せっかく生きてるんだから、おいしいものを笑顔で食べなきゃ。
小川糸さんの新刊、「ライオンのおやつ」読了。
余命を告げられた主人公・雫が、瀬戸内の美しい島にあるホスピスで過ごした、数ヶ月の物語。
癌で亡くなった祖母と友人のことが重なって、ほろほろ泣きながら読んだ。
主人公が「死」に向き合うほどに、「生」の描写が鮮やかで美しいものになってゆくのが印象的だった。
それは例えば、頬をなでる風を感じ、眩しさに目を細めて海を眺めること。おいしいごはんとおやつを味わうこと、大好きなひとをぎゅっと抱きしめること、音楽のなかに身をゆだねること。
今ここに自分の身体があって五感を使えるからこそできる、小さくて大きい、愛おしいことたち。
「せっかく生きてるんだからさ、おいしいものを笑顔で食べなきゃ」
というシマさんのひとことに、たくさんのことが集約されてる。
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「生」と「死」は背中合わせで、見る方向によって「入り口」か「出口」がちがうだけ。
そう頭でわかっていても、大切な人に会えなくなるのは寂しいし、死ぬのはこわい。
作中で表現されるように「生きる」意味が「誰かを照らすこと」なのだとしたら、自分もよりよく生き、生かされたいと思う。