大学受験生を持つ親へ
今回は,受験生を持つ親へのメッセージです。
もし,受験生自身が読んでいる場合は,親にこうして欲しいなという気付きがあれば,この記事を紹介するのも手かもしれません。
私が大学受験をしたのは今から20年も前の話で,まだセンターテストが行われていた時のことです。受験の経験自体は昔の話ですが,様々な感情や体験の記憶は色濃いままです。それくらい受験というのは若年世代の大きなイベントなわけです。また私は大学教員という仕事をしているので大学受験は身近です。高校から大学へきたばかりの学生との交流の中で日々感じることも多いです。
受験生へのメッセージはnoteに多数参考になるものが書かれると思うので,今回はこの記事で受験生の親へのメッセージを書きたいと思います。
1)大学受験は時代時代で変化している。
親が子の大学受験に接する際,親自身の受験から20年以上過ぎている場合が多いでしょう。この約20年で大学受験も変化しています。そのため親が自分の受験の経験や尺度を,自身の子に押しつけないことが一番重要と考えます。もちろん親も子にわざわざそういう価値観なんかを押しつけたいと思ってはいないでしょう。しかし,無意識のうちに昔の価値観を押し付けている可能性はないでしょうか? まずは子の受験に対して親自身も調べて学ぶことを強く期待します。よくある親の価値観の押し付け例を紹介します。
・国立じゃなきゃ大学じゃない
今はさらに昔よりも国立大学と私立大学というくくりで簡単に語れるような状態ではないです。既に国立大学も名ばかりで,制度の違う私立大学のような状態とも言えます。国立だから私立だからというくくりは時代遅れでしょう。
・地元の地方国立が一番いい
親の周りの地域社会ではその地方の地方国立大学が一番評価が高いでしょうが,子がどのようなことを学びたいかを尊重してあげたいところです。
・私立はお金がかかるから国立にして
学部や大学により,国立のほうが実費が高い場合もあります。特に子が理系を目指し大学院まで進む希望の場合は私立のほうがお金がかからない場合もあります.これについては別の記事で説明しています.
・理系なんて女の子のいくところではない
学ことに性別は関係ないです.
・浪人なんて恥ずかしいからやめて
根底にある理由は分からないですが,そういう親からの精神的な圧を理由で第一志望を諦めている学生は散見されます。つまり落ちたら恥ずかしい人になるから,余裕をもって受かる大学を受けるということです。当たり前ですが受かる人もいれば落ちる人もいます。落ちると(希望どおりすすまないと)恥ずかしいという概念は,本気でチャレンジしたことがない人の考えかたでしょう。仮に親がそう考えていてその考えを譲る気がなくても声に出して子に伝えることは,萎縮させて逆効果したないことは明白です。
2)今の大学受験の話をする
大学入試の難易度は今の大学生と今の親の大学受験時代を比較すると,基本的に難化傾向にあります。細かな話は別記事にします。そのため親の世代では自身にとってそこまで難しいと考えていなかったA大学が,約20年たった今は難しいという状態になりえます。子が学びたいことがあり選択したA大学を,”そこなら簡単だね安心”のような扱いをするのは,子にとってとてもプレッシャーになるでしょうし,嫌な思いをするでしょう。
日本全体で少子化は進んでいるので入るのは簡単になっていると勘違いされがちですが,大学の数も枠も減っていて,そういう傾向は基本ないです。むしろ進学校の教育の充実と,そうでない高校との格差はひらく一方なので,子の学ぶ環境によっては20年前に親が経験した受験よりも,とてつもなく子はハードモードということは容易に発生します。
親は,自分よりむ困難な状況で子が受験しているんだというくらいの気持ちで見守ってあげてほしいです。
3)大学受験が体力勝負
親の世代よりもより大学進学率が高まる昨今,親が大卒ではなく子は大学を目指す場合があります。そのような場合に,親が大学受験について頑張れば受かる程度にしか考えていないと,子と様々な面ですれ違いが発生するでしょう。その中で1つ言いたいことが大学受験は体力勝負ということです。
これは大学受験だけに限りませんが,そいう長期間の勉強をやったことが無いとなかなか理解が難しいかもしれませんが,勉強は相当にエネルギーを使うので,体力勝負なのです。体調管理つまり日常生活や食生活は重要です。 もちろん、子自身がそれを行うことも必要ですが,少なくとも親がそれを妨害するようなことにならないでしょう。例えば以下のような内容は,間接的に子の勉強を妨げてしまいます。
・食事のタイミングがバラバラあるいは子にあわせていない。
子は高校生活があるので,食事の時間で決めにくいです。そして勉強は計画的に行いたいわけです。食事のタイミングは勉強のリズム,計画的に進めることに大きく影響します。
帰宅してすぐ(あるいは子がいいタイミング)で食事が提供されないと、かなり勉強のリズムを狂わされます。毎回、親の色々な都合で違うタイミングで食事がでるとなると、勉強の計画をたてるのが大変になります。
ご多忙のご両親もいると思いますが,レンチンで食べられる状態になっていると子も助かると思います。少なくとも親の帰宅が遅れると食事が遅くなる あるいはカップラーメンで済ませてね、と言う状態は可能な限り避けてあげましょう。
・親が夜更かし生活で,TVの音や生活音がうるさい
子が一番集中できる時間は、子それぞれです。また睡眠時間もそれぞれです。それを妨害するような親独自の生活リズムで、音で妨害していることがあります。例えば子が部屋で勉強しているのに,大きな音でTV番組をみて大笑いすると,子は勉強で気が散ります。気が散るなら音楽でも聴いて勉強すればと思うかもしれませんが,音楽を聴きながら集中できずかどうかは個人差が激しく全員そうではないです。
受験期は、子供の睡眠や勉強を優先して、生活リズムを合わせてあげるとよいでしょう。
・親が遊びに誘惑する
子は真剣に勉強しているとしても、やはり誘惑には弱いものです。親が自分の都合で子を頻繁に遊びに誘うと(親も優しさなのはわかりますが)
子の集中力をそぎます。そして勉強ができない理由、逃げ道をつくってしまいます。気晴らしに遊びに連れ出してあげる協力は大賛成ですが、そのタイミングの主導権は子どもに与えてあげるとよいかもしれません。
・家で勉強するスペースがない
家で勉強するスペースがないです。私が家庭教師をしていて一番驚いたことの1つです。家庭教師にそれぞれの家庭に訪問するはじめての回、結構な確率で受け持つ子供の勉強スペースがないということがります。これは家が狭いからということではなく、子供部屋に机がないとか、リビング学習が一番いいときいたからリビングで勉強させていますとか,どうせ部屋に机おいても勉強しないから,兄弟3人でテーブル1つを共有しているなどなど、様々な理由で机がないのです。
家に、2か所ほど集中できる勉強スペースを作ってあげてください。1つは個人専用がよいです。小さくてもいいので、専用スペースを1つつくってあげてください。
リビング学習も有効ですが、他の用途で使うリビングの机は,その都度勉強道具を片付ける必要があります.再度出す,再度ページを開くというのは心理的に勉強継続のハードルが上がる場合もあります。勉強している内容や体調や気分によっては、周囲に人がいることや、生活音が気になる日もあります。そういう場合に自分専用の小さなスペースがあると、そっちで気分をかえて勉強できます。
・うちのこは受かって当たり前という褒め言葉を口にする
親が受験について心配しすぎると、まるで志望校に落ちたら人生が終わるのでは?のような空気感が家の中に充満してしまうかもしれません。よいプレッシャーというものは確かにありますが、家の中でそういうプレッシャーは普通は感じたくありません。一方で,その逆もまたプレッシャーです。私らの子なら絶対大丈夫,受かるよ!というような褒めや励ましも同様にプレッシャーです。このような受かる落ちるなどのいわゆる条件付きの愛は,どちらも不健全なプレッシャーを与えるでしょう。
落ちても受かっても、大丈夫という肯定的な雰囲気で接してあげてはどうでしょうか。
4)おわりに
色々かきましたが受験する大学や,生活する地域,様々なことでケースバイケースです。少しでも参考になれば幸いです。これを読んだ受験生がいて、何か親にしてほしいことを見付けたなら,この記事をみせて親に相談してもよいかもしれません。親世代が見たなら,何か参考になれば幸いです。