それは、逆ギレしてる顔
ムスメが高一の時の話です。
「洗濯もの、そっちよりこっちに干した方が早く乾くよ」
私のこの一言で、ムスメは不機嫌な顔になり、動かなくなりました。
些細なことで、すぐに怒り出すムスメでしたが、これは全く訳が分かりませんでした。明らかに不適切なので、これは言わなければいけないと思いました。
「ねえ、なんで怒ってるの? 洗濯もの、そっちに干すよりヒーター使ってるこっちの部屋に干した方が、早く乾くよって言ってるだけでしょ? なんでそれで不機嫌になるの? おかしいでしょ。 こっちが気分悪くなるんだけど!」
すると、驚いたことに返事はこうでした。
「怒ってるのはママでしょ!?」
「……? 何言ってるか、分かんないんだけど?」
ここから会話はなぜか泥沼にハマっていったのでした。あのアドバイスの何が問題だったのか不思議でした。始めは冷静だった私も話せば話すほど、噛み合わなくなる会話にイライラが始まり、終いにはムスメと同じレベルで怒っていました。
この時、ムスメが指摘されたことで怒ったか、アドバイスを文句を言われたと思って怒ったかのどちらかだと思っていました。
ところが、問題は彼女が無意識にする不機嫌な顔でした。この不機嫌な顔はどう見ても怒っている顔でした。
けれど、彼女は困っていたと言うのです。だったら、始めから困った顔にしてもらえると楽なのですが、簡単にはいかないようです。
ムスメは実際、指示代名詞の「そっちよりこっち」が分からなくて、困って動けなくなっていたらしいのですが、私にはムスメがアドバイスに対して、口を出してきてうるさいと腹を立ているように見えたのでした。
私はムスメが指示代名詞がそこまで苦手だとは知りませんでしたし、困っている時も怒ったように見えることがあることを理解していませんでした。
そしてもう一つ、「怒ってるのはママでしょ!?」と言ってきたのは、「そっちよりこっちに干した方が早く乾くよ」と私が最初に言ったことにではなく、その後ムスメのふてぶてしい反応に対して私が強めの口調で言った「・・・おかしいでしょ。 ほんと気分悪くなるんだけど!」に対して言ったことだったらしいのです。
通常の話の流れではこうはならないので、誤解が生じてしまう訳です。
ムスメと話をしていると、何に対して話をしているのかが、分からなくなることがよくあります。短期記憶の問題から、最初に起きた事の発端を記憶に留めながら話しを進めることが難しいようなのです。
口調に関しても、ムスメは思い切り怒鳴ってくるくせに、人の口調にはやたら厳しくて、怒っているのではないちょっと強めの口調にも、怒ってる、と言うのですから大変です。
こんな具合ですから、スペクトラムな家族と無駄な言い争いを避ける為にも、心に余裕を持つことが大切になってきます。どんなに焚き付けられても感情的にならずに余裕を持てたらと思いますが、忙しいとなかなか大変なことです。
こじれている時は特に、ムスメの言い分を聞いて、紙に書くようにしています。「書くからゆっくり言って」と言うと、ムスメはゆっくり話し、私は復唱しながらになるので二人とも落ち着け、お互いの誤解にも気づくことができるのです。
面倒に思えるかもしれませんが、言い争いに二、三時間取られることを考えたら、ずっと楽なので、同じように困っている方はお試しいただければと思います。
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