エッセイ (心の話)『カスハラって・・・』

 前回はハラスメントの中からパワハラに特化して書いてみました。で、今回はやはり最近テレビや新聞で気になるワードの”カスハラ”、いわゆるカスタマーハラスメントについて少し書いてみたいと思います。このハラスメントは大きく分けて二つあると思います。まず一つ目は、お店にやってくる顧客と店員のやり取りの中で発生するもので、基本的には顧客が店員にキレまくったり、理不尽なクレームをつけて無理難題を言うというイメージの物です。そして二つ目は顧客と店員(社員)の電話でのやり取りの中で発生する暴力的な物の言い方です。
 確かに私も外出先で何度かそのような光景を見た記憶があります。私が見た記憶の中のその光景では、トラブルのやり取りの一部始終を見ていたわけではないので、どちらに分があるかという事は判断出来なかったのですが、一つだけ共通する事がありました。それはお客さんと店員さんが人として噛み合っていなかったという事です。たまたまそんなパターンだったのかもしれませんが、考えてみれば噛み合わない要素も色々あるとは思うのです。そこはおそらく対人関係の相性の悪さという事もあるでしょうし、また利害の不一致という事もあるでしょう。確かに外で買い物をする時に私自身もイラっとしてしまうことがあるのは事実です。もしかしたら多くの人がそのような経験があるのではないでしょうか。私がイライラした時の幾つかの記憶の中で一番最初に思い出すのは、店員の愛想のなさです。無理にニコニコしろとは言いませんが、なんて言うか、つっけんどんな態度に度に戸惑いを感じたという記憶はあります。”なんかオレって迷惑な客だったのかな・・”と思った記憶があります。また、お店側の説明が十分でなかったり、はたまた話の行き違いなんていうケースもあったと思います。基本的に私は声を荒らげて怒る方ではないので我慢をしてしまいますが、そうすると何だか店員に足元を見られているような気分になるのです。お店の方にも言い分は色々とあるのでっしょうが、そういう意味では怒りだすお客側の気持ちも分からないではないです。また逆に顧客(自分)の方が店に無理なことを言いだすことだって十分にあると思うのです。ですからこのカスハラというものはその定義が難しい問題だと思うのです。

 今から数年前にとある生命保険会社で子供のために学資保険を掛けていたことがありました。満期を迎えた時に担当の女性が私が勤めている会社のオフィスに電話をかけてきたという事があったのでず。その電話の内容は”保険をお掛け頂いている間に弊社に何か問題はあったでしょうか?”という顧客満足度を調べる為の電話でした。私にしてみれば全く問題が無かったのでその旨を伝えたのですが、ひょんなことからその恐る恐る話をする電話の女性と少し話し込むことになったのです。電話の奥の女性はヘタなことを言わないようにしていたのでしょう、余りにも必要以上な丁寧さを心掛けていたので、聞きようによっては少し怯えているような声にも聞こえました。私はそれがどうしても気になったので、
『そんなにかしこまらなくてもいいですよ。この保険で十分な事はしてもらったと感謝していますから・・。』
と言いました。そうするとその女性は少し驚いたようで電話の奥で絶句していました。それに続けて
『保険という商品はある意味未来に向けた前向きな価値のある商品であると同時に、販売時点ではその価値を説明しづらいものですよね。時にはその人の死という事についても向き合ってもらわないといけませんし、その上で得られる価値について説明し、納得してもらうものですから大変な事は分かります。また、その販売時の皆さんの腰の低さに付け込んで凄んでくる人もいるでしょう。でも、考えてください。電話の奥で怒り狂っている人も、その電話を切って、今度は会社にある自分の目の前の電話が鳴ったらきっとその人もきっと怯えていますよ!何だったら今こうして私も話していますがその間に3枚ほど至急の折り返しの電話を要求するお客さんのメモが来ていますからね。この後私も叱られるんです!きっと・・(笑)』
、と言ったら、電話の奥の女性は哀愁のこもった声で
『ああ・・・』
と何となく気持ちが通じたのか、同情をしてくれたのはそんな返事をしてくれました。それに続けて、
『人なんて立場が変われば態度も変わるもんですからね。言うべきことはちゃんと言ったらいいと思うんですけど、相手を見て尊大な態度になるのもどうかと思うんですよね・・。”お客さんは神様です”なんて言葉もありますが、そんなことはないですからね。”お客さんは変人です!”というくらいでもいいと思うんですけどね。もちろん相手がちゃんとしていれば、それに合わせて自分もちゃんとすればいいし、相手が変だと思ったら丁寧さと冷静さを忘れないで、しかし実は心を込めないって感じでいいと思いますよ。電話一本で一喜一憂していたら精神的に持ちませんからね・・(笑)』
と一気に言ったのです。もちろん相手の女性は返事に困っている感じは電話越しに伝わってきました。

 この時の電話の内容は実は後々まで私の記憶に深く染みつくように残っています。その時の私の話が正しいのか、それとも間違っているのか自分では判断しにくいのですが、”まぁこんな感じだ”と今でも思っています。カスハラも相手があっての人間関係の話です。ある意味では心と心のやり取りです。最近、東京都は何やらカスハラの条例を作ったみたいですが、それはそれでどうなのかと思うのです。パワハラのような上下関係のある濃厚な人間関係のガイドラインならまだ良くわかるのですが、一見さん同士の薄い人間関係の心の領域に法律やガイドラインを明文化して載せることに私は少し拒絶感を感じてしまうのです。もっとも暴力や脅迫などの行為はハラスメントどころかもう傷害罪の領域で判断すればいいと思うのです。他人との携わり方は、それぞれの人がそれぞれの生活の中で身に付けるものですから、感覚がそれぞれに違うと思うのです。ですからそういう微妙な行為の是非を明文化するのもどうかと思うのです。なぜなら人生に本当の意味で大切なルールや知恵は実はどこにも明文化されていませんからからね・・・。まだ東京都の条例はほとんど読んでいませんが、ナンセンスな内容でないことを祈ってしまいます。そう考えると一期一会という言葉は何かすごいですよね。!

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