、最初にこれをしました。今は入浴直前までは前日のお風呂はそのまま残しています。また、食器も非常時には使い捨てのものを使うようにしています。これも断水時に困らなくするための備えです。

  • 各人のために基本的な物資を用意したバックパックを準備しておく。イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン、スマートフォンやタブレット端末の充電器、紙やホワイトボードとペン、日頃使っているスケジュールや絵カード、重い毛布など、普段必要なものを含めておく。
    →コンサルテーションに入っている現場でも、こうした緊急時の話になった時には、可能であれば日頃スケジュールに使っているツールは予備を用意しておくことをお伝えしていることがあります(いつでも持ち出せるようにしておくこと)。特にカード類の優先度が高い(何も書いていないカードも用意しておくと便利。その場でイラストや文字を描けるので)。また、そうしたカード類を貼り付けたり、並べたりするためにA4やB5サイズのコピー用紙にラミネートをかけておく(クリップやマスキングテープがあれば、カードを留められるのでそうした文具も準備)ことで、避難時の荷物がかさばらないので便利。そうしたものがどれも準備できない場合には、スマートフォンやタブレットにプレゼンテーション用にアプリを入れておき、それらに写真なり文字なりを入力して、それをご本人に提示することで代用する。

私見も交えて書きましたが、こうしたことを親御さんとも確認しておいたり、保護者会で一緒に使い方を確認するなどしてみても良いかもしれないなと感じます。

情報伝達をどう工夫するか

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