詩日記 3
ニ○ニニ年四月三十日
人の優しさ、思いやりが胸に沁みる夜。
幸福は意外と、身近にいて、日々は感謝に溢れている。
美味しい料理や、人と微笑み合うことや、自分の好きなことをできている小さな満足。
一日結んでいた髪を解いた時の、初々しい恋人たちの目配せのような心地よさ。
暮らしの中でほっこりを見つける達人のぼくは、旅先ではもはや巨匠の域。生きる伝説。奇跡のほっこり探索人。
見つけ方は簡単。とにかく笑ってみることです。なぜ笑うのか、理由は後から考えましょう。
それがほっこりを見つけるための、最善策。
ひとつ不満があるとしたら、それはあなたがいないことくらい。あなたったら、一緒に行こうかなとか、なんとか、かんとか、言ってくれないんだもの。個人的趣味の旅だからべつにいいけれど。
帰ったらアボカドをじっくり煮て、ハーブ塩とオリーブオイルで食べよう。ほくほくでおいしいんだけど、とってもあついから気をつけて。
お土産話でポケットをぱんぱんにしてゆくよ。
いや、お土産話はいいか。普段通りの会話をしよう。いつものお店の代わり映えのしないランチでも食べて。
いつも通りもいいけれど、いつもと違うも、時にはいい。人の優しさや思いやりが、よく沁みたりするから。まるでぼくの心がよいアボカドで、優しさが黄金色のだし汁になったみたいに。ハーブ塩のような星空が思わずまばたきをしたのを、ホテルの小さな窓が見ていた。