詩日記 多分27
弐○廿弐年 may月 廿肆日
仕事を終えた 静かな部屋
腹筋をした体制のまま
よこたわる
夜は寡黙だ
寡黙は わるいことじゃない
ただ そうであるということだ
鳥も 人も 道具たちも寝ている
蟲も 獣も 仕事も寝ている
ぼくのまぶたにも
睡気がそっと降り積もってきて
けれど眠るには
汗をかいたパーカーを脱がなくては
歯も磨いて お風呂にも入らなければ
お風呂の中腹で
父や母の垢が たゆんでいる
一日 おつかれさん
さっとながして きゅっとみがいて
ざあああああああ
ゆげ
もくもくもく
湯気と煙は似ていて
だが非なるもの 非なる論
非ない論 非ある論
非・アルロンさんは ふだん
グリコサミノグリ缶に入っていて
婿タトゥー類に属される
ねばねばの保湿力の強い
アルロンさんではない おじさん
…ええっと? なんの話だったか
ああ お婿さんのタトゥーの話
入れ墨はねえ 消せないしねえ
いれないほうがいいよねえ
傷だろうしねえ 痛いよねえと思うけどねえ
死んだおじさんは 元ちんぴらで
なにをしてもいいが
覚醒剤と 入れ墨だけはやるなよ
と 遺産の代わりに約束をくれた
遺産など なかったからかもしれないが
こういった理由で
私は タトゥーをいれないので御座います
元ちんぴらの おじさんの遺言で
おじさんは わたくしの母にも
こんなことをいいました
しぬのはこわくねえけどよ
死んだ後 焼かれんのは こええんだよ
あれって熱いのかね
肉体を離れ 火葬も熱くなく
甥も入れ墨も覚醒剤もやらず
きっと安心していることでしょう
たのしい 我がおじさん
さて そうそう
お風呂にはいろうとしていたのでした
おじさんの名前は アルロン ではなく
○○○○さんでした
(プライバシー保護のため 伏字にしています)
寡黙な夜と おじさんの思い出
靈界はどうだい? 居心地いいかい?
婆さんも先にそっちに逝っていたけれど
おじさん そっちでも怒られていやしないかい?
いつもありがとねえ おじさん