詩日記 2
二○二二年四月二十九日
旅の準備、荷造りをする。曲を書いた後で。
万年筆は毎日使わないと、インクが固まってしまうよ。筋肉のように。
旅の準備、荷造りをする。曲を書いた後で。
季節の変わり目の肌荒れ、君の機嫌を悪くするものを全て取り除いてあげたくて、曲を書いた。荷造りの前に。少しだけ、うそ。
記憶はいったりきたりして、多面的に真実を見つめる。眼鏡がないと字は少しぼやけていて、そのせいで見落とした形容詞が崖の下からこちらを見上げている。例えば「美しい」のような。
何の為に曲を書き、荷造りをするか。理由はあるようでいて、ある。人生と同じく。
旅の準備、荷造りをする。曲を書いた後で。
万年筆も筋肉もちゃんと使える。今の処。
ロープを伝って下まで降りて、形容詞を拾い上げた。例えば「美しい」のような。