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超一流サッカー選手の”直感力”を支える認知や感情メカニズムとは?
これは非常に面白い記事。
認知や感情、そして直感という切り口から、サッカーにおけるパフォーマンス・メカニズムを分析している。
https://www.footballista.jp/column/43373
特に興味深いのは以下の2つのポイントだ。
・ 戦術的アクションが行われるプロセスにおいて、超一流選手と普通の選手を分けるのは"認知"と"直感"の質である
・ 「直感」は快-不快という感情的な部分と密接につながっており、それらが過去の蓄積された状況(データ)と結びついて無意識のうちに予測が立てられる
これらの示唆をスポーツ選手ではない私たちはどのように活かせるだろうか?
私が携わるデザインやオーセンティックリーダシップ(自分らしさに根ざしたリーダーシップ)の領域と紐付けながら考えてみたい。
◯フィードバックサイクルを高速で回してインプット・スループット・アウトプットの質を高めていく
まず、一つ目のポイントだが、記事では戦術的アクションが行われるプロセスを以下の6フェーズに分析している。
© YasuhiroK
そして、パフォーマンスを高めていくためには、
"集める情報の量と質を上げ、情報処理の速度と精度を高め、精度の高い選択を行い、実行後はその結果を自分自身にフィードバックし、情報として蓄積する。サッカー(および球技全般)では、実際に体を動かすのは当然だが、同時にこの5フェーズをいかに効率良く向上させるのかが鍵を握る"
のだという。
つまり、
いかにインプット、スループット(情報処理プロセス)、アウトプットを繰り返し、自分や顧客や社会とのフィードバックサイクルを高速回転・プロトタイプしながら精度を高めていくか。
これこそまさに昨今の不確実性の高い社会環境で素早く変化に対応していくために求められる力そのものではないか。
ただ、もしこれをスポーツ選手ではない私たちが生活に活かそうとする時には、
身体を意識的に駆動させるという意味ではフェーズは1つだが、認知のベースとなる情報収集はかなり身体的に行われているはずだ(例えば、相手との間合いの取り方など)
ということに着目が必要だろう。身体性が前提となるスポーツと異なり、ビジネスの文脈では身体的な知性というものはあまり積極的に活用されていないからだ。例えば、普段の暮らしや社会に対する違和感などは頭よりも身体が先に感じ取って反応していることも多い。
◯潜在的な意識やビジョンを引き出すためのプロトタイピング:Thinking by Hands
ビジネスの現場におけるプロトタイプには仮説検証のためのプロトタイプと創発のためのプロトタイプの2種類がある。
よく言われるプロトタイプは前者だが、実はこれまでにはない新たな事業機会や未来ビジョンを見出しいくために重要になるのは後者だ。
そして、この後者のプロトタイプをレバレッジするための鍵となるのが”身体”だ。
デザイン思考でも”Thinking by Hands”という言い方をするが、
自ら手や身体を動かしてみることで潜在的な感情や無意識やビジョンを引き出し、創発の質を高めやすくなるからだ。
LEGO Serious Playなどをやったことがある方はご納得いただけるだろう。
その場に現れたものを通じて意味が形成されるというコンストラクティビズムの考え方にも近いが、
頭で考えているだけでは現れてこない情報にアクセスし、個人の創造性を引き出していくことこそ、プロセスとしての方法論を超えたデザインやアートの価値であると私は思っている。(創造的だからアートが生まれるのではなく、アートするから創造的なものが生まれてくる)
◯自分の「直感」のパターンに気付く力:セルフアウェアネス
次に、二つ目の
・「直感」は快-不快という感情的な部分と密接につながっており、それらが過去の蓄積された状況(データ)と結びついて無意識のうちに予測が立てられる
という点だが、興味深いことに、
"多くの日本人選手が、脳の前頭前野で「考えて(思考して)」プレーしているのに対し、スペイン・バルセロナの心臓とも言われたシャビ選手は、「直感」を司る大脳基底核や空間認識を司る脳の部分(頭頂葉)が圧倒的に発達している"
そうだ。
ここで大切なのは、
自分の中で起こる快ー不快といった感情的な反応が、膨大なデータを無意識的に取捨選択する判断基準に密接につながっている
ということだろう。
だとすれば、いかにこの感情的な部分と連動した判断の質を高めていくかということが問題になるわけだが、
一つは記事にもある通り経験値(データ)を増やし続けることだ。
だが、過去の経験や法則が通用しない状況では、自分の思考パターンをアンラーン(過去の思考パターンを手放す)ことも重要になる。そのためには現在起こっている自分の認知・反応プロセスに自覚的になろうとし、判断が起こる一瞬一瞬の解像度を高めていくほかない。
個人レベルでできることは、自分の中で起こる快ー不快といった感情と行動(その背後には自分でも気がついていない無意識的な価値判断や反応が含まれているはずである)、そしてその行動がもたらした結果が自分が本当に望んでいたものだったのかを振り返ることだ。
そうして自分のパターンに気付くことができれば、より自分の意図と整合する新しい価値基準や選択肢を持つことができる。
© YasuhiroK
(イントラプレナー向けのオーセンティックリーダシッププログラム資料:筆者作成)
これは、オーセンティックリーダシップやセルフマネジメントと言われる領域で、最近では欧米の先駆的なビジネススクールでも人気を博するなど、経営者を中心にその重要性が認識されてきている領域だ。
この一瞬一瞬の判断を自分の本当に望む方向性と整えていこうとする行為は、主観的価値基準やある種の美的感覚(真善美)を高めていくこととも言えるわけだが、これこそ「あなたはどんな未来を創りたいか?」という問いが何よりも重要になるイノベーション創造に欠かすことのできないことなのではないだろうか。