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ブランドアカウントで「制作の話」をどこまで出すべきか?— 発信の最適解を探る

こんにちは、矢裏です。

私は育児と本業の合間を縫いながら、3Dプリンターを活用してオリジナルプロダクトを制作・販売し、副業として収益化に取り組んでいます。

ブランドの発信において、「制作の話」をどこまで出すべきか?は、多くのクリエイターやブランド運営者にとって悩ましい問題です。

私自身、制作秘話をどの程度公開するか何度も考えました。特に個人でブランドを立ち上げ、価格競争に巻き込まれずに価値を高めながら持続的に販売していきたい場合、慎重に判断する必要があります。

制作過程を公開すれば、こだわりや技術力を伝えやすくなり、ファンを獲得する機会が増えます。しかし一方で、発信の仕方によっては「思ったより簡単に作れそう」「素材の価格を知ってしまった」「発信者のイメージが変わった」といった予期せぬリスクが生じることもあります。

特に、制作プロセスが一般的に知られている技術を用いたものであればあるほど、見せ方次第でブランド価値の伝わり方が変わってきます。

では、「制作の話」はどこまで出すのが最適なのでしょうか?

今回は、単なるメリット・デメリットの話ではなく、ブランドとしての価値を損なわず、むしろ高めるための発信戦略を考えていきます。

制作の話を出しすぎると何が起きるのか?

制作の話を前面に出すことは、一見すると透明性があり、ファンを獲得しやすくなるように思えます。しかし、ブランドの見せ方を誤ると、知らず知らずのうちに購買意欲を削ぐ方向に働いてしまうことがあります。

1. 「作り方の話」が「価値の話」よりも先にくると、価格の正当性が崩れる

制作のプロセスを詳細に語ることは、「これだけの手間をかけているから価値がある」という伝え方になりがちです。しかし、これは「労働時間に対する対価」としての考え方であり、「ブランドの価値」にフォーカスした伝え方とは異なります。

仮に制作過程がシンプルであった場合、そこに手間がかかっていないという印象を与えてしまうと、価格の正当性が疑問視されることになります。「機械で作れるなら安くあるべき」「シンプルな工程ならもっと安く売るべき」といった発想につながると、単なる作業の価値に焦点が当たり、ブランドが持つ世界観や独自性の評価につながりにくくなります。

2. 競争が「クオリティ」ではなく「作りやすさ」になる

制作過程が明確になればなるほど、「この作り方なら自分にもできる」「似たものを作ればいい」と考える人が増えます。これは、単なる模倣のリスクにとどまらず、競争の軸がブランドのコンセプトやデザインではなく、制作プロセスの単純化や低コスト化に移る可能性を生みます。

特に、制作工程が一般的な技術を用いたものであればあるほど、「より安く作れる方法を見つけた人」に市場を奪われやすくなるのが現実です。ブランドとして生き残るためには、技術そのものではなく、「このブランドならではの価値」を発信することが重要になります。

3. 購入者ではなく「作りたい人」が集まりやすくなる

制作の話が主軸になりすぎると、発信を見た人の関心が「どんな製品なのか?」よりも、「どうやって作られているのか?」に向きがちです。その結果、購入者よりも「自分で作ってみたい人」が集まりやすくなります。

情報発信の目的が「ブランドの価値を伝え、購入につなげること」であるなら、制作の話がどの層に届くのかを意識する必要があります。

クリエイターが情報発信をする際には、「発信の対象は誰なのか?」を明確にする必要があります。作り方を知りたい人が増えることで、ブランドのメッセージがぼやけてしまい、本来のターゲット層に届きにくくなるリスクがあります。

制作の話はどのように出すべきか?

制作の話を完全に隠す必要はありません。しかし、それをどのように伝えるかによって、ブランドの見え方は大きく変わります。ここでは、制作の話をブランド価値を下げることなく発信するための考え方を紹介します。

1. 「作り方」ではなく「なぜこの形になったのか?」を語る

制作の手順を詳細に語ることは、ブランドの透明性を示すことではありません。大切なのは、「なぜこのデザインになったのか?」という視点です。

悪い例 「このプロダクトは、〇〇という機械を使って制作し、△△の工程を経て完成します。」

良い例 「この形状は、〇〇という機能を重視した結果生まれたもので、△△という工夫を加えることで、より使いやすくなっています。」

技術的な詳細ではなく、デザインの意図や背景に焦点を当てることで、「このブランドならではの価値」を伝えやすくなります。

2. 「制作の苦労」ではなく「作り手の視点」を共有する

制作の難しさを語ることは、一定の共感を得ることができますが、それが「だから価格が高い」という論理になると、単なる労働の対価として受け取られることになります。

より効果的なのは、「作り手がどのような視点で物を見ているのか?」を共有することです。

例えば、「この素材の選択にはどのようなこだわりがあるのか?」「どのような環境で使うことを想定しているのか?」といった視点を語ることで、「このブランドは、単に作るのではなく、〇〇な視点でデザインしている」という印象を与えることができます。

3. 価格の説明を「手間」ではなく「価値」にフォーカスする

制作工程を語るとき、つい「手間がかかっているからこの価格」という話になりがちです。しかし、購入者にとって重要なのは、その製品が「どれだけの時間と手間がかかったか」ではなく、「その結果、どのような価値を得られるのか?」という点です。

悪い例 「このプロダクトは、制作に10時間かかるのでこの価格です。」

良い例 「このデザインは、〇〇を実現するために生まれたもので、一般的な製品にはない△△の特長があります。」

価格の説明をするときは、「労働の対価」ではなく「ブランドとしての価値」に結びつけることが重要です。

結論:「制作の話」はブランドの価値を支えるものであるべき

制作の話は、ブランドのストーリーを伝えるための有効な手段です。しかし、それが単なる工程紹介にとどまると、ブランド価値を高めるどころか、価格競争や模倣を促進する要因にもなりかねません。

最適な発信戦略としては、「制作の手順」ではなく「制作の視点」を伝えることが重要になります。作り方ではなく、「なぜこの形になったのか?」「どんな価値を提供するのか?」を語ることで、ブランドの独自性を際立たせることができます。

制作の話を出すかどうか迷っているなら、その情報が「価格の説明」ではなく「ブランドの魅力の補強」として機能するかどうかを基準に考えてみると、より効果的な発信ができるはずです。

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