本の棚 #67 『四季 秋』
『四季 秋』
森博嗣
『四季 夏』は14歳の四季を描いた物語だった。
それから15年後に『すべてはFになる』で
29歳の真賀田四季は再び衝撃的な事件を起こし、
それ以降メディアから姿を消す。
皮肉なことに、それが彼女の神秘性を加速させる。
あれから4年…
ぼくの好きなコンビ、犀川創平&西之園萌絵が
過去を振り返りながら、四季を追いかける。
おそらく、四季シリーズでは最もおもしろい。
これは個人的な感想だ。
『夏』→『F』→『秋』の順で読んだほうが
よかったりするのか?
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今のこの中途半端な状況、矛盾した不安定な状態が、この頃では逆に、自分の新たな幸せだと感じるようにもなった。
安定とは何か。
自転車みたいに、走り続けることで
ある種の安定のようなものを感じるときがある。
立ち止まって考えると
矛盾や不安がすぐにでも襲ってきて倒れる。
今の状況を前向きに受け入れて、感謝して
それを自分の幸せにしていく。
西之園萌絵が出会った新たな感情は
そんな感じなのかもしれない。
「うーん、なんか、そっちの方向だと、誰かが言った」「誰が?」「僕の中の誰かが」
犀川創平のこのバランスが秀逸なのだ。
普段は感情は横に置いておいて、
超絶論理的思考で、タバコとコーヒーを愛する。
閃くときは「僕の中のリトルホンダ」的なやつを
容赦なく召喚してくる。そこに論理はない。
98%の論理と2%直感のバランス…
ぼくはそこに惹き寄せられるのだろう。
「人は、自分が許せないときに、悲しくて泣く、そして、自分が許せたときに、嬉しくて泣くの」
瀬在丸紅子より。
他人を許すか許せないか、それよりもまず
自分自身を許すか、許せないか。
自分を許せるという感覚をどれだけの人が
持ち合わせているのだろうか。
この他にも紅子さんは
貴女が、太陽を好きになったか、扇風機を好きになったか、の差です
西之園萌絵へのこのひと言がなんとも心地よい。
嫉妬、妬みをつくりだしたのは
相手を扇風機にしてしまった自分自身なのだ。
その人が前方向だけしか
風を送ることができない扇風機ではなく
世界を照らす太陽であると考えられれば…
その境地に達せません。
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