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校正の神

 先週、初校のゲラを返送した。
 はじめて封筒を開けて見た時は、想像をはるかに超える鉛筆出しに思わず「うっ」と声が出た。春刊行予定の小説は、史実にフィクションを織りまぜた話なので作中に歴史上の人物が多数出てくる。
 前もって編集者に「実在の人物が出て来るため細かく整合性を確認しました」と言われていたので覚悟はしていたが、添付の資料もかなりの量。いざはじめてみればさもありなん!というご指摘に加え簡単な誤字脱字も多く、日々赤面しながら赤ペンを入れた。
 校閲の方もさぞ大変だったのではないだろうか。私はもう東京に足を向けて寝られない……来月は再校ゲラが届く予定だけれど、前回ほど皆さまの手を煩わせていないことを祈ります。

 指摘を読んでいて「あぁ確かにここは読み手にわかりづらい」や「ほんとだ。水汲みに行ったまま持ってってないわ…」など表現の至らない部分だけでなく、人物たちの動きにも気づかされることが多々あった。赤を入れるごとに、いかに担当の方が丁寧に読み込んでくださったのかひしひしと伝わってくる。というより、ここまで読んでいただけるとは。
 書いたものはすべて子供のようなものだから、自分以外の誰かまで大切に扱ってくれるのは手放しで嬉しい。またいろんな方の手にかかることで、さらによくなっていく過程を実感できるほど喜ばしいことはない。

 表紙の右下に、小さく校閲の方の名字が鉛筆で書かれていた。ありがとうございました。また宜しくお願いします。つい手を合わせたのも無理はない。

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東山泰子(ヤスユキ)
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