通勤経路を時間ではなく期待値で考える
都市部で勤務する社会人や学生の悩みの一つが長時間移動や満員電車による通勤の負担である。東京都に勤務する社会人で片道のドアtoドアでの通勤時間は1時間かかるという人も多いでしょう。ここで,通勤の負担や遅刻のリスクなどを考えて,何を優先すべきでしょうか.提案するのは,
通勤経路を 乗り換え案内のスペック上の時間ではなく,実際に通勤にかかる時間の期待値を考慮する
です。実際に通勤にかかる時間の期待値とはなんでしょうか?順をおって説明します。
1)なぜスペック上の時間ではなく期待値なのか
社会人として一番避けるべきは,遅刻である.遅刻すると仕事に穴をあけることになり,その後の工程が遅れるだけでなく,信用も失う.単純に仕事の機会損失にもつながる。そのため,例えば
A:都心から少し郊外であるが100%毎回1時間で通える経路
B:都心に近くスペック上(乗り換え案内上)の時間で30分だけど,よく遅延する経路で1時間30分くらいかかることが週1回ある経路
で比較すると,仕事上はBのほうが通勤に時間がかかる.朝の出社時間あるいは,会議などの予定に間に合うためには,1時間30分以上かかると考えて時間的余裕をもって移動せざる負えないからである。つまり,Bの経路は通勤に1時間30分かかる経路なのである。しかし,Bのほうが都心に近いため家賃(土地代)も高くなる。仕事だけのことを考えると,Bは割高というかコスト効率が悪いという考えである。現実はもっと複雑で,極端なA,Bのような割り切りはできない。そのため,なるべくAに近く不都合のにい場所を個人の支払える予算で決めることになる。
2)移動方法と遅刻の可能性
移動方法ごとの遅刻の可能性を考える。つまり移動にかかる時間が日ごとに変化しにくい移動と、しやすい移動。あるいは、不測の事態の際に迂回しにくい経路である。ケースバイケースで全ての事例には当てはまらないが,一番誤差なく移動できるのが徒歩のみの移動と考えられる。ケガをしない限りは歩いて20分の通勤が,とある日は2時間かかるといことはないだろう。道路工事があっても迂回して数分の誤差でつける。つまり,徒歩で通勤できるところが一番安定した通勤時間で通て,無駄な余裕を持った行動は必要がなくなる。もうすこし具体的に言えば,徒歩20分の経路は,電車20時間の経路より,実際上の通勤時間はかからないと考えられる。電車で20分の経路でも10分程度は余裕をもった行動が必要になるだろうからだ。そう考えると,都市部での移動は以下のような整理ができる。
徒歩:毎回同じくらいの時間で移動できる。走れば短縮。迂回もしやすい。
バス:遅延しやすい。満員で乗れない場合,次のバスまでの時間が長い。
道路事情でバスが遅延する場合,迂回が徒歩となり時間がかかる。
電車:バスよりは遅延しにくい。満員で乗れない場合は少ない。次の電車
までの時間は短い。電車での迂回経路がある場合がある。電車が遅延
した場合でも道路事情でバスやタクシーでの移動が混雑しているとは
限らないので移動代替できる。
これらからの検討からわかるように,期待値という物差しで考えると,通勤で利用するリスクが高いのは,バスで,その次が電車,最後が徒歩と考えられる。
3)急行駅より各停駅がいい。
電車の種類について考える。各駅停車しか停まらない駅と,快速急行や通勤急行が停まる駅はどちらが通勤にむいているだろうか。
C:各駅停車しかとまらないが1時間の経路,各駅停車は5分に一本
D:20分に1本ある通勤快特で50分の経路,各停は1時間10分かかる。
この場合,この期待値が小さいほうが良い理論で言えば,Cのほうが通勤にかかる時間は短いことになる。Dは20分に1本の電車を乗りのがすと,最短でも1時間10分かかるからである。つまり,通勤快特に乗り遅れないように,余裕をもった行動が必要になり,Dのほうが通勤時間が長くなる。一般的に,DのほうがCより都市部から物理的な距離が離れていることになるが,急行や快特が停車駅のため,家賃(土地の値段)は高くなる場合もある。この場合,通勤という意味ではDのほうが時間的にも金銭的にも不利といえる。一般的にDのほうが好まれる場合が多いようであるが,冷静に考えると通勤での遅刻リスクが高いといえる。
4)都市部から遠くても乗り換えが無い経路がいい。
通勤時間帯で時間を読みづらいのが乗り換えである。朝や夕方の通勤時間帯と,昼間では駅等での乗り換えに必要な時間は同じではない。混雑時は予想以上に時間がかかり,乗り換え案内のスペック上の乗り換えできる電車に間に合わないことも多い。つまり,プラットフォーム乗り換え(対面乗り換え)は別として,駅を移動しての乗り換えは,乗り換え失敗時を考慮した時間的な余裕を必要とするため,
E:乗り換えなしの1時間の経路
F:駅で5分程度の乗り換え移動が必要な1時間の経路
では,Fのほうが乗り換えミスを考慮して実際の通勤時間が長くかかることになる。特に,電車は次の電車までの間隔が短いので,都市部でEとFDの時間的な差はそこまでない。あるとすると、乗り換えが発生するEのほうが座れる可能性があり,Fより疲れないだろうという差はある。
5)通勤で一番リスクの高いと考えられる経路
これまでの議論から分かるように,通勤でスペック上よりも,実際にかかる時間が長くなる経路は,
G:自宅から徒歩,バス,電車(快速急行等の利用),大きな駅で乗り換え,電車,徒歩,会社
のようなGの経路であるといえる。たとえスペック上50分の経路でも,朝に確実に時間に間に合うには,かなり余裕をもった行動が求められ,おそらく30分前行動をとることになるのではないだろうか。
H 自宅から徒歩 電車(各停),徒歩,会社
のようなHの経路はスペック上1時間の経路であれば,上記のGのように30分も余裕は必要なく,せいぜい5分前行動で十分問題ないかもしれない。
6)まとめ
いうまでもないが,住む場所は各個人が完全に自由に選ぶことはできない。親の家からの通学,親の家を継いだ,通勤しやすい経路は家賃(土地の値段)が高いなどなど,様々な制限があるからだ。一方で,社会人になり住める場所が1駅付近しか選べないということは稀なはずである。後ろどこに住んでいいか迷う,どこに家を建てるか(マンションを買うか)迷う場合がおおい。そのような場合に,選択できる場所で,どの経路が一番通勤が楽か,遅刻のリスクを考えた場合の,通勤時間が短くできる,かかる時間の期待値の小さい経路を選んではどうらろうか。