本の棚 #37 『マンガ認知症』
『マンガ認知症』
ニコ・ニコルソン/佐藤眞一
まさか自分の身の回りで…
なんてことになる前に"知っておく"こと。
日本社会の傾向としては
高齢者の介護は避けては通れない道だろう。
それを仕組み(行政、民間事業など)で
解決しようとすることも大切だけど
ひとりひとりがその自覚をもって
備えていくことも同じように大切だ。
自分が認知症になる、すでになりつつある
そんなことも十分にありえることではないか。
漫画家のニコルソンさんのおばあちゃん(婆ルソン)が認知症を発症し、
母ルソンとともに介護に苦労しているとき
心理学者の佐藤先生が登場。(以下サトー先生)
サトー先生曰く、
「介護は知ることで楽になります」
ほんまかいな。
でも「知らないこと」に不安を抱く
それは事実なわけで、知っておくことは
決してマイナスではないはず。
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認知症の定義(3つの条件)
①何らかの脳の疾患により
②認知機能が障害されて
③生活機能も障害される
つまり生活機能が障害されていない場合は
認知症ではなく(えっ、そうなの?)
まだ認知症予備軍ということになる。
実は、この認知症予備軍までいれると
現時点で日本に約1000万人いるそうだ。
高齢化がすすめばすすむほど
認知症と付き合うことになる確率は高まりそう。
6つの認知機能
①知覚と運動②言語
③学習と記憶④社会的認知
⑤遂行機能⑥複雑性注意
これらの認知機能のどこに問題があるか。
認知症といっても症状は人それぞれなのだ。
ひとくくりにすることで世間的には
わかりやすくなったような気がして
それこそ認知されやすくなるけど
くくってしまったことで、
聞いたことあるけど実はよく知らない。
そこから生まれる誤解、誤認もあるだろう。
わかりやすくて浸透しやすい、
それはいいことばかりじゃない。
介護が楽になる鍵
「本人がなぜこういう行動に出るのか?」
という心の仕組みを理解することらしい。
【例A】「財布を盗られた!」と怒り出す。
実際はいつもの引出の中に入っている。
自分が財布をおいた場所を忘れただけだ。
でも自分のせいだと認めたくない。
そして、誰かに盗られた「虚記憶」をつくる。
というように掘り下げていく。
そしてこの著書の優れた点は
対応方法まで記載されていることだ。
上の例への対応としては〜
①お金は大事だよねと同意しつつ、探すように促す
②介護者が疑われないように、本人に見つけてもらう
③すごく興奮しているときは声をかけずに、静まるまで距離をとる
【例B】同じことを何度も聞いてくる
なぜか?を考えてみると
覚えられずわからないままで不安だから
聞けば教えてもらえて安心できるから
ということになるようだ。
そういうときはー
①あとで確認できるように、返事をメモの形で残す
②「さっきも聞いたでしょ」はNG
③食事をしたかどうか何度も聞かれるときは、あえて食事後の食器をそのまま置いておく
【その他】
「家に帰りたい」と言われる
徘徊
排泄の失敗
なんでお尻を触るんですか!
といったように多数の具体例とニコルソンさんの
おもしろい漫画が絶妙のバランスで調合されている。
最後に
重要なのは、人生におけるつらい出来事ーネガティブ・ライフイベントから学ぶこと
つらいなかでも
ベネフィット・ファインディングの考えで
「よかった点をみつける」
サトー先生は自身がガンになったときに
この考えを実践したそうだ。
運が悪いなぁ、ついてないなぁ…
そこで思考が停止しているとつらいまま。
もちろんつらいことではあるけど
そこでどう考えるかという選択肢を
ぼくらはもっている。
今日も大変勉強になった一冊だった。
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