柿沼陽平『古代中国の24時間』(書評ラジオ「竹村りゑの木曜日のブックマーカー」2月17日放送分)
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<収録を終えて>
こことは全く違う世界に生きる人たちは、どんな暮らしをしているの?
そんな想像をすると胸がときめきます。自分たちとは全く違った常識や生活習慣があって、その中で日々の一喜一憂があり、一人ひとりの人生があるのだということに、人類が生きていくための涙ぐましい努力や逞しさ、知恵を感じるのです。
『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』は、まさにそんなときめきを満たしてくれるような1冊です。2000年前の中国の、英雄でも暴君でも何でもない名もなき人々の生活を、膨大な資料をかき集め再現するというのはきっと途方も無いご苦労だったと思います。ご本人によると、1500万字ほどの史料を読み込んだのだそうです。
試みとしてユニークな点は2つあって、1つはタイトルの通り1日24時間というタイムテーブルの中で生活の様子を紹介していくところです。読者にも、古代中国の「なんでも無い当たり前の1日」を体験してもらいたいという狙いかなと思うのですが、この方法できっちり衣食住を網羅しているので読みやすい上に読み応えがあるのです。
もう1点は「著者が古代中国にワープしたらどうなるだろう」という目線から導入されているところです。今流行りの異世界転生物(朝起きたら、小説の中の悪役令嬢になってた☆ みたいな)を彷彿とさせますが、古代中国という実在した世界でその設定を実現できるのが素晴らしいです。
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『古代中国の24時間』は、イケメン大好きナンパ上等、上司には媚びへつらって……という思いっきり俗的な古代中国人の姿が描かれていて大いに笑わせてくれるのですが、一方で遥か昔から人が如何に懸命に生きていたかの切なさを読者は知らず受け取ってしまうように思います。あれから2000年、テクノロジーはしっかり発達したけれど、その分私達って幸せになっているのかなあとか。今から2000年後から見て、私達の生活ってどうなんだろうとか。
今、東京国立博物館で『ポンペイ展』が開催されていますが、あれも今から2000年前の人々の生活を見せてくれている点で、この本と共通しているものがあるのかもしれないですよね。技術は洗練されているけれど、人の感じ方は古代から変わっているんだろうかとか、色々考えてしまいそう。
それでは、今日はこのあたりで。
またお会いしましょう。
<了>