見出し画像

論文斜め読み:コホートベースラーニングの統計(02)

前回に続き、サイトの記事からリンクを辿って、コホートベースラーニングの理解を深めたいと思います。今回読むサイトは次の「コホートベース学習の統計」です。今回もDeeplを活用しながら読んでいきます。

目次

コホート型学習とは何か?
マイペースコースの欠点を示す統計
コホート型コースの修了率統計
コホート型学習の教育的価値を裏付ける統計データ
コーホート・ベース教育の領域を破壊する企業
まとめ
始めよう

コホート型学習とは何か?

コーホート・ベース・コースは一般的に

時間的制約がある - 指定された日付に開始・終了するため、比較的少人数で固定された受講生が一緒に受講する。

共同学習スタイルを採用しているため、実践的でフィードバックに基づいた学習を核とした真のコミュニティ意識がある。

参加者とチューターが双方向でやり取りできるよう、リアルタイムでライブ授業を行う。

より高価

録画ビデオのように静的ではなく、流動的

教師の役割をファシリテーターに変える

1つ目は開始と終了です。コホートベース学習ではプロジェクトのように有期で開始と終了を受講者同士が共有することが重要ということのようです。またコホートを形成するためのユニット(比較的少数:体感的にはMax30-50人くらい)を作ることが重要とということのようです。
2つ目は、実践的であるということと、それぞれの成果にフィードバックがあるということです。これを元にコミュニティを形成していくという感じなのかと思います。実践的な内容は大事ですがそこから得られるメタ認知も大事なのかと思います。
3つ目は、双方向のリアルタイム性です。ライブ講義とは異なり、受講者同士のコミュニケーションなど、受講者の積極的な参加が重要というとのようです。
4つ目はより高価。これはMOOCsの正反対で、受講者はかなりの金額を払って学習に参加するというのがコホートベース学習の特徴なようです。それにより、全体の一体感や参加意識を高めるような作用があるのかもしれません。
5つ目は静的でなく、流動的。教材としてオンデマンドの動画も用意することもありますが、主体はやはりライブのコミュニケーション(ZoomやSlack)ということになるようです。
最後の6つ目は、講師の役割です。講師は何かを教えるというより、全体を俯瞰して、より良い方向に導く、ファシリテーターのイメージのようです。専門的なことについては講師にしか見えない景色もあるのですが、それを教えるというより、その知識をメタに使ってファシリテートするというイメージかと思います。

コホートベース学習の統計

1. 自習型コースの修了率が3%と低いのに対し、コホート型コースでは90%以上の修了率がしばしば見られる。

2. MOOCを受講している人のうち、複数の講義に目を通す人は50%未満である(Reich and Ruiperez-Valiente)

3. 受動的に何かを学ぶと、72%の確率で忘れてしまう。しかし、それを使い、それに関する質問に答え、他の人と交流すると、69%の確率でそれを覚えている。

4. 学生のコミュニティ意識とオンラインコースでの学習の成功には強い正の相関関係がある。

5. MOOCを最適化する試みの成功に関する大規模な調査によると、修了率に顕著な違いは見られなかった。洗練されたAIアルゴリズムを使用したものでさえも(Kizilcec、Reich、Yeomans、Tingley)。

6. コホートベースのaltMBAの修了率は96%である。

7. エスミー・ラーニングのコホート型学習コースの受講生は、98~100%の修了率を示している。

8. ノマディック・ラーニングのコホート型プログラムでは、定期的に90%以上の修了率を達成している。

統計によれば、コホートベースのコースの修了率は、自分のペースで受講するコースよりも指数関数的に高い。

コホートベースの学習は、社会的交流、協力、コミュニティへの帰属意識を育みます。その結果、学生の満足度が高まり、学習意欲が向上し、質の高い学習成果が得られるのです。

Forte Labs、Reforge、Maven、Section4、AltMBA、Esme Learning Solutions、Circle、Disco、Nascademy、OnDeck、Virtuallyなど、この分野を破壊する企業がいくつかある。

これはコホートベース学習でよく言われている修了率の話です。MOOCsなどの一人で学ぶオンライン学習の修了率3%に比べて、コホートベース学習の修了率は90%以上ということのようです。
BBT大学(ビジネス・ブレークスルー大学)で実施したデジタルファーストキャンプでは、1-4回3ヶ月ほどのコースを実施しましたが、修了率は平均で96-98%でした。
この修了率の高さは、オンラインで講座を提供する人には驚異的で参考になるものだと思います。
更に、学習定着率についても述べられています。受動的に学ぶ場合は72%を忘れてしまううが、コホートベース学習では逆に69%の確率で覚えているということだそうです。
これらを実現しているのは、コホートによるコミュニティの形成が鍵なようです。その結果、学生の満足度が高まり、学習意欲が向上し、質の高い学習効果が得られるということのようです。

自習コースの問題点を示す統計データ

MITの研究者によると、2013年から2018年にかけて、MOOCの修了率は着実に低下し、平均3%になった(Reich and Ruiperez-Valiente)

ハーバード、マサチューセッツ工科大学(MIT)、スタンフォードといったトップクラスの教育機関でさえ、従来のオンラインコースの修了率はせいぜい20%程度にすぎない(Kizilec, Reich, Yeomans & Tingley

MOOCを受講している人のうち、複数の講義に目を通す人は50%未満である(Reich and Ruiperez-Valiente)

MOOCを最適化する試みの成功に関する大規模な調査では、修了率に顕著な違いは見られなかった。洗練されたAIアルゴリズムを使ったものでさえも(Kizilcec, Reich, Yeomans and Tingley)

Udemyでは、優秀なインストラクターの修了率はわずか8%(Client Engagement Academy)

MOOCの修了率が3%というのは、少ないと見るか多いともみるか。自習形式ではオンデマンドでもどのような形式をとってもこのくらいの修了率になるのだと思います(いわゆる3日坊主というやつです)。高くても30%くらいで、コホートを形成することがいかに重要かわかります。
話はそれますが、大学の授業やゼミなどは全体としてコホートになっていて、4年間での卒業を目指すということですから、ある意味古くからの小ホードベース学習であったのかもしれません。

コホート型コースの修了率統計

自習型コースの修了率が3%と低いのに対して、コホート型コースの修了率は90%を超えることが多い。

教授や仲間との直接的な交流や共同作業を提供する、少人数向けのカスタマイズされたオンラインコースでは、修了率が85%を超えている(Training Journal)

エスミー・ラーニングのコホート型学習コースの受講生は、98~100%の修了率を示している(Times Higher Education誌)

セクション4の修了率は70%以上(TechCrunch)

ノマディック・ラーニングのコホート型プログラムでは、定期的に90%以上の修了率を達成している(Josh Bersin氏)

コホートベースのaltMBA(2年間のMBAで伝統的に教えられてきたソフトスキルを教える4週間のクラス)の修了率は96%(Harvard Business Review)

ハーバード大学がピアコラボレーションを取り入れたケースメソッドのコースをオンラインに移行したところ、修了率が85%に上昇した。

内容的には修了率の話なので、前のセクションと同じです。

コホート型学習の教育的価値を裏付ける統計データ

ソーシャル・インタラクションの欠如は、オンライン学習における学生の成功にとって最大の障壁であることが研究で明らかになっている(Muilenburg & Berge)

ある研究では、参加者の85%がオンライン・コミュニティに参加することが学習に役立ったと回答している(Vesely et al)。

同じ研究では、講師の100%がコミュニティ学習が学生の成績を向上させ、より多くの学生がプログラムを修了できることを認めている(Vesely et al)。

学生のコミュニティ意識とオンラインコースでの学習の成功には強い正の相関関係がある(Sadara et al)

ワシントン大学の最近の研究によると、積極的な協力と相互作用によって学習に取り組んだ学生は、試験の成績を0.5ポイント向上させた。一方、講義で学ぶ学生は、アクティブ・ラーニングに参加する学生に比べ、1.5倍も不合格になりやすい。

効果的なオンラインディスカッションを促進するツールは、大学が学生の成績を統計的に有意に向上させるのに役立つことが判明している(Inside Higher Education)。

MIT Teaching & Learning Laboratoryの名誉所長であるLori Breslow博士によると、edXの受講生で、教材を完成させるために他の受講生と協力した学生は、3点近くスコアが高かった(Breslow, Pritchard, DeBoer et al)

ピアラーニング活動で協力することは、学生のエンゲージメントと学業成果にプラスの効果をもたらす(Mulder et al)

コミュニケーションやアイデアの共有、プロジェクト作業のためにテクノロジーを使用することは、高次の思考スキルを向上させることが示されている(Cradler et al)

ある研究に参加したオンライン・コホートメンバーの58%が、クラスメートとの関係がプログラムの継続を促すことに同意し、94%がディスカッションによってコースの問題への関心が高まったと述べている(Alman et al)

受動的に何かを学ぶと、72%の確率で忘れてしまう。しかし、それを使い、それに関する質問に答え、他の人と交流すると、69%の確率で覚えている(Nomadic Learning)

学習者のコミュニティに属していると感じることは、オンライン学習者の学習体験に大きな影響を与える(Farrell & Brunton)

ライブ授業は、インストラクターに説明責任を負わせ、インストラクターが生徒にとってより実践的な教材を作る動機付けになる。これは、ひいては、より質の高い教育体験につながる。(ウェス・カオ)

オンライン学習におけるコミュニティの形成は、学生の満足度を最大化するための重要な要素であることを、研究が裏付けている。

アクティブ・ラーニングでは次のようなラーニングピラミッドがよく紹介されます。下の方が学習定着率が高いということになります。コホートベース学習では主に教材としての講義動画→ディスカッション→プレゼンなどのラーニングピラミッドの下の方の学習定着率が高い形式を組み合わせて行うので、高い学習効果を得ることができるのだと思います。またその過程でコミュニティーが形成され良い循環を生むのだと考えられます。

図 ラーニングピラミッド(参照サイトより)

単純なオンデマンド配信だけでなく、コホートベース学習を意識し、テックツールを使うことでより大規模により大きな学習効果を得ることができるようなるものと思います。

コース作成者にとってのコホート型コースの利点

従来のコースクリエイターは、購読者一人当たり平均8ドル/月しか稼げない(Wes Kao)

YouTuberのアリ・アブダールは、4年間で3つのMOOCから約14万ドルを稼いだのに対し、彼のコホートベースのコースでは9ヶ月で150万ドルを稼いだ(ウェス・カオ)

Forte Labsの創設者であるティアゴ・フォルテは、合計3,500人の受講生から5年間で500万ドルを稼いだ。

Write of Passageの生みの親であるデビッド・ペレルは、年に2回、コホート・ベースのライティング・コースを教え、7桁の収益をあげている(ウェス・カオ)

受講しているコースについて頻繁にフィードバックを提供する方法を学習者のコホートに与えることで、受講生にとって27%価値の高いコースを作ることができるかもしれない。

コホートベース学習は受講者間のコミュニティ形成が図られるなど、自習形式に比べると学習者間の結びつきが強くなります。これは密結合と言うのとは違くて、疎結合なんだけれども、結合状態を維持続けているというイメージかと思います。
こういった関係もあり、自習形式に比べるとコホートベース学習の講座では比較的高額な受講料が設定されるようです。
自習型のコース作成者は月8ドルと書かれていますので、なかなか稼ぐことはできないのですが、9ヶ月で150万ドル(ほんと?約2億円、約月2千万円)、5年で500万ドル(年100万ドル、1億4千万円)ということのようですので、元々単価が高いところでテックやオンラインの力を使って規模を増やすことで大きな収益を上げることができるということのようです。

コーホート・ベースド・ラーニングで世界を変える企業

以下は、コホートベース学習を実施している企業の紹介です。日本でもいくつかのBBT大学のデジタルファーストキャンプなどいくつかの企業や団体がコホートベース学習に注目し実施し始めています。

Forte Labs

フォルテの2023年の目標は、総収入300万ドルを達成することだった

2017年から19年にかけて、フォルテ・ラボはコホートに基づくBASB(Building a Second Brain)コースを1,500人が受講した。

2020年9月のBASBコホートには、70カ国以上から1,000人以上が参加した。

現在の成長率では、BASBコースは2026年までに12,500人の修了生のレベルに達する可能性がある。

BASBプログラムの立ち上げと実施には、50人近いチームが関わっており、週に1回のボーナスワークショップと、ティアゴ・フォルテが主催する10回のライブセッションがある。

フォルテ・ラボのウェブサイトには、執筆時点で月間170万以上のアクセスがあった(Crunchbase)。

英国(42%増)、米国(26%)、イタリア(10%)のトラフィックが最も多い(Crunchbase)。

Reforge

2021年2月、リフォージはコーホート・ベース・コースに特化した学校設立のために2100万ドルを調達したと発表した(Crunchbase)。

2023年3月、シリーズB資金調達ラウンドでさらに6000万ドルを調達した(Crunchbase)。

14人の投資家と2人のリードインベスターがいる (Crunchbase)

現在、グロース、プロダクト、マーケティング、エンジニアリングの各分野で25のプログラムを提供しており、卒業生にはほぼすべての大手テック企業のトップオペレーターが名を連ねている。

彼らのコホートベースのモデルは、アカウンタビリティ、エンゲージメント、仲間との交流を高め、業界屈指の修了率を誇っている。

リフォージのウェブサイトには、執筆時点で月間10万件以上のアクセスがあった(Semrush調べ)。

米国(42%)、ブラジル(18%)、フランス(7%)が最もトラフィックの多い国である。

Maven

Mavenは、Udemy、altMBA、ソクラテスの創設者が立ち上げたコホート型コースの新しいプラットフォームである。

2020年11月、ファースト・ラウンド・キャピタルが主導するラウンドで430万ドルを調達した。

専門家がライブで教える400以上のコホートベースのコースを提供している。

Esme Learning Solutions

2021年1月、コホート型学習の大手プロバイダーであるエスミー・ラーニング・ソリューションズは、750万ドルの資金調達を完了したと発表した(PRNewswire)。

エスミー・ラーニングのコホート・ベースのコースには、大学教員と1コースあたり30~50人の業界専門家が参加している(エスミー)。

エスミーの受講生は、AIがコーチするグループチャット環境で週平均45~60分を過ごし、オンライン学習の最大の課題のひとつである孤独な体験を解決する(Forbes誌)

エスミーが提供するコースは、他のデジタルサービスと比較して、学生の満足度を最大1,800%向上させている(Tech for Good)

エスミー・ラーニングの受講生の90%以上が、コースの内容は期待通り、または期待以上であったと回答しており、MOOCと比較した場合

エスミー・ラーニングは、MOOCと比較して、受講生のコース修了率を3,000%向上させている。

また、最近のエスミー・ラーニングのコースでは、96%の受講生が、エスミー・ラーニングのソリューションの大きな特徴であるグループ・コラボレーションに満足していると回答しています。

他の「コンシェルジュ」学習会社と比較した場合でも、エスミー・ラーニングの受講生は、単に教材を見たり読んだりした学習者よりも23%高い成績を収めている。

全米科学財団の資金提供を受けた最近の研究では、エスミー・ラーニング・アプローチが成績や学習継続率などの指標で30~35%の改善をもたらすことが証明された(エスミー)

エスミーのウェブサイトには、執筆時点で月間11万5000件以上のアクセスがあった(SimilarWeb)。

英国(23%)、米国(21%)、南アフリカ(8%)が最もトラフィックの多い国である。

Section

ビジネススキルアップに特化したコホートベースの学習プラットフォームであるセクションは、2021年3月に$30MのシリーズAを調達した。現在までの資金調達総額は3,700万ドル(ビジネスワイヤ)。

2020年までにセクションの卒業生は1万人に達する。うち30%は米国外

2023年初頭には生徒数を20,000人に増やし、オンライン教育最大のライブ学習プラットフォームとなる。

エリートMBAの選択科目の50%から70%の価値を、10%の費用と1%の摩擦で提供することを目指している。

フォーチュン100社のうち50社がセクションのクラスを受講しています。

セクションのクラスメートは50カ国以上、60以上の業界から集まっている(セクション4)

88%の受講生が、Sectionのコース修了後3ヶ月以内に学んだことを組織内で実践している(Tech Crunch)

Sectionのウェブサイトは、記事執筆時点で月間17万3000以上のアクセスを記録(SimilarWeb)

米国(40%)、ブラジル(8%)、カナダ(7%)のトラフィックが最も多い(SimilarWeb)

AltMBA

2015年に設立されたコホート型プログラム「The altMBA」は、4,500人以上の人生を変えてきた

AltMBAのワークショップ・セッションでは、学生とコーチの間で5万件以上のメッセージがやり取りされることも珍しくありません。

AltMBAのクラスメートは45カ国以上、85以上の業界から集まっている

プログラムは4週間で56時間の授業、13のプロジェクトと週3回のチームディスカッションでフィードバックとコラボレーションを行う(AltMBA)

Circle

「Circle」という企業は、コミュニティの利点を提供しながらもその悩みを解消する、コホートベースの学習を支援する会社です。2021年初めに、TechCrunchによると「40百万ドル以上」の評価で400万ドルのシード資金を調達しました。

まとめ

オンライン学習における社会的相互作用やコラボレーションの欠如が、成功への大きな障壁となっていることを裏付ける証拠が増えている。

より多くの企業がコホートベースの学習ソリューションでオンライン学習分野を破壊するにつれ、より多くの企業が、コホートベースのコースがエンゲージメントを深め、修了を促進し、質の高い成果につながることを認識し始めるだろう。

大事なことは単純にテクノロジーを学習に取り入れるのではななく、コホートベース学習を認知し、コミュニティの形成を行うためのアクティブラーニング(反転授業、ディスカッション、プレゼン、教え合い)を中心とした、コース設計を行うことだと思います。

以上です。

いいなと思ったら応援しよう!