詩日記 21
弐○弐弐年 伍月 拾捌日
畦道を跳ねるようにあるく
ほっ よっ さっ と
虫や蛙の声がして
頭上に満点の星が広がっている
未来のような または過去のような
幻視が どこまでも真っ
暗な夜の帳にひろがっている
子供の頃 わたしは何を考えていたか
電車の中の高校生を見て
ゆっくりと過去へと足を伸ばしてみる
どの角度から見てみても
あの頃のわたしは
混乱していた
様々な声 様々な刺激 様々な情報で
明らかに混乱しきった脳は
矛盾につじつまや襟袖をつけることもできず
途方に暮れ切っていた
(今が混乱していないとは言い難いが
少なくともあの頃よりはマシだ)
またあのワクチンの匂いだ
顔を顰めて その場を離れた
大半の子供たちは混乱している(いつの時代も)
セックスや理不尽やスケジュールの波に
呑まれないよう 溺れないように
手足をばたつかせて 足掻いている
だが大人たちは泳ぎ方すら教えてくれない
なぜなら大人たちも溺れる寸前だから
またあのワクチンの匂いだ
顔を顰めて その場を離れた
畦道を跳ねるようにしてあるく
ほっ よっ さっ と
虫や蛙の声がして
頭上に星の海が広がっている
何が大切か 教わっていないのだ
転んでもいけないと 教わっているのだ
転んでみなければ 転ぶ痛みは学べないのに
これから 学ぶのだ
大人も子供も あなたもわたしも
この地球の泳ぎ方を 生きる為のいろはを
これからも子供たちは混乱している
かもしれない
過去の記憶を消され 転生してくるのだから
けれど 大丈夫だ
大人たちは泳ぎ方をまなび
もう溺れなくなる
海原をスイスイと泳ぎ 連携を組み
溺れかけている子供に 泳ぎ方を教えるだろう
悪しきものは去り 無害と喜びが訪れるだろう
それができるのだ わたしたちには
畦道をはねるようにしてあるく
その頃にはあのワクチンの匂いはしない
ほっ よっ さっ と
虫や蛙の声がして
大いなる神が 永劫に広がっている