詩日記 9
二○二二年五月六日
握った手の温度。あなたの涙。冷めてしまったカチョエペペ。オー・シャンゼリゼ。
これらを、ぼくはきっと生涯、忘れないだろう。
幸福というものの、ひとつのかたち。
さみしかったね。こわかったね。ごめんね。ありがとう。もう大丈夫だよ。
あなたのそばにいたいと思う気持ちを、ぼくは正しいと思うのだ。そうあろうと決めたのだ。
この身体を神様にお返しするその日まで。
ぼくの様にならない「愛してる」の一言に、思わず泣きながら笑うあなた。スピーカは若いぼくらの行く末に、きざな祝福をくちずさんでくれた。
例えば、こんな風に。
"二人で歩む道の上、幾多の音が織りなすオーケストラと夜明けを迎えた鳥たちが、愛の歌を歌っている。オー・シャンゼリゼ。"