自閉症スペクトラムと健康
(5,696文字/個人差はありますが、約9分~14分程で読めると思います)
こんばんは。よこはま発達相談室の佐々木です。
今回のテーマは「ASDと健康」です。ASDであっても、そうでなくても、生活していく上では身体の健康は大切なテーマになります。ただし、ASDの方々にとっては、決して容易ではないこともあります。たとえば、感覚の敏感さから治療が難しい、自分の症状について説明しても相手にうまく伝わらないこと、あるいは相手の説明が理解にしにくかったりしてミスコミュニケーションが生じてしまうなどもあります。それ以外にも、衛生管理などのセルフケアスキルを身につけることは、時には問題になることがあります。 たとえば、感覚の偏りから、体を洗うことが不快な体験になることがあります。
感覚の偏りを整理する
感覚の偏りによる影響があると考えられる場合には、何はOKで、何はNGあるいはストレスが大きいのか記録をつけるなどの方法で整理していくことが有効です。たとえば、どの種類の衣類は着ることができて、どの生地の衣類は難しいのか。色や柄などが関係することもあります。どの柔軟剤の香りはいいけれども、どの柔軟剤はストレスになるのか。シャンプーやボディソープなども同様です。
時に、シャワーが「痛い」と感じたり、不快に感じられることもあります。その際には、の困難があれば、シャワーは使わない、シャワーヘッドを変えて柔らかい感覚にする(例えば、ミストみたいな)なども考えますし、身体を洗う際には手で洗う、大丈夫な布地のスポンジやタオルを使うなども考えたりします。浴室内の換気扇の音が辛かったり、その音があるが故に大人の指示が聞こえにくくなるということもあります。
なので、まず初めにすることは、大変かもしれないし、面倒と思われることもあるかもしれませんが、どんな時に、どのような様子や反応がみられたのかをまとめていくことが大切です。
これらは一例に過ぎませんが、人によっては「これまでは身の回りの衛生管理はできていたけれども、そうしたことができなくなってきた」ということが生じます。これは知的な能力の困難が大きくても、そうでなくても起こり得ます。そうした場合には、メンタルヘルスの不調も考えます。時々、知的障害があると「他の精神症状が出ることはあんまりない」と見聞きすることがありますが、そうとも言えません。なので、「今までできていたことが急にできなくなってきた」という場合には、日々の対応を見直すことも大切かもしれませんが、主治医を含めてぜひ相談されてみてください。
質問する意図を共有する
病院を受診する際にも「どんな準備をした方が良いか?」とよくご相談をお受けします。中でも、「入院することになった場合にはどうしたらいいか」ということもあり、そうした時に皆さんであればどのように考えるでしょうか。
僕も入院については、そこまで経験があるわけではないのですが、次のようなことを相談していったと思います。
一つはコミュニケーションです。
特に、入院となれば親御さんがずっと付き添えないこともあるので大事なポイントです。
例えば以下のようなことがあります。
自分から質問ができるか(わからないことや疑問点があれば、聞いてくれるか)
質問は短く、具体的である必要があるか(1〇〇、2〇〇など区切りながらの説明の方がいいかなど)
メモに書くなど、伝えたいことを書く必要はあるか
またご本人たちの発言もメモ書きにするなど見える形でやり取りしていく方がいいか
写真やイラスト、シンボルなどの理解はどうか(理解しやすいのは何か)
説明をする際に身振りを加えたり、実演を示すのは役に立つか
発語がなくても、写真などの見てわかる手がかりがあれば指差したりできるか
どのような方法で質問をしたとしても、答えるまでに時間がかかるかどうか(時間がかかる場合、どのくらい待つ方がいいか、「わからない」と選択肢があれば指差したりできるか)
医療従事者から親御さんなどの介護者の方に説明をし、その方から説明してもらう方がいいか
医療従事者からの質問に対しても、介護者の方が間に入りながらやり取りする方が良いか
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