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なぜ日記がブームなのか?その潜在ニーズを考える

最近、日記が小さなブームになっているそうです。下北沢には「日記屋 月日」という日記専門店があり賑わっているようです。ホームページも拝見しましたが興味をそそられました。

商業出版だけでなく、自主制作の日記本も人気なのだとか。この現象の背景には、SNSやブログの普及によって、個人的な出来事や思考を記録・公開するハードルが下がったことが挙げられます。noteが日記の役割を果たしているという人も多いと思います。インスタなどのSNSでは行動の事実のみが記される傾向にありますが、日記ではそのプロセスも重要視され、自分だけの物語を素直に残せるのが魅力です。

そもそも、人はなぜ日記の公開という「自己表現」を行おうと思うのでしょうか?マズローの欲求段階説によると、自己表現は人の持つ「自己実現欲求」や「承認欲求」と密接に関連しています。SNSでは多くの人が自己の「承認欲求」を満たすために「映え」を意識した投稿を行い、他者の反応や「いいね」の数に価値を見出しています。しかし、日記を通じた自己表現は、もちろん他者からの評価も重要な動機にはなりますが、日記は自己の考えやプロセスを記録することを通じて、より高次の自己実現を目指していると考えられます。

また、日記には「その日の自分を記録する」という時代を共有する機能もあります。『コロナ禍日記』や『ウクライナ戦争日記』など、世情を反映した本が話題を集めており、日々の出来事を振り返ることで「同じ時代を生きている」安心感が得られます。これは、個人が日常を共有し、共感やつながりを感じたいというニーズに応える手段でもあるでしょう。

日記は、もともと教育や文学で慣れ親しんだものであり、手軽に始められる表現手段です。最近では、印刷物やZINEを収集する若者が増えており、日記は自己表現と同時に、グッズのように手に入れたいアイテムにもなっています。自己表現欲求と承認欲求の双方を満たしつつ、自己探求と自己成長の一環としての役割も果たしているのです。

この日記ブームが示すのは、単なる「結果」ではなく「過程」に価値を見出す人が増えているということ。SNSでは味わえないアナログな手書きの温もりが、多くの人を惹きつけているのかもしれません。

#日経COMEMO #NIKKEI

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