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パソコンのキーボードが使いづらいのは当たり前な理由
日常的に使うパソコンのキーボード,使いづらくありませんか?
20万円以上する高いノートPCでも,キーボード単独で数万円のエルゴノミクスキーボードでも使いづらいと思います。
これは,当たり前のことで、そもそも使いやすく設計していないからです。
今日は,パソコンのキーボードを例に,使いやすく設計することの難しさを紹介します。
なぜキーボードが使いづらいのか?
パソコンのキーボードが使いづらいのは,そもそも使いやすく設計していないからです。いやいや,使いやすいって書いてあるよ? 使いやすく設計してよ! そう思うと思いますが,今更使いやすく設計できないという事情があります。これは,多くの人が利用するモノ,特に仕事など(あるいみ嫌々や義務的に)使うものについては,形状や仕様を突然変更できないという実際的な制限があるからです。
そもそもPCキーボードの前は,ワープロのキーボードなどがありました。その前は,タイプライターです。このタイプライターの際は,実はもっと複数種類のキーボードの方式がありました。配置方法や配置位置も様々でした。しかし、そうなると2つの課題点がありました(所説あり)。
1)故障防止のため素人が使いづらくする
人が覚えやすい、使いやすい配置にしすぎると,使い方に慣れていない人が,キーを連打しすぎてタイプライターが壊れてしまうという問題です。これを避けるために、初見では覚えにくい配置にキーの位置をランダム化されていきました。
2)誰でも使えるように共通化
各社が違う配置のキーボード、大きく形状の違うキーボードをつくると、個人利用以外に事務設備としてタイプライターを使う場合、きわめて不便でした。使う人が複数種類を覚えていないと、文字をうつだけなのに、複数のキーボード配置を覚える必要がでるからです。
この2つの課題を解決するため,誰でも初めてはキー配置を覚えずらい配置がランダムな様子の今のような配置になりまいた。つまり淘汰されて共通のものとしてのこりました。
このような流れから、現在の最新のPCキーボードも,そもそも今のキーボードの配置位置は使いづらいようになる前提なので、その制限の中で設計する必要があり,そもそも使いやすく設計できていないといえます。限られた工夫としてキーの1つの大きさや深さ,打感などを工夫して少しでも使いやすくしようと工夫はされていますが、根本的に使いやすく設計できないという状態です
なぜ、根本的に使いやすくしない?
そもそも使いやすいというのは、主語かが大切です。誰にとって使いやすいかです。PCのキーボードのように、多くの人が日常的に使うものは、皆が使いやすい必要がでます。そしてその中には、今のQWERTY配置のキーボードに慣れている人を必ず含みます。そうなると,新しいノートPCのキーボードが初見の人にとって使いやすい配置や形状としてしまうと,既存ユーザの多く、つまり今のPCキーボード配置に慣れている人に使いづらいことになり,普及しません(売れません)。
このような理由から,既に世間に普及したものは、抜本的に使いやすくする大きな変化は起こせない場合が多いです。すくなくともマネタイズしにくい,つまりビジネスにならないので企業が積極的に行うことは少ないです。他にも今更変えることが難しいものの1つに,車のハンドル、トイレの形状(方式)などになると考えられます。
自分に使いやすいを実現する:自作キーボード
上記のようにキーボードは使いにくいという説明をしましたが、そう感じる人は実は多くいるでしょう。その解決の方法として,昨今は自作キーボードが1つのブームです。キーの配置や配列などもある程度自由度があり,配列もソフトウェアで変更可能で,QWERTY並びにする必要もありません。自分しか使わないからです。このような自作キーボードの普及の要因の1つは3Dプリンタの廉価化もあるといえます。キーボードのケーシング部分をユーザも自作しやすくなり、意匠性,使いやすい位置や角度も含めたデザインの障壁が下がったといえます。
一方で、このような自作キーボードの利用に慣れすぎると、普通のノートPCなどでタイピングするのに戸惑うことがあるでしょう(私はあります)から,そこが悩みです。
別案の並列展開:フリック入力
スマートフォンの普及とともに,フリック入力という新たな文字入力方法が普及しました。これはスマホやタブレットが物理的なキーボードではなく、ソフトウェア的なキーボードを備えているからです。ソフトウェア的なキーボードのため複数の入力方法を切り替え可能です。従来のQWERTY入力に慣れているユーザは、根本的に片手入力では使いづらいですが,そのまま慣れたQWERTYで利用できます。一方で,新規ユーザでスマホメインの人は、片手で素早く入力できるフリック入力を選択可能です。スマホではフリック、PCではQWERTY入力という人も多いとおもいます。このように、新たなインターフェースを並列で準備するという解決方法があります。
おわりに
今回はPCキーボードを1つの例に、既に普及したシステムやデザインを使いやすくする難しさについて紹介しました。世の中には、昔からこの方式だから、この形状だから、このやり方だから、という理由で根本的な改善が可能だけれど、様々な制限で変化していないものがあります。スマホのフリック入力や,自作キーボードのように新しい技術が現れたタイミングで、それらの制限が緩和できて根本的な改善のヒントとなるかもしれません。