完全栄養食が満たす2つの消費者ニーズと課題とは
完全栄養食市場に大手や新興企業の参入が増えていることを日経新聞(7月4日付)が報じています。特に、タイムパフォーマンス(タイパ)と健康意識の高まりがその背景にあり、忙しいビジネスパーソンや健康志向の高い消費者にとって非常に魅力的な選択肢となっています。
タイパ重視の背景
完全栄養食は、短時間で必要な栄養素を効率的に摂取できる点が最大の特徴です。従来の補助食品から進化し、今では主食としての利用が広がっています。料理の手間を省きつつ、栄養バランスを整えることができるため、忙しい現代人にとって理想的な食事形式となっています。
主なプレイヤーと製品
味の素:「One ALL」という女性向け完全栄養食を展開し、好評を得ています。
ベースフード:完全栄養食のパスタやパンを提供し、最近では焼きそばも発売しています。
オルビス:「ココモグ」というおにぎりの完全栄養食を販売し、企業向けの福利厚生サービスとしての展開も計画中です。
日清食品:「完全メシ」というブランドで、カレーやパスタ、ドリンクなどのラインナップを展開。タイパと健康を両立する新たな食事形態を提案しています。
市場拡大の要因
新型コロナウイルスの流行により、健康への意識がさらに高まり、栄養バランスを手軽に整えられる完全栄養食の需要が急速に拡大しました。当初ネット販売が主流でしたが、ローソンや日清食品もコンビニエンスストアでの販売を開始し、製品の幅や販路が広がり消費者の認知も上がりました。
課題と展望
完全栄養食には公的な定義がないため、企業ごとに基準や表示が異なり、消費者が品質を見極めるのが難しいという課題があります。消費者目線で「完全栄養食」と聞くと、「これさえ食べておけば問題なし」という誤解を与えてしまいます。さらに、完全栄養食が咀嚼を必要としないことから嚥下機能の低下を招く可能性がある点や、食文化を楽しむという要素が失われる懸念もあります。食事は単なる栄養摂取だけでなく、味覚や視覚、嗅覚を楽しむ文化的な行為でもあります。この点をどのように補完していくかが今後の大きな課題です。
まとめ
完全栄養食は、タイパと健康意識という消費者ニーズにマッチした商品と言えるでしょう。企業の技術革新とマーケティング戦略に注目しつつ、これらの課題を解決しながら市場の成長を見守ることが重要です。食文化を尊重しながら、効率的かつ健康的な食事を提供するためのバランスを見つけることが求められます。
人間の基本的欲求の一つである「食」が完全栄養食によってどれだけ満たすことができるのかが、今後の市場成長の鍵となるでしょう。