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(とりあえず)2024年を〆ねばならぬ、ということで谷津矢車の振り返り

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 えー、本日仕事納めの方も多いと思いますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 谷津は進捗駄目です。
 ちょいと今、頭に薄く靄が掛かっており、勘が鈍くなっている感じがします。たぶん、『憧れ写楽』(文藝春秋)の執筆疲れなんじゃないかと思います。
 そんなこんななせいで、10月から当たっていた原稿を全没にする決断を下し、あれこれのリカバリーに当たっているところです。なので、谷津の2024年は来年四月頃まで続きそうなのです。
 と、締まらない話をしても仕方ありません。
 世は仕事納め。とりあえず、仕事を収める振りをせねば、ということで、今年のお仕事の振り返りをしようかと思います。

こんな本が出ました

 今年は単行本2冊、文庫2冊が世に出ました。

 四月に文庫版『吉宗の星』が刊行されました。

 孤独な徳川吉宗の陰謀と寂寞の日々を描いた一代記です。
 本作はかの痛快名作時代劇『暴れん坊将軍』を逆張りしようというのが最初のコンセプトでした。なので、マツケンさん演じる快活な殿様ではなく、どこか影を背負った悲しい男として吉宗を造形、その上で、城に蔓延る様々な陰謀に対し、同じく陰謀でやり返す吉宗を描き出しました。単行本をほぼそのまま文庫化した格好です。
 なんでも、来年正月の時代劇で『暴れん坊将軍』が復活し、しかも我が子の将軍継嗣問題を扱うとのこと。本作でも家重の継嗣問題を扱っていますので、正月の読書になにとぞです。

 八月には『二月二十六日のサクリファイス』(PHP研究所)が刊行されました。

 著者初の昭和もの。二・二六事件の史実をパッチワークにして最終的に大きなフィクションに読者を誘うモキュメント歴史小説であり、「昭和史時代ミステリ」として設計した小説であります。どうしたわけかご同業の方に大きく話題にしていただき(しかもミステリ畑の方から)、今でも手に取る方がいらっしゃるロングセラーになっています。何気に著者最厚の分量を誇る小説ともなりましたので、正月の暇潰しになにとぞ。

 十月には『蔦屋』(文春文庫)が刊行されました。

 十年前に書いた『蔦屋』(学研パブリッシング・現在絶版)の文庫化です。江戸中期の出版王、蔦屋重三郎とそのビジネスパートナーの活躍を描きます。
 文庫化にあたり、文章面に大鉈を振るいました。十年前のノリを残しつつブラッシュアップするという難しい仕事を果たすことになりましたが、うまく行ってよかったです。
 大河ドラマの主人公を扱った小説ということもあり、多くの書店様で置いていただいております。おかげさまで現在四刷。まだまだ伸びる! と谷津は天に向かって気炎を吐いております次第。来年大河ドラマの予習になにとぞ。大河ドラマの主役にもなってしまうほどの、魅力的な出版プロデューサーの生涯をご堪能あれ。

 十一月には『憧れ写楽』(文藝春秋)が刊行されました。

『蔦屋』のスピンオフの側面もある最新刊です。
 前作『蔦屋』が蔦屋重三郎の青春小説ならば、本作は蔦屋の青春の後始末を描いた小説となります。
 蔦屋重三郎の、ほぼ最後の仕事と言っていい東洲斎写楽。史実ベースでは斎藤十郎兵衛でよかろう、と結論が出ているこの話に果敢に分け入り大嘘をついた時代ミステリです。写楽正体説ものブームに間に合わなかった著者の「憧れ」は、はたして「あこがれ」か「あくがれ」か(この言葉の意味は、実際に中身を読むと分かります)。

2024年の総括

 作家として、大変充実した一年でした。
 刊行点数は標準的ないし少し多めに出ました。それもこれも『蔦屋』『憧れ写楽』のことがあったからなのですが、どうしたわけか得るものが多い一年でしたし、また、作家として新たなステージに立ったなあと思えた一年でした。
 えっ、何も変わってない?
 ああ、読者の皆様がそれを感知するのは、きっと来年以降のことだと思います。
 一職人として、今年単行本で出た二作に、確かな手応えを感じ取った次第なのです。
 セールス的な部分で跳ねるかどうかはわかりませんが(神のみぞ知る話なので)、恐らく、文章を書く職人としては、一段階上の階梯に進めたのではないか、という達成感を持っています。
『蔦屋』の売り上げ堅調といった吉事にも恵まれましたが、何より、職人として、確かな実感を持てたのが2024年という年でした。
 それゆえに、頑張らねばなあ、という話ではあるのですが……。
 というわけで、来年も地道に頑張りまーす!

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