全力で遊び、全力で怒る小さな人たち
沖縄県の学童クラブで働いている学童保育士です。 #学童の日常 を、noteとtwitterにて気まぐれに更新中。
学童ですごしていると、日々何かの事件が起きる。
なぜなら子どもたちは常に全力で、遊ぶのも喧嘩するのも、泣くのも怒るのも、命がけだからだ。
非日常が、日常。これから書くのは、そんな毎日の1コマである。
「ぜったいに、あやまらないからね!!!」
隠れんぼ中のAくん、机の下に息をひそめて隠れているのをBくんにバラされて、鬼に見つかってしまった。カンカンに怒ったAくんはBくんの牛乳パック飛行機にパンチ。飛行機の一部が壊れた。
ちなみにこの飛行機はBくんが学校の図工の時間につくった大作で、Bくんが意気揚々と抱えて大事に大事に持ち帰ったものだ。
飛行機が壊れたのを見て、Bくんは顔をゆがめて泣き始める。Bくんが泣いたのを見ても、Aくんは口をへの字にして怒ったまま。
Aくん:「ぜったいあやまらないからね!!!だってぼくさ、ぼくさ、見つからないようにあんなしてこんなして隠れたのにさ、バラすから悪いんだよ!!!!」
Aくんはカンカンに怒ったまんまその場を飛び出して行った。
様子を見ていた私は、飛行機を前に「うぅぅ…」と体を震わせているBくんに声をかける。
Bくん:「Aにこわされたぁ…!!ゆるさない!!!」
私:「そうだねえ、悲しかったね…。でも、なんで壊されたのかなあ?」
話をしようとしたが、Bくんは大事な飛行機が壊れた悲しみと悔しさで、心がパンパンの様子。これじゃ、相手の気持ちを考える余裕はないだろう。
Bくんの背中をさすって、もう一度声をかけた。
私:「大事な飛行機、壊れちゃって、本当に悲しかったねぇ…」
すると、Aくんのほうを睨みつけていたBくんの目から、再び涙が流れ出す。ああ、本当に悲しいんだねぇ。あんなに気に入っていたものね。
そこで、まずは一緒に飛行機の修理をすることに。幸いBくんが頑丈につくっていたおかげで、飛行機はすぐに元どおりになった。
ようやく落ち着いたBくんにもう一度話をする。
私「なんでAは、飛行機を壊したんだと思う?」
Bくん「おれが、隠れんぼをばらして怒ったから。でもさ、机の下に隠れたら危ないって思ったから言ったんだよ。」(実際は危ないところではなかったが、本人はそう感じたそう)
私「そう思ったから言ったんだね、わかった。でも、Aは隠れんぼに負けたことがとっても悲しかったみたいだよ。わざとじゃなくっても、悲しい思いをさせちゃったんだね」
Bくん「…」
私「Bが飛行機を壊されて悲しかったように、Aも隠れてるのがバレて悲しかったんじゃない?」
次に私は、怒り心頭で飛び出して行ったAくんのところへ。
Aくん「ぼく、あやまらないからね!!Bがバラしたから、仕返ししたんだよ!!!」
こちらも、隠れんぼをバラされた怒りで心がパンパン。
私:「がんばって隠れたのにさ、バラされて悔しかったね」
と、彼の気持ちを言葉にしてあげたら、だんだん落ち着いて来た。
私:「あの飛行機はBが大事にしてるもので、壊れちゃってすっごく悲しかったんだよ。嫌なことをされたときに嫌だって言うのはいいけど、仕返しで大事なものを壊したりしないのよ。」
Aくん:「…うん。」
再び顔をあわせた2人、はじめに謝ったのはBくんだった。
Bくん:「…ごめんね」
Aくん:「何がごめんねなわけ?」
Bくん:「かくれてるのばらしてごめんね」
Aくん:「いいよ。ぼくも、大事なもの壊してごめんね」
そしてケロッとして一緒に遊び始めるから、子どもってすごい。
心がパンパンのときに、人の気持ちは考えられない
大人だってそうだけど、自分の心が不安や怒りや悲しみでいっぱいになっているとき、なかなか人のことまで思いやることはできない。
気持ちを言葉にしたり、誰かとその気持ちをわかちあったりすることではじめて、人の気持ちを想像する隙間ができる。
子どもたちは毎日全力で笑ったり泣いたりして、小さな体と心を感情でいっぱいにしている。私たちにできるのは、その気持ちを想像して言葉にしたり、寄り添ったりすることだけ。できる限りその子自身を追い越さずに、子どもの隣にいたいと思う。
そして、自分の気持ちと相手の気持ち、片方だけではなく両方を大事にできるのだということを、日々のなかで少しずつ、一緒に体感していきたいと思うのだった。
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